
2020年4月7日、新型コロナウイルス対応の特別措置法に基づく緊急事態宣言が7都府県に出されました。そして、その後全国に。Molecule(マレキュール)として、いま、この状況下で出来ることが何なのかをずっと考えてきました。
そこで、最初のアクションとして、外出自粛の中で編集部の私たちがいま、家族や身近な人と共にどんな日々を送っているのか、1人1人のスタンスも含めて記事を通して発信することにしました。社会の様々な情報に過度に左右されすぎず、今できることを家族や自分たちで実行していくことこそが、私たちのスタンスではないかと思っています。
皆さんの半径5メートルの暮らし方も、この連載を通してぜひ考えるきっかけになればと思います。
今回の執筆者
IT事業会社に勤務するかたわら、1人でも多く有意義な育休を過ごせるよう、産育休者を対象とした育休コミュニティ「MIRAIS」を主宰。その他講演や執筆活動などを通し、「あきらめない女性を増やしたい」という自身の想いを実現すべく精力的に活動中。
緊急事態宣言から、6歳と2歳を家庭保育しながら在宅勤務中。
目次
この状況をなんとかしたい
コロナの状況で、外出自粛の生活。
誰もが不安になり、ストレスがかかる日々ー。
そんな中でも、前向きにポジティブに生きる人たちだっています。
普段、常にポジティブな私。私ももれなく、早いうちから「これは転機だ」「きっとチャンスに違いない」と前向きにこの状況を捉えていました。
いや、今思うと必死に「捉えようとしていた」というのが正しいかもしれません。
私が主催している産育休者を対象にしたコミュニティ『MIRAIS』では、有意義な育休を過ごすためにメンバーそれぞれがテーマを設定し、半年間の活動を共にします。
この3月、在籍しているメンバー達が活動期間を終えてコミュニティを卒業しようとしている最中、コロナの状況が一層深刻に。コミュニティメンバーの誰もが、この状況下での復帰には不安一色しかありませんでした。ただでさえ育休から復帰するときは不安を感じるものですから、この状況では無理もないですよね。
でも、私はそんな状況をなんとかしたかった。
「こんな状況でもメンバーが楽しめるようにできることは何?」
「不安を感じながら復帰するメンバーに何かサポートしたい」
「メンバーのために私ができることは?」
自分に問いかけ、持っていたあらゆるツテをすべて使い、コミュニティ内でたくさんのイベントを開催しました。
仕事と並行してのイベント準備はそれはそれは白目を向くほど大変でしたが、それでもこんな状況下で少しでも『MIRAIS』に入って良かったと思ってもらえたら、と全力の日々でした。
そして無事に、在籍していたメンバーが3月に卒業。最後まで見送れたことに安堵し、体から何かが抜け落ちていくのがわかりました。ポッカリと穴が開いてしまい、しばらくは自分がまるでしぼんだ風船になってしまったような感覚でした。
私ってなんなんだろう……

何かから逃げるように全力で駆け抜けた期間を過ぎて、ようやく世の中の動きに目を向けてみると、テレビをつければ不安な情報、新聞を読めば深刻さが増す状況の記事ばかり。
加えて4月に上の子が小学生になり、この異常事態の状況でわが子が不安にならないようケアしなければという思いと、慣れない入学準備が怒涛のごとく押し寄せました。「小一の壁」どころではありません。
奇しくも同じタイミングで下の子は保育園を転園し、これまた今までと違う環境が負荷にならないようにせねばという状況。自分の不安もさることながら、子どものケアをしなければ……という中、時は待ってはくれません。
主宰しているコミュニティでも第4期がスタートし、次から次へと降ってくるタスクに、私自身もまったく余裕がなくなってしまいました。
不安な情報ばかりに囲まれ、慣れない入学・転園の準備、子どもたちのケア……いつの間にか私は自分自身を見失いそうになっていたんです。
「私ってなんだろう……」
そんな中で「自分の不安を掃き出すシェア会」が友人内で開催されると聞き、何かにすがるかのように参加しました。久しぶりにオンライン上で会う大切な友人とのシェア会で、それぞれが自分の近況や不安をシェアしていきます。
この会に参加して、私は自分を見失っていること、そしてその原因に気づきました。不安に飲み込まれて、「私らしくいられる」ための行動をおろそかにしてしまっていたのです。
どんな状況においても自分らしくいるために必要なこと
私が私らしくいられること、それは
私はいろんな人とコミュニケーションをとることが好きで、
私は何かにチャレンジすることが大好きで、
私がつくったコミュニティ『MIRAIS』が大好きで、
私は体を動かすことが大好きだ。
そして私のパワーの源は「家族」だということ。
これらが「私」というものを形成していて、「私」らしさをつくっていたということ。
不安の渦にいた時期はこれらのことをすっかり忘れ、ただただうずくまっているだけでした。このことに気づき、行動を再開することで、私はようやく見失いかけていた自分を取り戻せました。
まさに暗いトンネルを抜けた気分。どんな状況においても自分らしさを忘れないために必要なこと。
それは、自分らしさをかたちづくることをやめないことだと思います。
こんな時こそ「未来軸」で捉える
今、これを読んでいる方は、日々をこなすことでいっぱいでしょう。かくいう我が家も同じ状況です。
家庭保育しながら、仕事をする。共働き家庭はまさに「働く」ことにおいても「緊急事態」。
子どもが楽しめるようにあらゆる工夫をしても、まったく思い通りにならない。オンライン会議が始まれば乱入してくるのは日常茶飯事。集中しようと思うと「ママー! こぼしちゃった!」「ママー! お腹すいた」と強制的に中断され、思うように捗らないストレス。子どもが目の前にいるのに、100%相手をしてあげられないストレス。
あらゆる葛藤を抱え、それでも仕事に邁進する私たち。この状況を近視眼的に見たら正直「悲惨」でしかない。
しかしながら10年、20年、30年先の未来から「今」を見るとどうでしょうか?
「新しい時代の転換点」
「時代と時代の狭間」
「強制的変化のスイッチ」
きっと振り返れば、こんな言葉で今の状況が語られるでしょう。だとしたら大変なのは当然ですよね。いつか子どもたちにあの時にこうだったんだよ、ああだったんだよ、と伝えられるネタになるなら少しは悪くない、と思えるかもしれません。
こんな時こそ、物事を捉える視野を「未来」に向ける。「できない」ことより「できた」ことに目を向ける。自分に「×」をつけるのではなく「○」をつける。
すると、いつも見ている日常も少し違うように見えてきます。そこに今の状況の「本質」があるのではないしょうか。
自粛期間で気づけたたくさんのこと
あらゆる制約がかかっているこの状況下で、気づけたことは他にもあります。
1つは「家」という空間で楽しめることは色々あるということ。例えば、家にいながらにしてオンラインヨガやYoutubeのエクササイズなどはこれまでもできましたが、コロナでの自粛生活がなければやらないままだったかもしれません。おかげで雨の日も家にいながら楽しく過ごせるようになりました。

もう1つは、飲食店のテイクアウト。
やんちゃな子どもが2人いる我が家族は食べることが大好き。毎週末の夕飯は近所のお店でテイクアウトを買ってきて、「なんちゃってパーティー」を開くのがここ最近の恒例となっています。コロナの生活がなければ「お店でテイクアウト」という選択肢はありえませんでした。
これまでも週末に外食することは度々ありましたが、その度にハラハラしっぱなし。「子どもがお皿を割ってしまったらどうしよう」「何か粗相をしたらどうしよう」といった具合に、100%食事を味わうことはできませんでした。
テイクアウトなら余計な心配なく、味わいながら家族で楽しく食卓を囲むことができます。心なしか子どもたちも夕飯を食べるのがさらに楽しそう。きっとコロナの自粛生活が終わっても、「テイクアウト」は我が家にとって新たな選択肢としてあり続けると思います。
そして、家庭保育しながら仕事をするという異常事態を通して、通常に勤務していたら気づかなかったであろう保育園のありがたみや、一方で日々成長していく子どもを間近に見られることの喜び。
オンラインでコミュニケーションすることの良し悪し。オンラインの本質。大変な中でも、これだけの気づきがありました。
こんな状況で楽しめない、ツラいと思うことはごく自然のことだし、正直簡単でラクです。けれど、普段気づかないような気づきに目を向けること、それこそが「どんな状況でも楽しむ」という本当の意味なのではないでしょうか。
「変わり続ける」という覚悟ー。

「変わり続ける」という覚悟。
この言葉は、私が主宰するコミュニティの初期メンバーが卒業する時にメンバー達に贈った言葉です。この言葉の意味を今、改めて自分で噛み締めています。どんな状況でも覚悟を持って「変化していく」。
自粛期間が解除されたら、どんな生き方をしていくのでしょうか。前の生活に戻る人もいれば、転機と捉えて生活を変える人もいると思います。強制的に生活を変えざるをえない人もいるでしょう。
この期間をどう捉え、どう行動するかは自分次第。「変化」の渦中にいる私たち一人ひとりが、この後の時代をつくる。そう、今まさにコロナを通して、一人ひとりが時代に問われているのだと感じています。
この時代の大転換を生きる者の1人として、変わり続ける、変わっていくという「覚悟」を胸に、そして自分らしさを忘れずに未来をつくっていこう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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