「育休を新たなスタートラインに」社会全体の意識変革へ | 育休コミュニティ代表 栗林真由美さん

「育休は、産まれてきた我が子と蜜に過ごすために与えられた時間である」
そんな社会の暗黙の了解をどこかで感じ取って、自分の気持ちに向き合う余裕もない中で、なんとなく育休期間を過ごしてきた経験、【Molecule(マレキュール)】読者の方もあるのではないだろうか。の育休期間を振り返ると、まさに新年度を前にしたこの時期は「春から本当に産前のように働けるのだろうか、育休期間中に何かすべきことはなかったのだろうか」とモヤモヤが膨らんでいたことを思い出す。

今回インタビューさせていただいた栗林真由美さんは、そのなんとなく育休“に疑問を感じ、「育休コミュニティ」という活動団体を立ち上げたそう。”なんとなく育休”とは反対に”有意義な育休“を過ごすこととは一体どういうことなのか、栗林さんに聞いてきた。

「初めての妊娠は葛藤の連続」ネガティブ思考の転機となった、ある女性との出会い

プロフィール:栗林真由美さん | 二児の母、 子どもは1歳と5歳(2019年4月に職場復帰予定)。(IT起業勤務。2014年第一子出産。育休中は「子どもがいても思いっきり働く準備期間」とし育休プチMBA勉強会立ち上げメンバー、ママボノプロジェクトマネージャーなどアクティブに過ごす。2015年4月時短勤務で復帰。復帰後はこれまでとやり方を変えて新規プロジェクトマネージャーを自ら担う傍ら、社外でも自身の根幹の想いである「あきらめない女性を増やす」ために講演活動も実施。社内で初めて時短勤務として昇格。2018年2月第二子出産。「なんとなく育休をなくしたい」思いで同年8月に「育休コミュニティ」を設立。)

昨年第二子が誕生し、現在育休中の栗林さん。2回の育休期間は迷いなく突き進んできたのかと思いきや、これまでの過ごし方を聞いてみると、意外な答えが返ってきた。

「1人目の時は、妊娠が分かった瞬間から葛藤の連続でした。「これまで会社で懸命に築き上げてきた自分のキャリアを諦めなければならないんだ、これからは慎ましく誰にも迷惑をかけないように仕事をしなければ」と考え始めるとやるせ無い思いになり、検査薬で妊娠が分かった時に家を飛び出したくらいです。今だから笑い話ですが、当時は嬉しさ反面、これほどのショックはないと本気で思っていました。

職場で産後に復帰した、いわゆるロールモデル的な女性たちは、栗林さんから見て、とにかく周囲に迷惑をかけず仕事することに一生懸命で、「ああ、私も産後はそうなるのか」とネガティブな思考に陥っていたそう。ところが、妊娠8ヶ月の時のある人との出会いで、その思考が大きく変化したという。

「起業支援をしている奥田浩美さん(株式会社ウィズグループ代表)のイベントに参加し、思い切って奥田さんに相談すると、「何でそんなに悩むの?育休期間はキャリアダウンになるなんてことはなくて、”留学中”と思えばいいんだよ」って言ってもらってハッとしたんです。

これまで足を踏み入れたことのない全く未知な子育ての世界の経験は、全てが新鮮で全てに戸惑って・・・まさに初めての海外留学と重なるところがあるな、と考えると、そこからはワクワクや楽しさが一気に広がっていきました。私はいつも、自分が迷ったり悩んだ時、答えは外にあると考えているのですが、今回もそうだったなと思っています」

奥田さんとの出会いから、子育ての戸惑いや不安もプラスに捉えられるようになったという栗林さん。その後は育休期間を「子育てをしながら思いっきり働くための準備期間」と自分の中でテーマ付けをし、そのテーマに沿って育休プチMBA勉強会を立ち上げたり、資格取得をしたりと復帰後の未来像を描きながら精力的に活動をしてきた。

そして、第二子の育休期間中の昨年「育休コミュニティ」を発足。いったい、どんな思いから立ち上げに至ったのだろうか。

「2人目の出産後に、育休中をどう過ごそう?と考えた時に、すぐに答えが出てこなくて。「私は何がしたいんだろう?どう過ごしたらいいんだろう?」と街中でひとり大きなお腹を抱えてフラフラ歩きながら考えていて、ふと周りを見渡すと、目に入ってくる光景は、4年前の妊娠の時とあまり変わらないことに気づいたんです。

なんとなく育休期間を過ごして、ママ友と他愛もないランチをして、気づいたら1人目のお迎えの時間が来て、1日が終わっていく。その時に、「そうか、私、この光景をなくしたいんだ、私だけが有意義な育休期間を過ごしても、世の中は何も変わらないな」と、今まで自分の中にあった想いが明確になりました。」

2018年8月、栗林さんが思い切って投稿したというFacebookがこちら。

「なんとなく育休」をなくしたい。だから・・・始めます。 4年前、初めての産育休を過ごしていた私は「育休はキャリアダウンではなく、むしろキャリアアップになるはず!」と考えて、色々なことにトライしていた。育休プチMBAの立ち上げだってそう…

栗林 真由美さんの投稿 2018年8月30日木曜日

 

育休中の過ごし方は人それぞれだけど、どう過ごすか?によってその後が大きく変わる。その大事な期間を自分のためにも親の背中を見て育つであろう子どものためにも「なんとなく」過ごしてほしくない。栗林さんのその強い思いは、SNSを通じて大きな共感の渦に。そして育休コミュニティの立ち上げに向けて一気に動き出すことに。

「育休期間はキャリアダウンにならない、そう社会の意識が一番変わるのは、育休期間を過ごす女性たちの変わる姿を身近にいる家族や友人が見ることだと思うので、どういう形が良いかを模索してコミュニティに行き着いたという感じです。」

育休期間のテーマ設定で、その後の人生は180度変わる

育休コミュニティキックオフイベント(2018年10月5日)

現在約70人の産休・育休中の女性たちが所属している「育休コミュニティ」。栗林さんが第一子の育休中、テーマを決めて活動したことで充実して過ごすことが出来た原体験がベースとなり、メンバーそれぞれが「育休中のテーマ」を設定し、テーマの達成に向けて、毎月進捗を確認しあったり、お互いにアドバイスし合う活動をメインに行っているそう。そのテーマは「ワークライフバランス」、「パートナーシップ」、「スキルアップ」、「育児」など多種多様なんだとか。

「育休コミュニティに所属しているメンバーは、自分の人生を模索している人がとても多いですね。パラレルでやりたい、とか、起業したい、とか、転職したい、とか。自分で自分の人生に舵を切ろう、としている途上。めぐりめぐって、今の会社に復帰しようとなっても、自分と向き合った上で復帰するのとなんとなく復帰は全く違うと思っています。育休コミュニティは安心安全で草野球の練習場のような場だよ、とよくメンバーに言ってるんです。ノーリスクで応援する場」

ここ数年、ママ同士の交流会やイベントが一気に増えたが、「育休コミュニティ」はそれらとは少し毛色が違うように見える。インタビューをした日も、他に2人のママが子連れで同席したのだが、そこで印象的だったのが、お互いの子どもたちの名前を知らないということ。

ママ同士のコミュニティでは、「●●ちゃんのママ」という呼称をよく耳にするが、ここでは全員が「あなた」が何をしたいのか問う場となり、個人の意見が求められているのだ。

この春、仕事復帰をするメンバーも多い中、栗林さん自身も第二子の保育園入園が決まり、4月から職場復帰を控えている。その中で、これから「育休コミュニティ」はどのような場を目指していくのだろうか。

「私の大きな夢の一つに「諦めない女性を増やす」と言う夢があります。そのために、女性に関するあらゆる既存の概念を変えていく人でありたいと思っています。まずは「育休コミュニティ」をもって、育休=キャリアダウンという既存概念を育休=有意義に過ごすことによるキャリアアップ、自分で舵をとる人生にするための準備期間、に変えていくこと。それだけでなく、今後も例えば、ワーママ=大変、ツラい、という概念や、管理職=長時間労働、つまらない、という概念を本業としてもプライベートでも変えていける活動をしていきたいと考えています。」

管理職は、マルチタスクをこなしているママこそやった方が良い

【Molecule(マレキュール)】のテーマでもある「妻・母・娘といった肩書きに囚われず「わたし」と向き合う」ことは、これまでの栗林さんのお話から、育休コミュニティのミッションとも重なるところがあると感じる。その中で栗林さんは、今の働く女性たちが抱えるマルチな肩書きをどのように見ているのだろうか。

「「妻」や「母」という肩書きは、なぜかその人の可能性を狭めている印象があります。でも私は本来肩書きは、その人自身をレベルアップさせるものだと考えています。妻と言う役割、母という役割をもこなせるキャラクターとしてレベルアップさせてもらっているなと。マルチタスクをこなせているからこそ、その肩書きを楽しんだ方がいいし、管理職はママこそやった方が良いと思っています。職場では、大人同士会話のキャッチボールができるし、子供という、会話がスムーズには出来ない、不思議なマネジメントを出来ていることを誇りに思うべきです(笑)。

最後に、【Molecule(マレキュール)】の読者に向けて、栗林さんにとっての「わたし=自分軸」について聞きました。

「母(●●ちゃんのママ)」でもなく「妻(●●さんの奥さん)」でもない「自分」というアイデンティティで栗林真由美という1人の個として何をするのか、何をしたいのかが最も求められるのは、「仕事」を通してだと感じています。それはなぜかというと、私の場合、一番自分が自分で居られる場所が「働くこと」だからです。子どもには母としての一面もさることながら、一番自分らしさが発揮できる場所=働くこと、の背中を見せていきたいです。むしろ、私自身は大して家事も育児も得意ではなく、私が子ども達にできることといえば「働いている背中を見せること」位しかないのが正直なところですが(笑)」

 

▽育休コミュニティ▽