2024年が始まりました。新年は「新しいことにチャレンジしたい」と意欲が高まりますね。こんなとき、よく話題に上がるのが「運動習慣」。しかし、「忙しくて続かない」という悩みをもつマレキュール読者も多いのではないでしょうか。早川沙登子さん(以下、早川さん)はNY在住のヨガインストラクターです。4歳の娘を育てながら、インストラクターのほか子育て講座の講師としても活躍しています。忙しい日々でも生き生きと過ごしている早川さん。ヨガのメリットは身体面の健康だけではないようです。早川さんは、ヨガから何を得ているのでしょう。忙しくて時間がとれない私たちは、運動とどう向き合えば良いのでしょうか。ショーウィンドウに映る自分を「かっこいい」と思えた早川さんがヨガと出会ったのは大学を卒業して企業に勤めていたときのことでした。当時流行っていたホットヨガを始めたことがきっかけです。エクササイズとして楽しみ、細く長く続けていたといいます。ヨガとの付き合い方が本格的なものになったのは、夫の転勤に伴い渡米してからのことです。自分に合った先生と出会い、それまでは週に2、3回嗜んでいたヨガが、毎日の習慣になりました。「本当に自分を変えようと思ったら、ちょっとずつでも毎日コツコツやるのが大事。体も心も変化があってすごく楽しくなりました」早川さんは、渡米の際に仕事を辞めていました。次に何をしていいか分からない「キャリア迷子」の状態で、焦りを感じていたといいます。しかし、ヨガとの出会いが次のキャリアの扉を開いてくれたのです。資格を取得し、レッスンを行うようになりました。また、早川さんは自分の体にコンプレックスがありましたが、ヨガを通じてそのコンプレックスが解消されたのだとか。「肩が内側に入って姿勢が悪いことがイヤだったのですが、買い物に行ってウィンドウに映る自分を見たら、肩が開いていてかっこよかったんです」身体面だけじゃない!ヨガで心も変わるヨガをするようになった早川さんは、気持ちのアップダウンが穏やかになったそう。「以前は感情の起伏がジェットコースターみたいだったんですが、あまりブレなくなりました」ヨガでは、難易度の高いポーズでも呼吸を一定に保とうとします。そんな練習を重ねていくことで、気持ちも保てるようになったのだそうです。そして、もう一つの大きな変化は自分の内側に目を向けられるようになったことです。私たちは、起きてから寝るまで、常に外側に意識を向けています。我が子のことを気にかけたり、タスクを消化したり……。「少し休憩」のときでさえ、気がつけばスマートフォンを見続けるなど、外からのインプットが途切れることはありません。しかし、ヨガでは最初の呼吸から自分の内側に意識を向け続け、「今ここ」に集中します。それが、理屈ではなく直感を研ぎ澄ますことにつながったのです。言葉にできたら、たいていのことは解決できるヨガを学んでいるとき、同期の4人の中で一番体が動かなかったという早川さん。周りと自分を比べて苦しんでいました。「人と比べる必要はない」「自分は自分、ありのままでいい」―最近はそんな主張が多く聞かれます。誰かと自分を比べるのは、いけないことであるかのような風潮です。しかし、ヨガの練習中、早川さんにふと浮かんできたのは、「人と比べるのは別に悪いことじゃない」という思いでした。むしろ比べるからこそ、相対的な自分の位置が分かるのだ。自分の立ち位置が分かれば、次の目標も見えてくる。問題は人と比べることではなく、自分自身をを「良い、悪い」とジャッジすることなのではないか。そうひらめいたのです。この他にも、ヨガをしていると「ああ、あれってこういうことだったのかな」とつながったり、自分の本当の気持ちに気づいたりするという早川さん。このようなプロセスを経て、モヤモヤが整理され、言語化することができるようになりました。「言葉にできたら、たいていのことは解決できます」ヨガを通して、自分の内側に目を向け自分と向き合い、早川さんにはいろいろな気づきがありました。その一つが、自らの「育てられ方」です。私は私、子どもは子ども「私の人生は私のものだし、子どもの人生は子どものものだと考えられるようになりました」総じて恵まれている環境ではあったものの、両親から自分の気持ちを尊重されていないと感じることがあった早川さん。自らの育てられ方に納得がいかない一方、無意識に我が子に同じ接し方をしてしまうことがあり、自己嫌悪に陥ったといいます。早川さんは、子どもへの接し方を学び、またヨガによって自らと向き合うことで、子育てに対する姿勢も変えていきました。完璧な子育てができているわけではないと言う早川さんですが、相手が小さな子どもであっても、自分に非があれば謝ることができるようになりました。たとえば時間がなくイライラしてきつい言い方をしてしまったときには、「良くなかったから改めるようにするね、ごめんね」と伝えるのだそうです。今、早川さんはヨガを教えるかたわら子育てに関連する講座を開いています。我が子がかわいいと思えず苦しんでいる母親も、考え方や子育ての方法を知ることで子育てがラクに、楽しくなるのだといいます。「子どもは生まれる環境を選べません。だからこそ、どの子も等しく幸せであってほしいのです」そのためにはお母さんがハッピーでいることが大事。それが早川さんの信念です。活動の根底にあるのは「お母さんたちを幸せにすることで、子どもを幸せにしたい」という思いなのです。「ヨガマットの上は、自分の生活そのもの」ヨガを通して体や心が変わるのは魅力的。とはいえ毎日忙しくて、そんな時間はとれない......そう悩む読者も多いのではないでしょうか。「まずは10秒でいい。生活の中に体を動かす時間を作ってみてはどうでしょうか」と早川さんはアドバイスします。TVやタブレットを見ながら筋膜リリースをしたり、歯磨きをしながらスクワットをしたり…それだけでも体は変わっていくのです。いきなりジムに通うのではなく、動画を活用するのも良い方法です。無料でいろいろなレベルの動画が見られる世の中。少しずつレベルを上げていき、「さらに極めたい」と思ったときに先生に習いにいくと無理なくステップアップできます。ときにはインストラクターをしている早川さんでさえ、ヨガに向かう気持ちがわかないことも。そんなときは娘を幼稚園に送る前にヨガマットを敷いておき、帰ったらすぐできるようにするなど環境を整えるのだそうです。「マットの上は、自分の生活をすべて表す」と言われています。「練習を後回しにする自分は、他にも面倒なことを先送りにしているかもしれない。新しいアーサナ(ポーズ)に挑戦をためらうときは、別のチャレンジにも後ろ向きになっているかもしれない」このように、ヨガと向き合うことで、身体面だけでなく心の面でも大きな収穫があるのです。母がハッピーなら、世界は平和になるヨガでは、「現実は自分が創る」と考えます。「こうする」と決めたことは不思議とその通りになるのだといいます。たとえば「痩せたい」と思っているうちはなかなか痩せないもの。「痩せる」と決めてしまうことにより、アンテナが立ち、必要な情報が入ってくるのです。早川さんはヨガによって自らの内面と向き合ったことで、身体だけでなく生き方も研ぎ澄まされていきました。新しい年。「こう過ごしたい」と願うより「こう過ごす」と決めて、チャレンジしてみませんか?早川沙登子さんInstagram