働くママを応援したい!地域のコワーキングスペースから広がる輪 | babyCo 代表・曽山恵理子さん

杉並区で【Molecule(マレキュール)】世代を中心とした子育て中の女性を支えている曽山恵理子さん。子どもを連れながら働ける見守り付きコワーキングスペース「babyCo」を運営しながら、幅広い活動をしています。2013年、全国に先駆けて待機児童の保護者が保育園増設を求めて自治体に異議申し立てをする、いわゆる「保育園一揆」を杉並区で起こしたことでも一躍有名になった人物。そんな彼女が目指すのは「子育ても仕事も楽しめる社会」。彼女を突き動かす自身の経験や思いを通じて仕事と子育て、これからの自分について改めて見つめてみませんか?

曽山恵理子さん | 2013年11月21日にbabyCo設立。コワーキングスペース運営のみならず女性の就労支援、中小企業のIT・広報コンサルなどを手掛ける。杉並区男女平等推進センター講座の企画運営や商店街支援事業、子育て支援など地域に根付いた活動にも力を入れ、これらの活動を通じて、関わる人たちに多様な働き方を提案している。

自身の経験が活動の原動力

ーー保育園一揆に始まり幅広く活動される曽山さんは、とにかくエネルギッシュなイメージです。子育て期の女性のキャリアや働き方についてのサポートもたくさんしていらっしゃいますが、何かきっかけとなった出来事はありますか?

(曽山)2004年の長男の出産での産後うつになり、その後、「小1の壁」にぶち当たったことや、2011年「3.11」を経験して育児中の職住近接の必要性を感じたことが挙げられます。

当時は杉並から竹芝までの通勤でビルの13階に勤務していました。子どもと連絡がつかない中、やっと見つけたオンライン掲示板で夫と連絡をとりあい、在宅での仕事をしていた夫に息子をピックアップしてもらいました。当時小1だった息子は学童移動中に地震に合い、見守りの地域の人たちに誘導してもらうことに。

私自身は勤務中の格好(サンダル!)で長距離歩かなければならず、へとへとで帰宅できたのは午前2時…次の日は筋肉痛になりました(笑)でもみんなが揃った時にはとても安心感がありました。家族で近くにいることは、とても大切だと痛感した出来事です。

その後娘が産まれ、娘の子育てを通して「保活」の不毛さを感じました。自治体は保育が必要な子を保育する義務があるのに、その社会インフラのためになぜ保護者が必死にならなければならないのでしょうか?さらに、保育園に入れるか入れないか、それは主婦かフルタイム勤務かの2択になってしまいます。

週2、3日での勤務などでは競争率の高い保育園には入れないのです。働き方の多様性がありません。働き方の多様性を提案するために保育園に頼らず個人で出来ることは何かと考えたのです。

赤坂見附のコワーキングスペースに0歳の娘とイベントに参加して、このビジネスモデルはとても必要だと感じたのもきっかけの一つです。ただ、都心まで子どもを連れていくのはなかなか大変。こういうものこそ住宅地に点在してあるべきなのではないかと考え、子どもたちの近くにいられる杉並区にコワーキングスペースを構えることにしました。

babyCoは、自分の子育ての苦しい時に「こんなサービスがあったらいいのに」という思いから立ち上げた事業

ーーbabyCoの立ち上げ前の会社員時代の経験も関係しているのでしょうか?

(曽山)キャリアカウンセラーとしてITスクールでの就労支援をしているうちに女性の就労支援をライフワークにしたいと強く思うようになりました。

その就業中に1人目を出産し、子育て中の女性が仕事と育児の両立に高い壁を感じていることを身をもって知りました。また、長男が3歳の時にシステムエンジニアとして転職し、時短勤務を取得させてもらったことで効率のいい仕事の仕方を意識するようになりました。

その経験を経て「子育て中の女性こそ単価の高い仕事をするべきだ」と強く思うようにもなり、現在babyCoの在宅ワークチームで実現できるよう模索しています。

さらに、復職時にマタニティハラスメントを受けたことも関係しています。システムエンジニアとして働いた職場で、復職のための面談時に給与がおよそ半分に落ちると言われ、所属も変わりやったこともない仕事をすることに。

当時病気がちだった息子の病院通いで、夫とやりくりしても年間6、7日を有給を使って休む必要があったのですが、「そんなに休むなら仕事を任せられない」と言われたんです!年間6日ですよ?会社への信用が一気になくなり、私の時間をこの会社に費やすことへ意義を感じられなくなりました。ちょうどその時に並行してbabyCoの創業補助金の採択がされ、退職・起業しました。

思いを形にし、現状を少しずつ変えていく

ーー2013年にbabyCo設立前の杉並区で起こした保育園一揆で は、同じ想いの人たちが集まって行政に対して声をあげることで現状を変えていくその姿に勇気をもらったお母さんたちがたくさんいたことと思います。ご自身の経験からの思いはあれど、なかなか行動に移すのは難しいもの。一揆を起こそうと思ったのはなぜですか?”

(曽山)当時娘の保育園がなかなか決まらずにいた時期で、その中で保育園を作ってほしいと署名活動をしている人たちに出会いました。その仲間たちと保育園一揆をすることになったんです。結局娘は一揆の数日前に入れる通知が来たものの、自分がよければいいというものでもありません。社会全体に働きかけすることに意義を感じました。

というのも、保育園一揆の前にも保育園を増やしてくれるよう個人でかけあった経験もありましたが、もちろん聞いてもらった感じは全くしませんでした。「待機児童の人数がこれだけ少ないんだから、本当に困っている人は少ないんですよ」というのが当時の行政の意見でした。

でも「仕方ない」「そんなもの」「みんなそうして我慢している」と感じて声を上げられない人が多いために、住民の本当の課題を認識できないのは自治体としても不幸だと感じました。個人的な「なぜ入れないの?」という怒りの声だけでなく、もっと広い社会の声を聞いて、自治体と市民の溝を埋めてよりよい社会を作るのが大切なのではないかと思います。杉並区は保育園一揆の後、保育園増設を進め、2018年、2019年待機児童ゼロを達成しました。

ーー思いを伝え、現状を変えていくことはとても大切なことですね。

はい、活動を通じて、この杉並区への陳情活動で感じたこの「行政と子育て世代当事者のギャップ」を双方に理解できるようにしたいと思っています。杉並区で子育てと仕事を両立させるためのインフラ・ネットワーク構築を行政とともに「仲間」として一緒に担いたいのです。インフラ整備とは保育園の増設への働きかけはもちろん、孤独の中でする子育てである「孤育て」から脱する仕組み作りです。それらを強固にするために市民の声を伝えることは行政と子育て世代双方にとってとても意味のあることです。

自分らしくいるためにできること

ーー曽山さん自身も、仕事はもちろん自分の時間を充実させているとか。

現在高校生の長男は友人と好きに活動するのですが、小2の娘はまだ保護者同伴のことが多い状況です。そのため、土曜日の午後は私が時間をもらって趣味に打ち込み夫と娘が過ごす時間、日曜日の午後は夫の自由時間にして私と娘が過ごす時間としています。

私が打ち込んでいるのは、競技かるた!大会などにも出ているんですよ。もともとは息子がきっかけで始めたかるたでしたが、もう息子はやめてしまって私だけが残ってやってます(笑)かるたって結構体力が必要で、素振りとかするんですよ!

やりたいことをやるにはやりたくないことをきちんと片づけなければいけないので、生活にメリハリを生みだすきっかけにもなりますね。あと、自分が自分でいられる場所ってすごく大事だと思っています。○○君のママじゃない私。私個人がやっていることを認めてもらうと、自己肯定感を高めるきっかけにもなります

 ーーbabyCoのコワーキングスペースもそのような役割を担っているのではないでしょうか?”

そうかもしれませんね。仕事をすることで、ママではない自分の役割を担うことができます。また、交流イベントでは子どもではなく、保護者が中心になることが出来るように意識的に企画しています。

児童館でのイベントは子ども中心ですよね。童謡を歌ったり手遊びをしたり。最初私は突然「母親にならなくてはならない!」と感じて、それに衝撃を受けたんです。なので、ママではなく個人で楽しめる場を提供したいと思っています。

ーー本当にそうですね。母親になると急に状況が変わりますよね。その変化に戸惑ったり、子育てと仕事に挟まれ、自分がやりたいこと、キャリア、何のために仕事をするのかを見失ってしまう人もいると思います。

はい、キャリアカウンセリングもしていますが、カウンセリングではその人の中にある答えを引き出します。なので、仕事をするかしないか、どう続けていくかも、その人が自分で答えを出していきます。せっかく保育園決まったのに、子どもと離れたくない!と泣いてやってくるお母さんもいます。バリキャリだったのに、すぱっと仕事を辞めた人だっているんですよ。

結局は、自分の生き方をどう築いていくか考えることが大事なんです。仕事があるから生きられるのではなく、生活があるから生きられる。生活の中に仕事があるというだけ。babyCoやその他の活動を通じて、1人ひとりがそれに気づき、自分の未来を考えるきっかけになったらいいなと思います。


ーー最後に、働く子育て中の女性にbabyCoを通じて伝えたいことは何ですか?

私がよく職場復帰するママたちに言うのは、まず3か月がんばって!ということ。そこからさらに3か月がんばれば半年になります。

そこから少しすると、風邪などがはやりだす初年度の冬を乗り越えられて、丸1年たったら先輩ママになるんです。先輩ママは、同じようにこれから復帰するママたちにアドバイスを残せるようになります。このアドバイスは後輩たちをとても勇気づけることができるんです。

そして、フルタイムで頑張りすぎないで、とも伝えています。最初からフルスピードで走ったり、一人でがんばったりする必要はありません。私たちも含め、子育て中の働く人たちを応援している人はたくさんいます。制度などをうまく使って、自分のペースで進んでほしいと思います。

編集後記

曽山さんの活動理念に共感した人たちが集まり、仕事をしていることがインタビューから伝わってきました。その際に曽山さんが大事にしているのは、その役割に責任をしっかりと持ってもらうこと。

子育て中の母親たちの多くは自分の存在意義が揺らいでいる状態なのかもしれません。母として、妻として、1人の社会人として。どこに立っていいのか、迷いながら毎日を過ごしています。

曽山さんが手がけるbabyCoをはじめとした働く女性支援の中で、ぐらぐらしていた足元がだんだんと築かれて、自分が何をするべきなのかが見え、進む勇気につながっていくのだと感じます。そして、そのように自分の道を進む人たちが増えれば、そのあとの人たちの勇気につながっていくはずです。

行政を巻き込みながらダイナミックな動きを作り出していく曽山さん。自分を見つめ行動に移していくことで本当に納得できる道を歩めるのかもしれません。そのときは、1人だけで抱え込まないで、応援している人がたくさんいることを思い出してくださいね。周囲のサポートも借りることで、勇気をもらうこともできるし、反対に自分の行動が誰かに勇気を与えることもあるのです。曽山さんは、そんな大切なことを教えてくれました。ありがとうございました!

▼コワーキングスペース babyCo の詳細はこちら▼

http://babyco.suginami-kodomo.net/