脱・ワーキングマザー それがわたしの生きる道 vol.1 | Lee Hiromiさん

 

Lee Hiromi(リー・ヒロミ)さん(44)。看護師歴10年。アメリカに単身渡米後、マッサージセラピストとして会社を立ち上げ、現地で結婚。再婚の後、夫の仕事で中国・深圳に渡る。現在は上海に住み、専業主婦として家庭のことや二児の子育てにコミットする日々を過ごす。

日本では、女性活躍推進の追い風で、ワーキングウーマンが増加の一途を辿っています。(2018年度の総務省「労働力調査」によると、15歳〜64歳の女性の就業率は69.6%。この10年間過去最高を更新し続け右肩上がり。)けれども、そんな社会の潮流を受け止めながらも、脱・ワーキングマザー として「わたしの 生きる道 」を実現させている女性と私・くれが出会うこともしばしば。 ということで、本日からそような【Molecule(マレキュール)】世代の女性たちをシリーズで取材し、お届けしていきます。今回ご紹介するのは、経営者としての職業を手放して、専業主婦=HomemakerになったLee Hiromiさんのストーリー。Leeさんにインタビューする中で、「ワークライフバランス」も職業ありきではない視点で考えるなど、新鮮な切り口のお話を興味深く聴きました!どうぞお楽しみください!

看護師10年選手が、“新たな挑戦”を目指して渡米。アメリカで出会った仕事と結婚相手とは・・・

−今、上海で専業主婦として過ごしているHiromiさんですが、最初は看護師の仕事を長くされていたそうですね?

日本で10 年近く、看護師として働いていました。30 歳を目前にして、ふと自分を振り返ってみたときに、まだやりたいなと思っていたことがあったのです。それが、アメリカに渡って英語を学ぶことでした。やりたいことをやってみる勇気、新しいことに挑戦する勇気が、もともと強く備わっている性格なので、即決意して渡米しました。

アメリカで語学学校に通うことから新たな人生をスタートし、 そこで 出会った人と結婚しました 。

グリーンカードも取得したので、生活のためにもしっかり働きたいと思い、何をしようか考えました。けれど、アメリカでナースとして働くには、何年も学校に通わなければならなかったので、一年で資格を取り働ける、マッサージセラピストになりました。

主に怪我をした人をケアする仕事で、カイロプラクティックオフィスに勤めた後、「和」という会社を立ち上げました。日本人がやっているということで 珍しく 、アメリカ人受けしたようで、お客さんにも恵まれ、事業として順調に進んでいきました。

−アメリカで再スタートし、結婚、会社立ち上げ、事業も順調に進み・・・皆が羨むような、すごい変化を実現させたのですね!

そうですね・・・。でも、実は、ここからが人生の難局で!結婚したパートナーが、あまり働かない人で、不動産にも手をかけて莫大な借金をつくってしまったのです。

彼は自己破産し、私が生活のすべてを背負うことになりました。二人でホームレスにもなりかける状態でした。なので、必死に働き続けていたのですが、もう体力的にも精神的にも限界になってしまって。結婚5年目で離婚を見据えて別居生活をすることになりました。

けれども、世の中には良い出会いというのがあるのですね!離婚について助けてくれる弁護士の方が現れ、とてもよくしてくださったのです。無事に離婚も成立して、「このまま好きな仕事に専念し、自分の人生を楽しもう!」と気持ちを切り替えました。そして、「今後の仕事、会社の方向性はどうしようか?」と考えていたところ、知り合ったアメリカ人のマダムが、引き合わせてくれた人がいたのです。・・・それが、今の主人です。

 

離婚から再婚へ。新たな出会いと人との「縁」で、専業主婦=Homemakerへ転身。

−難局から一転して、良い出会いが続いたのですね。

はい。この時 にこそ、「世の中の人の縁」をすばらしく、尊いものと感じたことはありません。この「縁」をきっかけに、またどんどん自分のエネルギーが満ちてきて、いろんなことに勇気を持てるようになりました。

夫も、私と結婚するタイミングで中国・深圳に行く仕事が決まったのですが、結婚をきっかけに海外に行く勇気が持てたようで、まさに「縁」からはじまるポジティブな変化を遂げたようです!

−ドラマティックな展開!「縁」が勇気に。素敵なエピソードですね。それで、深圳行きをきっかけに仕事への想いにも変化があったのでしょうか。 思ったのですか?

はいそうです。実は、改めて結婚する過程で、私自身が「母親になり、素敵な家庭を築きたい」という思いをずっと胸にしていたことに気づいたんです。

仕事は、楽しく充実していたけれども、生きるための手段でした。収入のある夫に感謝しつつ、温かい家庭を築き、いつか子どもを持てたらいいなと・・・そんな夢を持ち始めながら、ここでまた「新しいことへ挑戦したい」気質が背中を押して・・・それがまだ経験したことのない専業主婦だったんです。そして、子どもにも恵まれ、二人の子を授かりました。

−「母親になり、素敵な家庭を築きたい」と思っていたのは、なぜでしょうか?何かそう思わせるきっかけや経験があったのですか?

はい。私は高校生の時に母親を亡くしたんですね。その後に知ったのですが、母と父の関係がとても愛情深いつながりだったんです。

たとえば、父が母のことを思いながら写経をするようになったり、母を描くための絵を習いに行ったり、埼玉の自宅から、仙台にある母のお墓まで毎月お墓まいりに行ったり 。

そんな姿を見ていて、「人が愛し合って家庭をもち、子どもをつくることって、すごく尊いんだな」と感じるようになったんです。だから、自分も縁があれば 家庭をもって子どもを持ち、母親になりたいなと、自然と思うようになったんでしょうね。

上海市内の和食店で、家族でそば打ち体験。幼稚園児の子ども二人と、中華系アメリカ人のご主人とHiromiさん(左)。お子さんとは日本語、ご主人とは英語でコミュニケーションをとるそう 。お子さんの成長に応じて、中国での言語教育や学校進学をどうするかなど、嬉しい悩みも尽きない日々だそうです。

 

Homemakerとしてオンリーワンな世界(家庭)をつくりだす。難しくも楽しい作業!

−とても胸に響くお話です!ご両親の愛情の深さを感じて、専業主婦として生きることを「選択」したのですね。それを実現していま、どうですか?

とても難しいですね!なぜって、答えのない作業ばかりなので・・・。仕事のように、定期的に評価を得たりフィードバック受けることもないですし、明確な予定や数値で見える収入見込みとかもない(笑)。自分の気持ち次第で動くところが大きいですよね。だから日々自分のモチベーションとの闘いみたいな。

でも、難しい反面、楽しさも大きいです。自分の「家庭」という唯一オリジナルなものをつくりだすことができるので!人と人とのコミュニケーションでつくりだせる、オンリーワンな世界ですよね。

アメリカでは最近、専業主婦のことを「House wife」ではなく「Homemaker」という言葉で語る人が増えてきました。まさに、家庭(Home)をつくる(Make)人。主婦または主夫であることも、一つのキャリアとして考えていますよね。お金をつくらないけど、家庭をつくる仕事。それは、男性でも女性でも同じくです。

−Homemaker!いい言葉ですね。

そうですね。言葉どおり「つくりだす人」ですね。自分次第でなんでもできます。ただ、そこがまた壁で 抱えている課題もいろいろあって・・・

−壁?どんな壁ですか?

いろんなことのバランスが難しいなと・・・。たとえば、先ほどお話した通り 、「人との縁」を人生のテーマとして大切にしたいので、収入はありませんが社会的な活動をしています。

上海では、日本人ママが有志で運営している子どものための文庫(図書館)があって、そこで運営ボランティアをしています。ほかにも、ゴスペルのサークルで日本人奥さん同志の交流を楽しんだり。

それで、家庭内のことをする時間がなくなったりすると、自分の中のバランスが崩れてしまってモヤモヤすることが多いんですよ。主人にも「Homemaker欠落!」と嫌味を言われて(笑)。

だから、夕方など家族といる時間は、活動仲間に「この時間はメール返信できません!」と公言して、スマホの使い方を改善したりしています。すべてバランスよくできるのが理想なんですけど、なかなかうまくできないのが課題ですね〜。

日本人太太(奥様)が結成しているゴスペルサークルのコンサートにて。上海でも好きなことを思いっきり楽しめる機会は、「人との縁」でどんどん広がる!とHiromiさん(写真右)。

−専業主婦でも、いわゆるライフワークバランスは大いなる課題なのですね。

はい、そうですね!でもまあ、課題はあるけれども・・・やっぱりHomemakerでいられることに感謝しています。何があっても、仕事に気が捕らわれることなく、家庭や子どもを第一に考え行動することができますから。

私の母も働いていましたし、うまくバランスをとりながら 家庭のことをやりくりしているワーキングマザーの皆さんもたくさんいて本当にすごいなと思います。

私は、子ども達がまだ小さいこの時期は、Homemakerでいることが今は一番大切だと思っています。そして、子どもの笑顔や子どもからの「ありがとう」などの嬉しい言葉に、日々たっぷり向き合えることが本当に幸せです。

−Hiromiさんが考える「Homemakerであることの意義」ってなんでしょうか?

そうですね 。母親は、家庭内の重要なポジションかなと思います。家庭は、世界でひとつだけの、小さな大事なソーシャルコミュニティ。それを支える役割をHomemakerとして十分に果たせることが、Homemakerである意義かなあと思います。言い換えれば、Homemakerは組織をつくっていくリーダーのようなものですね。でも、カリスマ的に強引に引っ張っていくでもない、昔の女性のように奥ゆかしく縁の下の力持ちでいるだけでもない・・・家族を応援し背中を押しながら、常に家族の目標達成にコミットできる、サーバント的なリーダー。そんな目線を持った主婦であり続けたいなと思います!

 

(あとがき)

「Homemaker」という新たな言葉、皆さんはどう感じましたか?私自身は、言葉の響きにとてもワクワクするものを感じ、「専業主婦のあり方は自由でいいし、自分次第でクリエイティブに過ごせるのだな!」と前向きに考えさせられるインタビューとなりました!そして、Hiromiさんの最後の言葉にあった「家族の目標にコミットするサーバント的なリーダー」。これからの時代、専業主婦も女性性から男性性を融合しながら、「家庭にいる女性」というだけの固定観念を持たず、そのあり方もどんどん変化をしていくのかなと思います。
次回は、日本からもっと遠く遠く離れた地で暮らす、元ワーキングウーマン専業主婦のストーリーをお届けします。お楽しみに!