4月16日は「ボーイズ・ビー・アンビシャスの日」。我が子には夢をもって自分の人生を歩んでほしい。そう願わない親はいないでしょう。でも、子どもに「大志を抱け」と伝える前に、親である私たち自身がワクワクして過ごしているでしょうか?「自信をもって一歩踏み出せる人を増やしたい」株式会社真面目の代表取締役・平川アズサさん(以下、平川さん)は目を輝かせて語ります。平川さんのストーリーからは、私たち大人がワクワクし続けながら挑戦を続ける秘訣が見えてきます。一本の作品で、人生は変わる平川さんが経営する株式会社真面目は、2013年に設立した映像制作会社です。「この一本で誰かの人生を変えていく。」というミッションのもと、映像を軸としたイベントの企画演出・プロデュースを行っています。同社のミッションの意味を、平川さんはこう説明します。「たとえば、私たちの作品が日本から8,300キロ離れた、ノルウェーに住む17歳の女の子の人生を変えるきっかけになるかもしれません」私たちは誰しも、「振り返ればあれが人生のターニングポイントだった」という瞬間があるのではないでしょうか。生き方を大きく変えるのは、意外な出会いだったりするものです。真面目が映像作品を通してめざす「一本」も、そんな存在。「人生を変える意思決定にかかわりたい」という思いから、たくさんの映像作品を世に送り出してきました。そんな平川さんは、今新たなチャレンジを始めています。それはそのホテルで過ごすことが旅の目的になる「ローカルディスティネーションホテルをつくる」こと。映像会社なのにホテル事業とは、一体どういうことなのでしょうか?「かわいい」より「かっこいい」自分の人生を生きたい かねてから映像の世界に関心を持っていた平川さんは、17歳でモデルとしてのキャリアをスタートします。平川さんにとって170センチの高身長はコンプレックスでしたが、それを逆手にとれば映像の仕事に関わることができる、と考えての選択でした。しかしスポットライトの裏で平川さんは違和感を抱えていました。「モデルとして”キレイ”、”かわいい”と言っていただくこともありましたが、それは私が欲しい言葉ではありませんでした。私は私の人生をかっこよく生きたい、と感じていたのです」そんな平川さんが心惹かれたのは、暗闇でモニターを見つめ現場を取り仕切るプロデューサーでした。彼らは作品づくりを土台から支える縁の下の力持ち。自分が求めているのは、他人によって出来上がった空間で被写体として作品に関わることではなく、「作る側」なんだ。そう気づいた平川さんは2年半かけて、見よう見まねで映画の脚本を書き上げました。そして関わりのあったスタッフの協力を得ながら、渋谷の映画館で商業映画を上映するに至ったのです。その後平川さんは、26歳で制作会社に入社。右も左もわからなかった状態から、着実に映像編集の技術を身につけ1年で独立し、フリーの映像ディレクターになりました。これだけでも大きな方向転換ですが、平川さんは満足しませんでした。自分が本当にワクワクして取り組める映像制作で、もっと社会の役に立ちたい―そんな思いが湧き上がってきたのです。この思いが「この一本で誰かの人生を変えていく。」をミッションとする「真面目」の設立に至ったのでした。ホテルが提供する 誰かの人生を変える体験「誰かの人生を変える」意思決定に影響を与えるのは、映像作品だけとは限りません。今、平川さんは新たなチャレンジを始めています。それがローカルデスティネーションホテルです。2022年、イギリスの名門校ハロウスクールをモデルにした日本発の英国式全寮制インターナショナルスクールが岩手県に開校しました。450年の歴史を持つハロウスクールの卒業生には、元英国首相のウィンストン・チャーチルや、インド初代首相ジャワーハルラル・ネルーなどの偉人たちも名を連ねています。すでにアジアで9校のインターナショナルスクールを持つハロウスクールが、新しい開校場所に選んだのが岩手の八幡平市でした。世界の有名大学への進学を目指すだけでなく、アートやスポーツ、社会貢献など幅広い活動を通じて生徒の人間的な成長を目指す同校の教育方針には、地元との連携やコミュニティ活動が欠かせません。大切な子どもを預ける学校ですから、学校選びの際や、長期休暇の前後には保護者も地域を訪れます。しかし、八幡平には保護者が滞在できる宿泊施設が十分ではありませんでした。そこで、平川さんは新たな事業としてローカルディスティネーションホテルの立ち上げを進めることになったのです。あの体験が今に 人生の分岐点づくりは地方創生にも平川さんが目指しているのは、宿泊や観光を提供するだけの施設ではありません。「泊まる子どもたちや家族が、自らの人生について考え”分岐点”となるようなホテルを作りたいのです」岩手県盛岡市出身の平川さんには、ホテルの経営を軌道に乗せることによって、過疎が進む地方の関係人口を増やしたいとの思いもあります。構想中のローカルデスティネーションホテルは、国際交流や農業体験、馬とのふれあいなど、現地を訪れるからこそできる体験や、日常から離れた環境で心身をリラックスできるリトリート施設です。宿泊客にとって、体験と宿泊場所の両方を提供したいと平川さんは考えています。さらにハロウインターナショナルスクールの生徒には、卒業後も岩手を第二、第三の故郷として大切に感じてほしい。思い起こすのはいつになっても構いません。何かの折に「岩手でのあの体験が、今につながっていたな」と子どもたちが思い起こすきっかけになれたら。ホテルの事業計画には、収益の一部を教育支援事業やNPOに寄付することなど、平川さんならではのアイデアも盛り込まれています。地方に対する思いは人一倍熱いものがあるからこそ、ホテル事業を中長期的な地方創生、子どもたちのための支援につなげたいと考えているのです。平日ひとり暮らしはワクワク提供のための暮らし方人に感動を与える映像や体験を提供するには、何より提供者である自分自身がワクワクしていることが必要です。平川さんがそのために大切にしているのが「最善のHowを選ぶ」こと。平川さんは今、他の人とはちょっと違った「暮らし方のHow」」を選んでいます。出産後、平川さん夫婦の関係は変わりました。二人の仕事と家事・育児に対する考え方が違うことに、子どもが生まれて気づいたのだといいます。それでも、家族を続けたいと考えた平川さんが前向きに選んだのが「平日ひとり暮らし」でした。寂しくないはずはありません。2歳の娘の動画を見て泣きながら「明日も頑張ろう」と自分に言い聞かせる夜もあるといいます。でも、「子育ては向き合う時間の長さじゃない」と平川さん。どんなに忙しくても週末は娘と過ごし、そのひとときはPCやスマートフォンを遠ざけます。そして「あなたが本当に大好き、大事」というメッセージを伝え続けています。そんなことをするくらいなら、ひとり暮らしを選ばなくてもいいのではないか。そんな意見もあるでしょう。「母親が仕事に熱中したら子どもがかわいそう」「子育ては母親が主導すべき」「夫婦は同居が当然」―知らず知らずのうちに、私たちはそんな価値観が正しいと信じています。一方、平川さんの選択は「女性が自分で自分の人生を選ぶことは本当に素敵なこと」という信念に基づいています。あらゆることに目標や目的を設定するプロジェクト型の思考をする平川さんにとって、そんなライフスタイルはごく自然なものでした。「子どもがいるから、あきらめる」のではなく、やりたいことはどんどんやろう。「できない」のではなく、「どうすればできるか」を考えよう。小さな娘にもわかるように、働くことへの思いを伝えているのだそうです。ワクワクの源は「嫌いなこと」を明確にすること仕事もプライベートも全力で楽しんでいる平川さん。どうすれば、平川さんのようにワクワクしながら挑戦し続けられるのでしょう?返ってきたのは意外な答えでした。「嫌なことをはっきり自覚し、辞めることです」近年「好きなことを仕事にしよう」という風潮があります。でも「好きなことがわからない」という人も多いのでは?平川さんいわく、大事なのは「嫌いなこと」を明確にすることだというのです。私たちは、嫌なことに出会ったとき、半ば無意識のうちに、我慢を選んでいるのではないでしょうか。社会で生きていく以上、人と協調することはとても大切です。しかし、嫌なことを我慢して続ける先に「ワクワク」が待っていることは、おそらくありません。嫌いなことを明確にし、どうすればその割合を減らしていけるのかを考え実行に移す。「その結果、毎日が楽しくなります」と平川さん。経営者としても社員には「苦手なことよりも、できることを最速で伸ばそう」と伝えているのだといいます。「一歩踏み出せる1000人の母に」という思い「生物学的には、女性が子どもを生めるのは1年に1回だけ。でも仕事をすれば、社会的には1,000人でも2,000人でも”生める”。平川さんにはたくさんの人を生み出す存在になってほしい」あるとき、平川さんは知り合いの女性経営者にそう言われたのだとか。平川さんにとっての「生み出す」とは、自信をもって一歩踏み出せる人をつくること。自分の意思で人生を選択できる人を増やすことです。私たちは、自分に与えられた生き方や働き方を、半ば無自覚に受け入れているのかもしれません。たとえ不満やつまらなさを感じていても、です。しかし本当のワクワクとは、自分で選んだ道を、強みを活かしながら突き進むことで生まれるもの。あなたのワクワクは、どこにありますか?株式会社真面目