3月8日は国際女性デー。2023年のテーマは”Choose to Challenge”です。このテーマにふさわしい、挑戦を続ける一人の女性がいます。スマホアプリケーションの設計や開発を行う株式会社Bogunovのボグノフ愛臨さん(以下、愛臨さん)です。愛臨さんはアメリカの大学を選んだこと、外国人の夫と国際結婚したこと、3人の子どもを持ちながら夫婦で会社を経営していること。そのすべてが、チャレンジングです。私たちには多かれ少なかれ「変わるのは怖い」という気持ちがありますよね。しかし、愛臨さんは「迷ったらおもしろい方へ」進むことを選んできました。何が愛臨さんを挑戦に突き動かすのでしょうか。彼女が取り組んでいるチャレンジを紹介します。チャレンジ1:サービスの先にいる人の力になるWebのサービスを使っていて「パッと見てわかりにくい」「操作がわかりにくい」と感じたことはないでしょうか?オンラインサービスが一般的になるにつれて見た目だけでなく、見やすさや使い勝手の重要性が増しています。「見にくさ」や「使いにくさ」は、敬遠される理由になるからです。実は3人の子を持つ愛臨さん自身、ベビーシッターのマッチングアプリでそうした経験をしました。使いにくさを感じていたものの、運営会社にそのことを伝えるのも面倒で、解約しようと思ったそうです。回り回って自分に返ってくるそのことを夫に伝えると「きっと、君の他にもやめている人がいると思うよ。ベビーシッターは世の中にとって必要なサービスだよね。やめる人が増えると、どうなるだろう。ちょっとしたことでも、積み重なると自分の首を絞めることになる。だから、ちゃんと伝えた方がいいと思うよ」と、たしなめられたといいます。愛臨さんの会社がアプリ開発をはじめて7年。これまではクライアントのサービスを開発する受託開発が中心でしたが、はじめて自社サービスを開発しました。それがsubgrowです。subgrowはユーザーの行動パターンを分析し、サブスクリプションの解約率を改善します。これまでサービス提供者は、マーケティング会社に依頼して解約理由を分析してきました。しかし、担当者によってデータの見方は変わります。また直接ユーザーに聞いても本当の理由を教えてくれるとは限りません。本当の解約理由がわかると、どんなメリットがあるのでしょうか。まず、サービス提供者はサービスを改善できます。リーズナブルな価格帯で利用できるsubgrowを使えば、マーケティング会社を活用するだけの体力がない事業者も、新規ユーザーの獲得に集中できるでしょう。注力するべきところに注力できること。それがそこで働く人の働きがいにもなります。それ以上に愛臨さんが重視しているのは、そのサービスを利用している人の力になれることです。サービスは多くの人に利用されることで、長い間サービスを提供し続けることができます。ベビーシッターサービスなら、働く子育て家庭の力になることもできるでしょう。サービスの先にいる、サービスを必要とする人を応援したい。そうした思いからsubgrowは生まれました。チャレンジ2:夫婦で共同事業をする夫婦で事業をするおもしろさは、二人の強みを活かせることと話す愛臨さん。人前でのアピールが苦手な夫に代わって、投資家やクライアントへのプレゼンなどは愛臨さんが担います。愛臨さん夫婦にとってサービスは二人をつなぐツールといえるのかもしれません。米国の大学に進学し外国人と国際結婚するまで米UCLAで学位を取得した愛臨さん。アメリカの大学に進学しようと思ったきっかけは、小学校4年生のとき家族で行ったアメリカ旅行でした。愛臨さん宅にホームステイに来ていた友人の家を訪ねたとき、近くにあるUCLAを案内してもらったのです。そのとき愛臨さんは「この大学に行く」と決心。高校の先生からは反対されましたが、自分の限界を知りたかった彼女は子どもの頃の目標を実行に移しました。帰国後は通信会社に就職し、国際電話のレート交渉やデータサーバーの営業に携わります。愛臨さんに営業の仕事は合っていたようです。「私にとって営業は、商品を売ることではありません。友達になるものだと思っています。他の人の生い立ちに興味があるので、誰とでも話ができますね。自分と違う人生を歩んで、ここまでやってきたという事実。それだけで、どんな人も尊敬に値すると思っています。」夫と出会ったのも、人が好きな彼女の性格が関係しています。ホームステイの受け入れに熱心な両親の方針から、家族以外の人との生活が当たり前の環境で育った愛臨さん。あるときやってきたウクライナ人の女性を通じて、夫と出会うことになります。夫は優秀なプロジェクトマネージャー愛臨さんの夫は、大学でコンピュータサイエンスを学んだ旧ソ連圏の出身。冷戦時代に宇宙開発に力を入れてきた旧ソ連圏には、優秀なエンジニアがたくさんいます。夫も教員として人に教えられるほどエンジニア領域の研さんを積んできましたが、日本の方が活躍できるのではと考え、来日。愛臨さんいわく、夫はプロジェクトマネージャーの手腕が優れているといいます。海外のエンジニアは急に長い休暇を希望するなど、日本人とは異なる価値観を持っています。そのようなときも、夫は一人ひとりの自尊心を保ちながら、上手に統率していくのだそうです。国際結婚の不安がなかったのは「行動」を見たから国際結婚はやはりハードルが高いと感じるMolecule読者もいらっしゃるでしょう。しかし、愛臨さんが外国人の夫を選んで大変と感じたことはありません。「小さいときから他人がいる環境で育ったので、違いが楽しいです。ネガティブなことをネガティブに感じないといえばいいのかもしれません。」とはいえ、友人や恋人と人生のパートナー選びとでは違うはず。価値観の違う相手のどこを見て、この人なら大丈夫と思えたのでしょうか。「結婚前は一人に限らず、いろんな男性を見なさい。というのが父の教えです。人を見る目に関しては、異性にだけでなく、150人以上のホームステイ受け入れ経験からも鍛えられたと思います。私が注目するのは言葉ではなく、行動です。特に何に時間を使っているかを見ていますね。なぜなら時間の使い方で、その人の大事にしているものがわかるからです。」愛臨さんにとって、もっとも大事なのは家族。お父さまが台湾出身の方なので、家族中心の価値観で育ってきたせいもあるでしょう。しかし、「近くにいる人を幸せにできなければ、遠くの人も幸せにできない。」と愛臨さんは言います。夫も家族を大切にする人だとわかった愛臨さんに、国際結婚の不安はありませんでした。チャレンジ3:子どもを持ちながら働く「迷ったらおもしろい方へ」進むことをモットーとしているという愛臨さん。どんなときに迷いを感じたのでしょうか。「どのタイミングで子どもを持つかで迷いました。私は迷ったらいろんな人に意見を聞きます。もっとも信頼しているのは父です。父はこう言いました。”お金は後で作ることができる。でも、子どもは年齢もある。いましかできないことを、やりなさい。”そうだなと思いました。自分の子どもには、本当のことしか言わないと思うんですよ。」子どもを抱えながら、どう仕事するのか。家庭を持つことは負担にもなりますが、愛臨さんにとって子どもがいる生活はチャレンジングなものに思えました。挑戦しがいのあるものに出会うと、ワクワクするのだそうです。できるかできないかではなく、やるかやらないか乳飲み子を含む3人の子どもを抱えながら、毎日をエネルギッシュに過ごす愛臨さん。最後に彼女の原動力を話してもらいました。「私のモチベーションは家族です。家庭か自分の夢のどちらかをあきらめる人生を、自分の子どもに送って欲しいですか?だから、私はがんばります。私ができれば子どもたちもできるとわかるはず。どんな困難も知恵と工夫で乗り越えられることを、私は子どもたちに見せたいんです。そのために成長し続けなければいけません。成長を続けるには、チャレンジし続けることが必要です。できるかどうかじゃなく、やるかやらないかなんですよ。そう思えば、自分が持っている以上のエネルギーがわいてきます。そして、家族の関係がよければ、どんな問題も解決します。」愛臨さんのチャレンジに終わりはありません。国内初、スマホアプリのサブスクリプション解約理由解析ツール subgrow編集後記「家族の関係がよければ、どんな問題も解決する」という言葉が印象的でした。私自身、仕事にまつわる本当の原因は家族、特に夫との関係なのに、それに向き合ってこなかった経験があるからです。話し合いをしたり、ケンカしたりするくらいなら、一人でやった方がいい。そう思っていたんですよね。でも、そのいびつな関係はどこかで無理が出ます。愛臨さんは、それをとてもよく理解していたのでしょうね。自分のためだけでなく、次の世代のためにがんばるという愛臨さん。Moleculeは彼女のように挑戦し続ける人を応援するメディアでありたいです!