仕事のタネは誰にでもある。未経験からはじめる幸せな働き方

仕事のタネは誰にでもある。未経験からはじめる幸せな働き方

いま「リスキリング」や「学び直し」に関心を持つ人が増えています。

とはいえ、「学び直しはキャリア志向の強い人のためのもの」と思っているMolecule読者の方は多いかもしれません。

「未経験の業界や職種にチャレンジする自信がない」という方もいらっしゃるでしょう。

しかし「これまで生きてきたすべての経験が役立つ」と、完全リモートの不動産エージェントとして働く飯森裕里恵さんは言います。

仕事と家庭の両立どころか、自分の時間も思い切り楽しむ飯森さんのお話には幸せな働き方につながるヒントがありました。
プロフィール

会社の枠を超えてお客さまと付き合える

飯森さんがフリーの不動産エージェントをはじめて4年。仕事そのものは一般的な不動産の仲介と変わりませんが「お客さまとの付き合い方が大きく違う」と言います。

新しい家を探すとき、インターネットのポータルサイトを見てみたり、地域の不動産会社に足を運んでみたりする方が多いのではないでしょうか。

そのとき私たちが見ているのは、不動産会社。営業担当者はそこで働く人としか見えていないことも多いものです。

一方、「この人にお願いしたい」とリピートが生まれる不動産エージェントもいます。飯森さんはその一人と言えるかもしれません。

彼女は「不動産エージェントは契約してからがお客様との関係作りの本当のスタート」だと語ります。

一度きりの契約で終わりではなく、たとえば、一人暮らし、同棲・結婚、出産、お子さんが大きくなったらまたお引越しを担当する、など。

重い荷物を担いで歩く女性スパルタンに参加する飯森さん

だからお客様との話題は物件だけにとどまりません。家族の悩みや料理のレシピの話など、ときには一緒にトレーニングジムやサウナに行ったりすることもあるそうです。

「この仕事のおもしろさは、いろいろな人とお話しできることです。日常生活の中では出会うことのない年齢層の方やお仕事をされている方とお付き合いできるので、お客さまから教えていただくこともたくさんあります。会社の枠を超えてお客さまと関わることができるのは、フリーならでは。一般的な会社員にはない魅力だと感じています。」

「興味なし」から不動産エージェントになるまで

かつては化粧品会社で提案営業をしていた飯森さん。結婚を機に退職し、しばらくの間は専業主婦をしていましたが、自宅近くの不動産会社がパートを募集していることを知ります。

当初、不動産にほとんど興味はなかったものの、これが不動産業界に足を踏み入れる一歩となりました。

オンライン不動産のKantと出会ったのは、飯森さんが宅地建物取引士(宅建士)の資格を取得した頃のこと。

長い間、対面での案内や説明がスタンダードだった不動産業界にもオンライン化の波が押し寄せています。飯森さんが宅建士を取得したのは、ちょうど賃貸物件のオンラインによる重要事項説明を解禁する法律が施行された年でした。

「これからは宅建士もオンラインで働けるようになるのでは」と考えた飯森さんが見つけたのが、Kantです。

オンライン会議システム未経験からスタート

窓際でノートパソコンに向かう女性

当初はオンラインで重要事項説明をするスタッフとしてジョインしましたが、Kantの考え方や不動産エージェントという働き方を知るうちに、「もっと関わってみたい」と思うようになったと言います。

同社はもともとIT企業の一事業がスピンアウトして生まれました。創業者は複数の事業を同時並行的に立ち上げる起業家で、不動産業界に関してはいわば素人。

しかし、だからこそ柔軟な発想が生まれたのでしょう。リアルのビジネスをオンラインに置き換えるのではなく、すべてのビジネスをオンラインで行うことを前提に業務フローが設計されています。

社員もエージェントも全員、完全リモートで働くのが日常です。もちろん、物件の紹介や契約などの手続きもオンラインでできます。

Kantと出会うまでオンライン会議システムも、クラウド上のドライブも使ったことがなかった飯森さんでしたが、すぐスムーズに使えるようになりました。

「子どもが生まれてから、フルタイムで決まった時間・場所で働くことは考えられなくなっていました。子どもとの時間が持てて、なおかつ自分のための時間も大事にできる完全リモートの不動産エージェントは、私にぴったりの働き方だと思います。」

「ママ、お仕事しないで」

働く時間を自分でコントロールしやすいフリーランスですが、それが仇になることもあります。飯森さんも不動産エージェントになったばかりの頃は、実績を挙げる嬉しさや楽しさから、夜中の1時にパソコンを開くこともあったそうです。

しかし、娘さんの言葉をきっかけに飯森さんは変わりました。

「娘が泣きながら『ママ、お仕事しないで』って言ったんです。そこでハッとしました。私がやりたかったのは、こういう働き方じゃなかったのに。」

それ以降、仕事時間は9時から15時までと決めた飯森さん。その間はみっちり仕事しているのかといえば、そうとも限らないようです。不動産エージェントの仕事に慣れてからは、お客様対応の合間に友人とランチを楽しんだり、家事の時間を持ったりすることも多いと言います。

学校行事やPTA活動への参加など、子どもたちと向き合う時間もしっかりとります。

歩く子どもと女性子どもたちとお出かけ

飯森さんの働き方は理想的に見えるものの、収入面が気になる方も多いでしょう。その点について、次のように話してくれました。

「不動産は、繁忙期と閑散期がはっきりしている業界です。成約時の報酬が大きいので、繁忙期に頑張ればまとまった収入を得ることができます。繁忙期以外の時期は、友達とランチをしたり、旅行に行ったり、ママ友とテニスを楽しんだりと、自分の時間も持てていますよ。不動産エージェントは在宅で仕事する分、人とのつながりが大切です。最近はお客さまからご紹介もいただけるようになりました。」

「お客さまからの紹介」は不動産の仲介だけではありません。さまざまな職種の方と知り合うきっかけがあるので、仕事の話につながることもあります。会社の枠を超えて人とのつながりを大切にしている飯森さんの仕事ぶりがわかりますね。

ママ営業が求められるワケ

いまの働き方に満足している飯森さんですが、不動産エージェントとしての活動が軌道に乗るようになって感じていることがあります。

それは、不動産業界に「ママ営業」が少ないこと。

男性が多い不動産の営業では、結婚や子育てを経て業界に戻る女性は少数派です。しかし、「主婦目線は、お客さまに求められている」と飯森さんは話します。

不動産エージェントがお客さまに紹介するのは住まいです。そこには住む人や、暮らしがあります。

ラクな家事動線、スーパーや学校、病院までの距離や近隣の環境といった生活者の目線こそ、住む人が求める情報といえるでしょう。

「不動産エージェントには、これまでのすべての経験がお部屋探しに役立ちます。できるだけ目線をフラットにしようという気持ちがあれば、あらゆるお客さまのステージに対応できるのではないでしょうか。」

化粧品会社に勤めていた頃の飯森さんは、都内を歩き回っていました。休日の街歩きが趣味の飯森さんにとって、街の雰囲気を肌感覚でわかっていることは大きな強みになっています。なんと、スーパーの特売時間を把握しているエリアもあるそうです。

いろんなものをちょっとずつ楽しむ

仕事も子育ても自分の時間も楽しむ飯森さん。いまの働き方は、ちょうどいい、幸せな働き方にも思えます。

これからどのようにしていこうと考えているのでしょうか。

子どもに『ママ、楽しそう』と思ってもらえるように、小さくても、毎日が楽しくて充実している状態を目指していきたいです。

最近、思うのは子育て期間はあっという間に過ぎ去っていくんだろうな、ということ。ただ、子どもとの時間も大切ですが、そこだけに注力しすぎないことも大事とも思っています。

私にはバリバリのキャリアウーマン的な展望はありません。でも、自分の時間を持つには経済的な自立も必要です。子どもが巣立ったら、心にぽっかり穴が空くといったことにならないよう、趣味や仕事など、いろんなものをちょっとずつ楽しんでいきたいですね。それが、人生を楽しむことにつながるのだと思います。」

編集後記

「不動産エージェントってなんだろう?」まずは、知らない職業のことを知りたい。そんな気持ちから飯森さんのお話をうかがいました。

まず思ったのは、なんて理想的な働き方をされているんだろう!ということ。

これまでの経験を総動員すれば、未経験からも活躍できるんだと勇気をもらいました。

何よりもステキだなと思ったのは、主語が「私」であることです。子どもはいつか巣立っていく。自分の人生を楽しむことをいつも忘れないでいたいですね。