41歳母が、移住をきっかけにサスティナブル起業。竹100%トイレットペーパーから始めたワケは?

松原佳代 鎌倉からポートランドに家族(夫、息子2人)で移住。環境とサステナブルな暮らしとPR、移住をテーマに活動を行う。おかえり株式会社代表取締役&みずたまラボラトリー代表取締役。2021年竹でつくったトイレットペーパーの定期便「BambooRoll」開始。

気候変動への問題意識が日々高まる中、子どもたちに明るい未来をつなぐために、今、何をすべきなのか?そんな危機感を持つマレキュール読者の方もいるかもしれません。

松原佳代さんが、米国ポートランドに家族で移住したのは今から約1年半前。マレキュールでもそのタイミングでインタビューさせていただきました。

移住を通して暮らしも考え方も大きく再構築していく中で、最も意識が変わり、自分で暮らしの中で取り組んでいけると感じたのが環境問題だといいます。

昨年の夏には、カリフォルニアだけではなくポートランドの近郊でも森林火災が発生。街全体が煙に包まれ、「地球にはもう時間がない」と 強い危機感を持ちました。

そこで、松原さんは「”還す”を未来のあたりまえに」というビジョンを掲げ、仲間とサスティナブルスタートアップを起業。今年2月には、竹100%のトイレットペーパーの定期便サービス「BambooRoll (バンブーロール)」をリリースしました。

コロナ禍の中、子ども達が在宅でありながらも起業し、スピード感をもってサービスをリリースした背景には一体どんな想いがあったのか? お話を伺いました。

竹100%のトイレットペーパーの定期便サービス「BambooRoll (バンブーロール)」バンブーロールをつくる過程で使う電力は、水力発電100%。パッケージは、プラスチックではなくリサイクルダンボールなど、環境に配慮したこだわりがつめこまれた一品。

 

 

▼松原さんの移住についての記事はコチラ
「移住」は暮らしのレールを壊し、リデザインすること |カヤックLiving 代表取締役 松原 佳代さん | molecule

ポートランド移住して変わった、暮らしと消費そして環境への向き合い方

――ポートランドに移住されて、コロナ禍やオレゴンの森林火災など貴重な経験されたと思います。意識が変わったのはどのようなことでしょうか?

移住を通して私の中で大きく意識が変わったことが3つあります。 こちらで暮らすようになり、ママ友などと「政治」や「ジェンダーギャップ」、「環境問題」について日常的に話す機会が圧倒的に増えました。

子どもたちを一緒に遊ばせながら雑談していると、いきなり政治に対して「あなたはどう思う?」と聞かれることもあります。

そういう経験から、自分としても会社としても、そういった問題に対して思考して発信することは、とても重要なことだと思うようになりました。

今、政治に関しては暮らしている米国での選挙権はありません。なので、私自身の力で変えていけるとしたら「環境」だなと感じていて、今回の起業につながりました。

―― もともと 環境への意識は高かったのでしょうか?

いえ、お恥ずかしながら全くそんなことはなかったです。

日本にいたときは、ペットボトルをコンビニや自販機でよく買っていました。ビニール袋も、保育園で必要なので、わざわざもらっていたほどでした。

でもポートランドでは、まずペットボトルがほとんど売っていません。

自販機もないですし、お出かけする時はマイボトルを持つのが当たり前になりました。

ポートランドでは、2020年の1月頃に紙の袋が有料化しました。スーパーのプラ袋は、殆ど見たことがなく、マイバックで買い物するのが移住した当初から当たり前でした。

なので移住をしてから、すごく環境への意識が変わったと思います。

――ポートランドは、そこまで脱プラ化が進んでいるんですね。

そうですね。

プラスチックの袋を全く使わなくなり、そうすると家中のプラスチック製品が気になり始めました。例えばシャンプーの容器だとか、「これはどのように分別するのだろう?」と。そこから、段々とプラスチック製品を他のもので代用するようになっていきました。

ポートランドでは、スーパーでも食品はむき出しの状態で陳列されています。そして、レジでグラムを計って売るという量り売りのため、包装などのプラゴミも出にくいです。

また農作物に関しても、生産地と消費地が近く、地元の農家さんのものを選んで買うことができます。 できるだけ地産地消を選ぶ生活の中で、消費や暮らしに対する意識も大きく変わりました。

”還す”を未来のあたりまえに”のビジョンが生まれたわけ

――サスティナブル起業をしようと思ったのはいつからですか?

森林火災を経験する直前から、起業の話はしていました。

前職の移住事業「SMOUT」を離れた後、前職で関わりのあった増村と何かしたいよねと昨年夏から話しあっていました。そして、話し合う中で環境というキーワードが出てきました。

ただ消費し続ける生活は、自然や子ども達の世代、途上国などから借り続ける暮らしだと私達は思ってます。そうではなく、自分たちが借りたものを、きちんと返していく循環を生み出す暮らしを提案したい。

移住事業をしていた時から、 1人1人がオーナーとして自らの暮らしを作りあげてほしいという想いもありました。そこで、 どんな暮らしを作ってもらいたいかと考えた時、”「還す」を未来のあたりまえに” をビジョンにすることにしました。

そんな中、ポートランドのすぐ近くの山で森林火災が起こりました。

わが家は、築100年の家なので色々な所に隙間があります。
目張りをあちこちしましたが、火災では煙が家の中まで入って来るほどでした。美しい森が燃えてしまう言葉にならない喪失感もありましたし、身体的にも頭痛がするなど、とてもつらく不安を感じました。

その時に「地球に残された時間はもう本当にわずかかもしれない」と実感しました。

また自分たちが考えている事業の方向性は、間違いないとも確信することになりました。

――私もいつも自然からもらいっぱなしだなと感じています。特に自然に対して、何も良いことをできていないなという想いもあります。

先進国の私達が借りているものは、自然だけではなくて、途上国の誰かだったり、誰かの時間だったりします。どちらも先進国の私達のために、どこかの誰かが間違いなく負担しているものです。

自分で借りたものを少しずつでいいから返していくという意識が、特に先進国においては、1人ひとりに芽生えるといいなと思います。

3人共通の思いは「子どもたちに地球の環境を残したい」

左から、松原さん、増村さん(長野県在住)、大塚さん(エストニア在住)

――起業は3人でされたんですよね。

そうですね、前職の移住事業でつながりがあった長野県に住む増村と、面白法人カヤック時代の同僚で、今はエストニアに住む大塚と一緒にやっています。

私にも増村にも大塚にも子どもがいます。子どもたちに地球の環境を残したいという思いが3人共通であります。

増村は実は昨年に第3子を出産していて、乳児を抱えての起業となりました。3人の会議にはよく赤ちゃん連れで参加しています。

わが家の子どもたちはコロナ禍で、ずっと在宅している状態で、きっと1人だったら甘えが出て、事業を起こすスピードは遅くなったと思います。

3人とも住む場所は離れていますが、同じ想いを持つチームだからこそ、このスピードで形になったのだと思います。

生活必需品を、環境について考えるきっかけにしたい 複数の企画案から生まれた竹のトイレットペーパー

――ちなみに「竹」を利用した商品を開発したきっかけは何だったのでしょうか?

実は他にも企画のアイディアはたくさん出て、企画書を何個も書きました。アイディアが生まれたり消えたりする中で、最初に出来あがったのが「バンブーロール」です。

竹に注目した理由は、2つあります。

1つ目は、米国の暮らしの中で、竹を素材にした商品と触れる機会が増えたことです。 紙やお箸、ストローや歯ブラシなどは日本ではプラスチックが多いですが、ポートランドでは竹で作られたものをよく見かけていました。

そんな中、大塚が調べていた文献や書籍の中でも温暖化防止という点で「竹」が有効だと書いてありました。竹は成長がとても早く、その過程で二酸化炭素を多く固定し資源として注目を浴びているということが分かりました。

日本では竹害などのイメージが強いですが、地球環境においては資源として竹が有効かもしれないと気づいたのはこの時です。

すごく偶然の出来事も重なりました。今の家に引越しをした際に、前に住んでいた方が注文していた竹のトイレットペーパーが偶然うちに届いたんです。竹を原料としたトイレットペーパーがスーパーで売られていたことは知っていましたが、それまで使ったことはありませんでした。メーカーに連絡すると、「どうぞ使ってください」とのことで、使ってみたら普段のトイレットペーパーとそんなに変わらない。

家に届く仕組みも含めて、こういう商品が日本にもあったらいいね!という話になりました。

――なるほど。それでトイレットペーパーなんですね。

竹のトイレットペーパーは、アメリカだとスーパーでも売られていますし、サブスクとしてもあります。他にも幾つかアイデアはありましたが、竹のトイレットペーパーの開発が早くできたことも手伝って、最初にリリースすることになりました。

もう一つの理由は、アメリカでは日常的に環境問題のことを話しますが、日本でいきなりカーボンニュートラルの話をしても受け入れられないのでは?という懸念がありました。

でも、トイレットペーパーという身近な生活必需品であれば、最初にみなさんが手にとって考えるきっかけになりやすいのではないかと考えました。

また、トイレットペーパーの消費は、今後、世界でも増えていくと予想されています。今回、サブスクで定期的に決まった量を届けることで、使う量をできるだけ節約する意識も生まれるといいなと思います。

――私も、理念にとても共感しました。ちなみに、今後「おかえり株式会社」で、やっていきたいことはありますか。

サイトにも書いていますが、コンポストや堆肥化をして土に返すというのは、今考えていることです。

私と大塚は面白法人カヤックで出会っているので、インターネットやデジタルのサービスに慣れています。

なので、そういった形のないサービスなどで、何かできることがないか現在、検討中です。

編集後記

私たち、ひとりひとりが”借りたものを還していく”という意識を持つこと。

とても大切なことを、松原さんから教えていただいた取材となりました。