寝苦しい夜が続き、生活リズムも乱れがちな夏は、親子そろって寝不足気味…なんてことはありませんか?「仕事と育児に追われ、自分の時間は睡眠を削るしかない」。そう思っている働く子育て世代は少なくないかもしれません。今回お話を伺ったのは、パラマウントベッド株式会社で「Sleep×FemTech」プロジェクトを手掛ける大槻朋子さん。実は彼女もかつて、深刻な不眠に悩んだ一人でした。自身の経験と、その活動の根底にある強い想いから語られる言葉は、単なるノウハウを超え、私たちの毎日を捉え直すきっかけをくれます。なぜ眠れない?子育て世代と睡眠のリアルまずは、多くの人が抱える睡眠の悩みについて、大槻さんはどう見ているのでしょうか。特にこの季節、子育て世代ならではの悩みがあると大槻さんは指摘します。「子どもが小さいと、親子で一緒に寝ることが多いですよね。そうすると体が密着して、シンプルに暑いんです。また、夏休みに入ると子どもの生活リズムが乱れ、夜更かししたり朝起きられなくなったりしがちです。」ただでさえ寝苦しい夏に、こうした要因が重なり、睡眠の質はさらに低下してしまいます。実は世界で最も睡眠が短い、日本の女性たち悩みの背景には、より大きな問題が隠れていると大槻さんは考えています。「データを見ると、日本人は世界で最も睡眠時間が短く、特に女性は各国に比べて1時間以上も短い。これは個人の問題だけでなく、この50年の間の文化や社会構造の変化によるものも大きいのです。」睡眠不足が「自分のせい」ではなく、社会全体の構造と深く関わっていることを知るだけで、少し気持ちが楽になるかもしれません。今日からできる、睡眠の質を上げる3つのヒントでは、具体的にどうすれば睡眠の質を高めることができるのでしょうか。大槻さんは「難しく考えすぎず、できることからで大丈夫」と、優しく語りかけます。環境を整える。「寝具だけじゃない」総合的な視点快適な睡眠には、まず環境づくりが大切です。大槻さんは以下の3つのポイントを挙げてくれました。適切な温度と湿度を保つ寝苦しい夏場は、電気代を気にしすぎず、エアコンを適切に使用して室温を快適に保つことが大切です。その上で、薄い布団を一枚かけて体温調節をするのが良いでしょう。寝返りしやすい寝具を選ぶ寝具は睡眠の質に影響を与えます。特に、体が沈み込みすぎず、スムーズに寝返りができる適度な硬さのマットレスを選ぶことが重要です。柔らかすぎる寝具は体に熱がこもりやすく、夜中に目覚めてしまう原因になることもあります 。睡眠環境を総合的に見直す睡眠の質は、寝具だけで決まるわけではありません。温度、湿度、光といった物理的な環境や、個人の睡眠リズムなど、様々な要素が影響します 。寝具はあくまで全体の一部と考え、総合的に環境を整える視点を持つことが大切になります 。朝で変わる、夜の眠り不眠に悩んだ大槻さん自身が実践し、効果を感じたのは、朝起きて朝日を浴びられる環境を意識し、朝起きる時間を一定にするという、非常にシンプルなことでした。朝、光を浴びて体内時計をリセットし、起きる時間を固定すると、夜には自然と必要な睡眠をとるべき時間に眠気が訪れるようになります。大槻さんは、子どもの寝かしつけが必要な夜8時に一緒に寝て、朝4時か5時に起きるというリズムに切り替えたそうです。子の成長と親の余裕、両方を叶えるそして最後に挙げるのが、「意識」です。「子どもの睡眠が大事なのは、わかっている。でも、自分のことまでは…」。忙しい毎日の中で、そう感じてしまうのは当然のことかもしれません。そんな時、ほんの少しだけ視点を変えて、「誰の睡眠を良くするのか」を考えてみるのはどうでしょうか 。子どもの健やかな成長にとって、夜間の睡眠が欠かせないのはもちろんのこと 。そして、そんな大切な子どものためにも、親であるあなた自身が「眠ることの優先度を上げる」意識を持てると、家族全体の毎日に少しだけ心の余裕が生まれるかもしれません 。家族の誰か一人のためではなく、家族みんなの睡眠を大切にする。その意識が、好循環を生む第一歩になります。睡眠の悩みに見る、社会とのつながりなぜ、これほどまでに「女性と睡眠」というテーマに情熱を注ぐのか。その問いに、大槻さんは熱を込めて語ります。「睡眠データは、社会構造の裏返しなんです」彼女は、多くの国で女性の睡眠時間が男性より長い一方、日本ではその状況が逆転しているという興味深い事実を指摘します。この睡眠データを現在の日本の社会構造を映す“鏡”だと捉えており、女性の活躍を阻む様々な要因が睡眠時間の短さとして表出しているのではないかと考えているのです 。眠りが一人ひとりの可能性を解き放つ大槻さんのキャリアの出発点は、福祉用具の営業職でした。電動ベッドを使うことで、寝たきりだったお年寄りが窓の外の景色を見られるようになる。道具一つで、その人の世界が広がる瞬間に何度も立ち会ってきました 。「今、私が取り組んでいることも、実はすべて繋がっているんです 。目指しているのは、女性が中心に立って活躍できる仕事をつくり、女性のライフサイクルを軸にした新しい働き方の土俵をつくること。睡眠というテーマは、そのためのパワフルなツールだと考えています。」睡眠を整え、一人ひとりが本来の力を発揮できるようになること。それは個人の問題解決だけでなく、社会の在り方を変える力さえ持っている。大槻さんは、そう信じて活動を続けています。睡眠でもっと自分を大切にする「難しく考えすぎず、自分にあった眠りを見つけるだけで、毎日はずっと楽になりますよ 。」大槻さんは私たちの睡眠に対する意識を変えることの重要性を繰り返し話していました。眠りを大切にすることは、単に疲れをとるためだけではありません。それは、自分自身と家族を大切にし、日々のパフォーマンスを上げ、より豊かな毎日を送るための土台をつくること。そして、大槻さんがより良い社会の在り方を考えるように、睡眠は、小さな、けれども確かな一歩なのかもしれません。まずは今夜、少しだけ「眠ることの優先度」を上げてみませんか?その小さな一歩が、あなたの明日を、そして家族の毎日を、もっと明るく元気なものに変えてくれるはずです。パラマウントベッド株式会社Sleep×FemTech