「自分らしく働き続けるにはどうすればいい?」働き方が多様化している中でも、自分らしく働くことができているのは少数派なのかも知れません。これまでと同じように正社員やフルタイムで働きたいのに、育休からの復帰がかなわなかったり、復帰したものの仕事と育児の両立ができなかったり、キャリア中断にはさまざまな形があります。働き方を変えるには、行動しなければならない事はわかっていても、行動の仕方がわからない、思うようなチャンスに出会えないと悩んでいる人は多いです。夫の海外赴任に同行するため、キャリアを中断せざるを得なかった鎌田薫さんは、現在も自分らしく働いています。彼女のチャンスのつかみ方には、人生の大切なヒントがたくさん隠されていました。キャリア中断の”駐在妻”経験を事業に鎌田さんは大学卒業後、大手生命保険会社へ入社します。その後2度の転職を経て、パートナーの海外赴任で”駐在妻”となりました。現在、鎌田さんは自身も経験した「働きたくても働けない」もどかしさをもとに、駐在妻支援の事業を展開しています。鎌田さんの「今」だけを見ると、自分とは違う輝かしい経歴に思えるかもしれません。しかし、鎌田さん自身も「不本意なキャリア中断」を経験した一人です。自分の思いとは裏腹にキャリアを中断せざるを得ない状況に置かれると、フラストレーションを抱えたり、どうしてよいかわからず空白の時間を過ごしてしまう人も多いもの。ロンドンへ渡英した頃の鎌田さんも、もどかしさを感じていました。しかし次第に「自分にできることはないか」と考えるように。そして駐在妻仲間や友人へ自分から連絡を取り、チャンスを探しはじめます。でも、偶然をチャンスに変えるのは誰にでもできることなのでしょうか?誰でも偶然をチャンスに変えられる「誰でもできます」その疑問に鎌田さんは自信たっぷりに答えてくれました。偶然をチャンスに変えるには、人とのつながりが必要です。ただ価値観は育ってきた環境や置かれている状況で、人それぞれ異なりますよね。子どもの頃のように、感情を伝えたり本音で向き合ったりすることを避ける人も多いのではないでしょうか。大人になってからの人とのつながりが希薄になる要因の1つは、自分の意思や感情を伝えなくなることです。鎌田さんは周囲に自分のやりたいことや、感情を伝える事をやめませんでした。常にオープンマインドで生きていく姿勢こそが、偶然をチャンスに変える秘訣です。自分の好きを伝えることは、オープンマインドであるためのはじめの一歩。相手の好みを知れば相手との相性がわかるので、どこまで自己開示していいかの判断がしやすくなるのです。きっかけを見逃さないために人とのつながりを増やして、偶然をチャンスに変える。それならば、数を増やせばいいのでは?と思うかもしれません。しかし、鎌田さんの言う「人とのつながり」はそうではありません。今ならSNSでつながりを持てば、数百数千というつながりを作ることができます。しかし、SNSでつながった人たちに「感情」や「本音」を話すかといえば、話さない人がほとんどではないでしょうか。偶然をチャンスに変えるには、感情も伝えらえる「深い関係性」が不可欠です。鎌田さんは、学生時代から社会人になっても常にサードプレイスと呼ばれる学びの場を持っていました。学びの場で知り合った人たちと深い関わりを持つことや、憧れの人に自分からコンタクトを取るなど「深く関わりたい人と関わる」のが何よりも大切です。実際、鎌田さんは「すてきだな」と思う人とつながる努力をしたことが、数年後の仕事につながったと言います。人とつながる努力をするというのは、自分自身が何を感じて何を考えているのかを伝えられる関係性を持つことなのです。やりたいことを周囲と共有するそんな鎌田さんのチャンスはいつも「一緒にやってみよう?」の一言でした。鎌田さんが仲間と共に運営する「CAREER MARK」事業と任意団体「Dual Career Anywhere」の活動は、どちらも仲間との「一緒にやろう」という思いの共有がきっかけです。鎌田さんが何にでも挑戦する柔軟性を持っていなければ、どちらも実現しなかったもの。「自分のやりたいこと」を周囲と共有していたから舞い込んだチャンスでした。リモートワークの関係づくりは”感情を共有する”現在ロンドンを拠点にフルリモートワークで仕事をしている鎌田さん。リモートワークでは、感情を共有することはあまりないのでは?と思う人もいますよね。しかし鎌田さんは「リモートワークでも深い関係は築ける」と言います。伝えにくくても、大切なことは伝える。何を感じて、何を考え、今何がしたいのか、を自然と共有しています。相手と感情を共有することで、お互いの「好き」が新たな可能性を生み出しているのです。自分と向き合うために、ひとりの時間を持つ就職氷河期世代の鎌田さんにとっては、就職自体がとてもハードルが高いものでした。就職先を選ぶ際は親のアドバイスに素直に従いました。当時は、親の望む人生を生きるのが当たり前だと思っていたからで、「自分が何をしたいのか」を考える時間はあまり持っていなかったそうです。しかし「自分で人生を選んでいないのでは」と感じた鎌田さんは一人暮らしをスタート。すると自然と一人で考える時間が増え、「自分は何をしたいのか」を考えるようになります。そして今自分が悩んでいることを友人に打ち明けた時、転職を打診されました。人生はコントロールできる悩んだものの、友人が「あなたに合うと思う」と言ってくれるのだからと転職を決意します。転職先では「自分はどうしたいのか」と問われることが当たり前になったとのこと。そこで鎌田さんは人との交流だけではなく、自分の内面と対話しやりたいことや「好き」を知ることが重要なのだと気づきます。2度目の転職も、人生相談がきっかけでした。営業先のひとつから「この先どうするの?」と聞かれた鎌田さんは、自分が抱いているこの先の人生への不安をありのまま伝えました。するとその会社の社長からスカウトを受け2度目の転職につながったのです。2度の転職経験から、自分の内面と対話することで「自分の人生はコントロールできる」と確信を持ちました。誰もがキャリアをあきらめない世の中へ順風満帆なキャリアを重ねていた鎌田さんの転機となったのが、夫の海外赴任による想定外の離職です。その後、不本意なキャリア中断を経験した女性を応援する「CAREER MARK」の事業化を実現します。キャリアブランクをブランディング期間へキャリアの中断を経験した多くの人は、ブランク期間ととらえるのではないでしょうか。しかし鎌田さんは「キャリアブランクはブランディング期間になります。海外経験や出産や子育てなどによる大きな環境変化で得たソフトスキルは、大きな武器になるからです。それにキャリア女性がこれまでに身に付けたスキルは数年で錆びついてしまうものではないと考えています。」と話してくれました。ソフトスキルは目に見えないものです。しかし、それをエピソードに乗せてうまく伝えることができれば、ブランクはブランディング期間に変えられるのです。これは駐在妻だけでなく、多くの人にも応用できる考え方だと思います。どこにいても自分らしく生きていける人を増やしたいと語る鎌田さん。これからのことを話す彼女の表情は、いきいきとしていました。CAREER MARKDual Career Anywhere