初めて顔を合わせる人が多い春。新生活で良い第一印象を残すことは、その後の関係をスムーズに進めるのにとても大切です。けれどファッションに自信がなく、チャレンジできずにいるMolecule(マレキュール)読者も多いのではないでしょうか。「ファッションには、自分の人生を前向きに切り開くパワーがあるんです」そう話すのは、パーソナルスタイリストの中島ようこさん(以下、中島さん)。身なりを整え、自分にあったおしゃれがわかると自分の印象をコントロールできる上、自己肯定感が上がり、挑戦する勇気も湧いてくると言います。それはなぜなのでしょうか?ファッションの力で新生活を自分らしく過ごすヒントを聞きました。服を変えると心も変わるお気に入りの服を着てショッピングに出かけると、ワクワクしませんか?新しい服は気持ちも新たにしてくれます。ファッションは気持ちを変える大切なカギなのです。 目に見えない内面や性格を変えるのは、簡単なことではありません。形がない内面の部分は変えようにもとっつきにくく、どう変わったかもわかりにくいでしょう。一方、ファッションはパッと見てわかるので、他の人にも伝わります。他の人に「素敵だね」と言われると嬉しくなりますし、おしゃれになった服装や、周囲の人に褒められた明るくなった表情は鏡で見ることができます。トレンド情報より大事な「自分を知ること」では、私たちはなぜおしゃれ迷子になってしまうのでしょう?中島さんはおしゃれ迷子になる理由を次のように話します。「情報がアップデートされていない」「おしゃれの基本がわからない」「自分のことがわからない」の3つです。 情報をアップデートするには、世の中に関心を持ち、外に目を向けることです。SNSや雑誌を見たり、百貨店の店先を歩く、街行く人のおしゃれを観察したりするのは良い方法です。でも、働く子育て世代にそんな時間はないし、そもそも自分に合った服がわからないと感じている人も多いはず。中島さんによるとより深刻なのは、自分の内面ときちんと向き合っていないことだと言います。自分が将来どうなりたくて、人からどう見られたいと思っているのか。何に惹かれ、どのような点に魅力を感じるのかをじっくり問い直す作業も欠かせません。「自分をちゃんと理解していると、ファッションにも自信がつく」と中島さん。興味関心を掘り下げることで、本当の自分の価値観が見えてくるのです。働く子育て世代が ”おしゃれ” を取り戻すには仕事と家庭をどう両立させていくかは、多くの子育て世代が抱える悩みです。子どもがいないうちは、時間とお金をほぼ100%自分のために使うことができましたが、子育てが始まるとそうはいきません。さらに子育て中は、おしゃれよりも実用性を重視した服選びをしがちです。中島さん自身、出産後は動きやすさや丈夫さなどの機能性を第一に服を選んでいました。子育てに専念する日々は一人になる時間がなく、社会とのつながりも失われがち。さらに加齢や出産による体型の変化も、おしゃれから遠ざかる要因のひとつとなっています。忙しい毎日に追われて外見を気にすることもなくなり、しんどい思いをしていたそうです。やらないことを決める勇気を持とうこのような悩みを乗り越えるために中島さんが取り組んだのは、「やらないことを決める」ことでした。もんもんとした日々の中、このままだとダメだと気づいた中島さんは、仕事の時間を減らし、本当にやりたいことに集中できる環境づくりをしたそうです。「今でこそスタイリストをしている私ですが、最初からファッションが大好きだったわけではありません。小学生時代は教室のすみで漫画を読んでいる人見知りで、クラスの人気者に話しかけるのも気後れする子どもでした。自分に自信が持てなかったときがあったから、おしゃれに迷う人の気持ちがよくわかるんです」ファッションに自信がなかった中島さんだからこそ、おしゃれ迷子に寄り添うことができているのです。おしゃれは“自分”を大切にすること家族や子ども、介護など他人の世話に勤しむ子育て世代の多くが「自分のために時間を使うのは申し訳ない」と感じています。それは無意識に「私なんか」と自分を小さく見ているからとのこと。自分のために時間やお金を使うことをもったいないと思うのは、自分を大切にしていないことと同じです。ファッションスタイリストをはじめた中島さんが嬉しかったのは、これまでファッションに自信のなかった子育て世代の女性が、自己肯定感が上がり、ポジティブに変わっていく姿を目にしたことだといいます。はじめは「スカートとピンクは絶対着ない」と言っていた彼女がピンクの服を買ったと楽しそうに話してくれたときは、胸がいっぱいになったそうです。未来も拓くファッションの力ファッションコンサルティングを通じて、中島さんはこれまで自信を持てずにいた女性たちが、少しずつ自分らしさを取り戻し、前向きな姿勢で生きていく様子を目にしてきました。その経験から中島さんは「ファッションは単なる外見を変えるだけのものではない」と言います。ファッションを通じて内面の変化が生まれ、新しい可能性が切り拓かれるのだと確信しているそうです。根底にはもっと多くの子育て世代が活躍してほしいという強い思いがあります。ファッションの力で自信を取り戻し、個性と能力を十分に発揮できる環境を整えていきたいと語ります。「もっと自分を信じて、大切にしていってほしい」一人ひとりが自分らしく輝ける社会づくりを目指す中島さんは、これからもファッションスタイリストとして活動を続けていくつもりです。「なりたい」が外見に表れる春は新しいスタートを切るにふさわしい季節。ファッションは可愛い、きれいといった感覚の話だけではなく、自分のこうなりたいというは、そのまま外見に現れます。おしゃれで外見が変わると、人から褒められる機会も増えます。ウキウキ、ワクワクできると今の自分をもっと好きになり、アクティブな自分や日々を楽しめるようになっているはず。おしゃれを楽しめるようになったら、内面はすでに「新しい自分」に変わっているのです。人を変えるほど大きな可能性を秘めているファッションの力。本当に大切なことに時間を使えるように、その力を味方につけて、一歩を踏み出していきたいですね。中島ようこさんのブログ中島ようこさんのInstagram