移住して10年。ゼロから地域と関係をつくるパラレルワーカーのヒミツ

ひきどふみ

地方移住や二拠点生活をされる方も増えてきた昨今。

いずれは地方移住してみたいMolecule(マレキュール)読者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。

しかし、地方移住に関する情報はまだまだ少なく、「実際地方移住ってどうなの?」と思われている方も多く見受けられます。

今回は友人がひとりもいない地域に移住して10年超。地域密着でパラレルワークを実現しているひきどふみさんに、「ゼロから地域と関係をつくり暮らし続ける秘訣」をじっくりインタビューしてきました。

ひきどふみのプロフィール

当時のことはほぼ記憶なし。毎日必死だった3年間

「元々環境問題に興味があったので、大学卒業後は環境問題に関わる仕事一択でした。」

ひきどさんは大学卒業後、環境コンサルタントとして勤務。日本の環境問題をよくしたい、環境への意識を変えたい、という強い想いを持って入社したそうです。

しかし、実際の業界は思っていたものとは全く違っていてショックを受けました。

「希望どおりの業界に新卒で入社してはりきっていました。でも、仕事をしていくうちに違和感を持ち始めたんです。企業的には正しいやり方なのかもしれないけれど、自分がやりたいと思っていたことではないと感じる日々でした。」

約3年の勤務後、結婚を機に退社。ご主人の生まれ故郷である和歌山県へと移住しました。子供好きで英語が得意なひきどさんは、出産して数か月でカエデ英語教室を立ち上げます。

話をしている2人の女性英語講師として奮闘していた時期

家事と育児、仕事のバランスに悩みながらも、大好きな子どもたちのために英語を学ぶ楽しさを伝えたいと奮闘しました。

「正直この頃の記憶はあまりありません。3年間くらい。毎日大変すぎたし、目の前のことを必死にこなしてく感じで。でも、子どもたちは可愛いし、やめようと思ったことはありません。」

転機は子どもスピーチコンテスト。英語コーチングに挑戦

子どもたちの成長を感じられ、忙しくも充実した日々の中で、特に楽しさを感じたのはスピーチコンテストへ出場する子どもたちへのスピーチ指導だったといいます。

そこからひきどさんは、さらなる飛躍を目指すことになります。それが英語コーチングでした。

「友人のご主人が英語コーチングを受けていたことをきっかけに、英語コーチングという仕事を知ることになりました。スピーチ指導を通して、何かひとつの目標に向かって伴走していくワクワク感を知っていたので、これはやってみるしかないんじゃないかと思って。」

劇をしている子どもと女性ひきどさんの転機となった子ども英語スピーチコンテスト

「ワクワク感」。ひきどさんがキャリアチェンジをしていくのに大事なキーワードなのだろうと感じ、もう少し詳しく聞いてみました。

私じゃなきゃできないことって、なんだろう?

英語教室運営、英語コーチ、English Cafe主催、国際ボランティア団体代表と幅広く活動しているひきどさん。仕事や活動の軸は何なのかきいてみたところ、「ワクワク」と「クリエイティビティ」とのことでした。

具体的には、「自分でなければできないことか?」を考える。さらに、「自分がワクワクすることかどうか」を判断し、自分の心に正直に、やりたくないことや向いていないことを削っていくのだといいます。

ひきどさんはこの点について、「大きな丸太から等身大の自分の彫刻を掘っていくようなイメージ」とたとえていらっしゃいました。このたとえは、ひきどさんがメンターから教えてもらったものだそうです。

「自分の彫刻を掘っていく」とは具体的にどのように「掘り出していく」のでしょうか。これに対する彼女の回答は、「自己対話を繰り返すこと」でした。

ひきどさんは、「私じゃなきゃできないことは誰にでもある」といいます。そもそも人間みんな個性があって、それぞれが素晴らしさを持っている。しかしながら、その素晴らしさに気付いていない人が多いように見受けられるとのこと。

「自分の個性」に気付くには、自己対話を繰り返すことが欠かせません。人に話したり、紙に書きだしたりする方法を続けてきたとひきどさんはいいます。

「自分と仲良くなって、自分の個性を認めてあげることが必要なんだと思います。」

「やりたいことをあきらめない」パラレルワーカーのひみつ

図書館で本を読む女性移住後は多読するようになった

「クリエイティビティ」と「ワクワク」が仕事や活動をしていく際の軸のひきどさんは、いわゆるパラレルワーカーです。

数年前にパラレルワーカーという言葉を知ったとき、妙にしっくりきたことが忘れられないといいます。

しかし起業し、パラレルに活動しているひきどさんのような存在は、まだ地方ではめずらしい存在かもしれません。実際、ご家族に起業したいと伝えるときは勇気がいったそうですが、いまは、家族みんながひきどさんの活動を応援してくれています。

ここには何か秘密があるはずです。もう少し深堀りしました。

移住して地域で活躍する4つのポイント

やりたいことをまるっと諦めないで続けているひきどさんに、今の状況に至るまで、どのように工夫し、乗り越えていったのか聴いてみました。

自分の軸をぶらさない

ポイントは自分が「ワクワク」して「クリエイティビティ」を活かせることなら迷わず取り組むこと。「やりたいことは即決」「自分の幸せは周囲の人たちに伝わる」というマインドを崩さないことが特に大事なのだそうです。

自分のやりたいことをする→自分の幸福感が上がる→周囲の人たちも幸せ、という流れがクリアだからこそ決断できることなのだと感じました。ひきどさんが「自分を幸せにして、こぼれた分を周りに」とおっしゃっていたのがとても印象的でした。

地域の人とほどよい距離感をとる

ひきどさんいわく「和歌山の人は、心を開いた人にはとても優しく面倒見がいい」そう。ご近所さんやママ友など、普段関わる人とはしっかりと信頼感を築きつつも距離感を縮めすぎないようにしていたそうです。

無理に地域に溶け込もうと距離感を詰めすぎるとお互い息苦しくなるので、なじもうと努力するのではなく、自分にとって心地よい距離感をつかむのが大事かもしれません。

「外」に目を向ける

「家庭内」に閉じこもらず、積極的にさまざまな場所へ足を運んでいたひきどさん。第一子が生まれてから、地域のママサークルに顔を出すようになってから、地域とのつながりが増え、友人が増えることにもつながったそうです。

現在では、地域のボランティア団体で代表を務めるほどに。「フェアトレードをもっと知ってもらおう」を軸に活動中のボランティアチームを、NPO法人にすることが目下の目標とのこと。「外」に目を向けることで気の合う仲間を見つけたよい例だと感じました。

居場所がないなら自分で「作る」

「外」に目を向けてもなかなか居場所が見つからない……。それならいっそのこと自分で作ってしまうのもひとつの手だといいます。

ひきどさん自身、英語で安心して語り合える場が欲しいと感じ、「English Cafe」を主催するようになりした。毎回さまざまなテーマに沿って英語で語り合う居心地のよいコミュニティになっています。

今後、Molecule(マレキュール)読者のみなさんの中にも地方移住をされる方が増えるかもしれません。

そういった方々に、ひきどさんの生き方は参考になる部分は多いのではないでしょうか。

リバウンドしない英語学習

編集後記

実際に会ってみるとわかるのですが、ひきどふみさんはとてもパワフルでポジティブ全開なのですよね。その雰囲気やオーラに「ついていきたくなる」のは私だけではないはず。

地域密着ながらも人とのほどよい距離感を保ち、諦めずに好きなことに全力を注ぐ彼女はまさに「地方に住んでいても好きなことは見つかる」を体現しています。

地方に移住し、自分らしさを追求したから今の彼女がある。地方移住は人生を変える転機にもなり得るんだと確信させていただいた取材でした。