年の瀬を迎え、多くの人が仕事と家族との関わりを見つめ直すこの時期。富士山麓のトレーラーハウスを活用したホテルで、ある親子が新しい働き方の可能性を示しています。富士吉田市にあるBLANC FUJI」は、富士山や桂川など雄大な自然の中で、心と頭と体に余白をつくる体験を提供しています。日々の仕事や家事に追われる現代社会。そんな中で大切なのは、心にゆとりをもたらす「余白」かもしれません。運営会社である株式会社BLANCと、BLANC FUJIの取り組みから、これからの時代における仕事と家族の関係性について考えてみましょう。はじめてのバイト先は父の職場「私が学校に行っている間、父は働いているんだな、くらいにしか思っていませんでした」佐藤ノエルさん(18)は、子どもの頃の父・恒平さんの思い出をそう語ります。それが変わったのはノエルさんが高校3年生の冬休み、BLANC FUJIでノエルさんが初めてのアルバイトをすることになったときのこと。決め手は「困ったときに相談できる人がいる」という安心感でした。「友達に家族の話をすると『仲がいいね』と言われるから、おそらく家族の仲もいいんだと思う」とノエルさん。しかし佐藤親子は、特別な「仲良し家族」というわけではないと言います。ただ、お互いを尊重し、たくさん話すこと、思いやりを持って接することを心がけてきただけだそう。日頃からのコミュニケーションが、自然と良好な関係を築いてきたようです。実際、働き始めてからは毎日のように恒平さんに相談していました。仕事の進め方から職場での悩みまで、あらゆることを話し合える環境は、社会人としての第一歩を踏み出したノエルさんの心強い支えとなりました。一方、恒平さんはノエルさんと働くことで娘の新しい一面を発見することになります。子どもだと思っていた娘が職場という大人の世界で、周囲の人々と上手にコミュニケーションを取りながら成長していく姿に、父親として誇らしさを感じたと言います。「話せる」から始まる、心地よい職場づくりBLANCの魅力を「風通しの良さ」という言葉で表現する恒平さん。「今まで私もいくつかの会社で働いてきましたが、風通しの良い会社はあるようで多くないものです。でもこの会社は本当に風通しが良いと感じますね。現場の要望や課題も社長に言えるところなんです」その言葉を裏付けるように、BLANC FUJIのメンバーはみな親切。ニコニコしていて、年齢や立場を超えて誰もが自由に意見を交わせる雰囲気があるそうです。BLANCは本社と現場の関係も良好です。定期的にコミュニケーションの機会があり、情報共有もフラットなので、よくある本社と現場の分断は見られません。風通しの良さは、偶然に生まれたものではありません。BLANCには佐藤親子を含め2組の親子従業員がいます。「余白をつくる」という企業理念に共感している者同士が、寄り添いチャレンジを続けることが互いへのリスペクトへつながっているのです。焚き火が照らす「余白」という価値観BLANCの「余白をつくる」という理念は、現代社会への洞察から生まれています。「現代は情報も多く、処理する速度も非常に速い。その中で余白を作るのは、意識しないと難しい」と恒平さん。富士吉田の火祭りからインスピレーションを得た薪火料理や、桂川のせせらぎを聞きながら焚き火体験を提供するBLANC FUJIでは、日常から離れ、心と頭と体にゆとりを取り戻す機会を提供しているのです。「親子で働く」で見えてきたもの大学進学後、別のアルバイトを経験したノエルさんは、BLANCの価値をより深く理解することになりました。約束したシフトと実際が違うなど、職場環境に悩んだときはすぐに恒平さんに相談しました。そのとき恒平さんは「君の能力は別のところで十分活かせる。君を必要として大事にしてくれるところで働いた方がいい」とアドバイスしました。娘の良いところを見出し、その可能性を信じる父親の言葉に、ノエルさんは深い信頼を感じたと言います。この経験を通じて、BLANCの職場環境の良さを改めて実感したノエルさんは、大学1年生の夏休みも1ヶ月間アルバイトとして働きました。来年もBLANCのアルバイトを希望しています。父と娘、それぞれの思い仕事と子育ての両立について、恒平さんは自身の経験を次のように率直に話します。「正直なところ、両立は全くできていませんでした。妻に任せきりで、自分はみんなのために一生懸命働くものだと。子どもたちの運動会にかろうじて行けるくらいで、家族で出かけることもほとんどできなかったことは今でも後悔しています」しかし父の姿を見てきたノエルさんは、違う視点を持っています。「父は私を誇りに思ってくれていると感じます。人との関わり方や、仕事に対する姿勢など、父から学んだことは本当にたくさんありました。一生懸命働く父の姿を見て育ったことは、私の誇りです」正解を超えて見つける、自分らしさ佐藤親子の対話から見えてくるのは、仕事と子育ての両立に「正解」はないということかもしれません。それでも恒平さんは、これからの子育て世代に向けて、自身の経験から得た思いを話してくれました。「子どもが子どもでいる時間は、思っているより短いものです。自分が子どもだった時よりも、自分の子の子ども時代の方がはるかに短いと感じます。油断していると、あっという間に大人になってしまう。だからこそ、子どもとの時間や日々を大切にしてほしいですね」仕事と家族の関係に悩む人は少なくありません。しかし、BLANCで働く佐藤親子の姿は、両立の形は一つではないとことを教えてくれます。年末年始に考える、あなたらしい働き方とは何ですか?BLANC FUJI