「あなたの人生の目標は何ですか?」もしこうたずねられたら、私たちはすぐに答えられるでしょうか。仕事や育児など、目の前のことにひたむきに取り組んでいる。でも、人生で達成したいことは何だろう。そう改めて考えてみると、すぐには出てこない-そんな人も多いかもしれません。株式会社rainboww代表取締役であり歌手の顔ももつ朱静儀さん(以下、朱さん)の答えは明快です。「私の人生の目標は”エンターテイメント”。それしかありません」朱さんにとって、会社経営とエンターテイメントはどのようにつながっているのでしょう。朱さんが人生を通して表現したいこととは、一体何なのでしょうか。かわいいもので、私たちは元気になれる朱さんが設立したrainboww社は、女性向けライフスタイル雑貨ブランド「GAACAL(ガーカル)」を運営する会社です。GAACALのラインナップには、流行を取り入れた「大人かわいい」ものが揃っています。特にスマホケースやウォッチバンドは種類も多く、機能性と見た目の魅力を両立。収納や照明などのインテリアグッズも人気です。成長中のGAACALの創業から4年間の年平均成長率は200%。Instagram公式アカウントのフォロワーは2023年9月現在で13.9万人と、多くの女性に支持されていることがうかがえます。GAACALの特徴は、顧客が欲しいものを即座に商品化するスピード感です。「ちょっと流行り始めているものや『今すぐ欲しい』がすぐ手に入るのがGAACALの強み」と朱さん。SNSや店頭での顧客の反応で得た情報を商品開発に反映させています。一般的な企業はテストマーケティングを繰り返し、需要が見込めることを確認してから商品を展開します。それに対し、GAACALでは速やかに商品化。小さな規模で商品を販売しながら市場の反応をみるという戦略をとっているのです。これができるのは、GAACALが中国の工場と独自のつながりをもっているから。小ロットで工場に発注して販売するため、市場の反応をみながら供給数を調整でき、在庫を抱えるリスクも少ないのも強みです。ここにGAACALの独自性があるといえるでしょう。それだけではありません。最近ではオフラインでの出店も拡大しており、2023年9月現在で全国45都道府県に345店舗を展開しています。ECに加えて実店舗を展開することで「顧客の姿がより具体的にイメージしやすくなった」と朱さんはいいます。大人も「かわいいもの」を好きでいいところで、GAACALにとっての「顧客」とはどのような人たちなのでしょうか。GAACALがターゲットにしているのは「働く女性」です。「忙しい日々の中でも、女性は好きなもの、かわいいもので元気になれる」というポリシーのもと商品を開発してるのだといいます。私たちは、結婚して子どもができたり、年齢が30代、40代と上がっていくと、「好きなものを追求するのは『イタい』ことだ」と考え、無難で落ち着いたデザインを選ぶ傾向があります。しかし、自分の趣味嗜好は、年齢や子どもの有無とは関係ないのではないでしょうか。 自分が「かわいい」「好きだ」と思ったものは自分らしさの表現につながります。誰もが、立場や属性に関わらず持ち物や着るもので自分を表現していい。そんな時代が来ているのかもしれません。「GAACALの商品を自分らしさ肯定のメッセージとしても届けたい」朱さんとrainboww社はそう考えています。出産でキャリア中断…「GAACAL」誕生のワケ朱さんにとって、rainboww設立のきっかけとなったのは自身の出産でした。妊娠当時、朱さんはレンタルファッションの会社を中国で設立して活躍していました。しかし出産により事業の継続を断念。それまで築いてきたキャリアを中断せざるを得なくなったのです。仕事中心の生活をしていた朱さんは、人生がつまらなくなる気持ちや悔しい気持ちを味わいました。しかしそこで終わらないのが朱さんのすごいところです。同時期に妊娠がわかった共同経営者と共に、前身のビジネスで得た知見や工場とのつながりを活かしてrainbowwを立ち上げました。そうして生まれたrainbowwのミッションは「諦めから挑戦する人生へ」。一人ひとりの女性が、仕事とプライベートの両方で輝く世の中をめざし、結婚・転勤・子育て・介護などライフスタイルの変化にあわせて柔軟に、女性が輝ける舞台を提供することを掲げています。「時間や場所に囚われない働き方をつくりだしたい」という朱さん。柔軟な働き方、輝き方を応援したいと考えているのです。女性が柔軟に輝ける舞台をつくるためにその根底にあるのは朱さんはじめ会社のメンバーの思いです。朱さん自身も、育児と仕事の両立にときには困難を感じています。「子育ては大変、としか言えないときもあります。でも人生の経験ととらえているし、より『やるしかない』という気持ちになりました」頼れるものはすべて頼り、育児と仕事の両立を叶えているのだといいます。 とはいえ、バリバリと第一線で働くだけが「輝く」ことではありません。「今は専業主婦だったとしても、社会とのつながりを持ち続けることが大事」そう朱さんは考えています。そのために大切にしたいのが、知識や情報をインプットし続けることです。キャリアが中断されてしまったり、自分の強みを発揮できる表舞台に立てなかったりしても、それは一時的なこと。 たゆまぬインプットを続けることで、時期がきたときにまた活躍できるのです。 そして、もう一つ大切なのは、「挑戦し続けること」。朱さん自身、これまで決して成功ばかりではありませんでした。「9割は失敗。むしろ失敗が前提です」トライし続ける中で見えてくるものが必ずあるといい、リカバリーできる範囲での失敗は、大事なものだと言います。 このように挑戦を続ける朱さん。その原動力は一体何なのでしょうか。「朱静儀というエンタメを見せたい」あきらめない姿、挑戦し続ける姿を見せたい。それは朱さんの人生のテーマでもあります。大学在学中からスマホアプリの開発などエンジニアとして活躍していた朱さんですが、エンジニアとしての道を追求するという考えはありませんでした。「私の人生の目標は、エンターテインメントをやる。それしかありませんでした」たとえばディズニーには「アトラクション」「音楽」「映画」「キャラクター」など、たくさんのコンテンツがあります。朱さんにとって「朱 静儀」は自分であって自分ではありません。朱静儀というキャラクターのさまざまな面を伝えることで、見ている人に楽しんでもらいたいと考えています。「朱 静儀」をいろいろなコンテンツで表現したいのです。そんな朱さんにとっては、事業も自分を表現する上での一つの手段、コンテンツだということになるでしょう。そしてもうひとつ、朱さんにとって大切なコンテンツがあります。それは「歌手活動」です。挑戦が人生を豊かにする歌で自分を表現することにも情熱をもつ朱さん。現在は主に楽曲配信というかたちで、歌手としての活動を続けています。朱さんが日本に留学したいと思った理由の一つが、「匠の精神」に惹かれたことでした。朱さんにとって「匠の精神」は、「好きの気持ち」とイコールです。好きなこと、夢中になれるということにはものすごいエネルギーがあり、人を幸せにする力もあると、朱さんはいいます。朱さんにとって「好き」や「夢中」の対象となるのが、歌だったのです。「歌手としては、あきらめそうになることは何度もある」といいますが、挑戦することそのものにも意義を見出しています。他にもラジオパーソナリティとしての顔ももつ朱さん。それぞれの活動はバラバラなものではなく、「あきらめない」朱さんを表現するコンテンツとして有機的につながりあっているのだといいます。「かわいい」で女性の活躍を後押し中国出身の朱さんは、日本と中国の違いを感じることも多々あるようです。しかし、「日本だから」「中国だから」と考えを狭めることはありません。そのときそのときで判断し、さらに高い視点で世界に展開する事業に育てたいと考えているのです。朱さんの「女性に輝き続けてほしい」という思いは、もちろん社員にも向けられています。ライフステージごとの女性の活躍を支援したいという理念をもつrainboww社は、現在採用を強化中。オフライン事業を拡大し、実店舗の数がどんどん増えている今、理念に共感する女性に「一緒に働いてほしい」といいます。「社会とつながりたい、もっと働きたい」という思いを抱えつつそれが叶っていない女性は、まだまだ多い。そんな女性が輝ける場をつくりたい―そんな思いも、朱さんの「コンテンツ」を形づくる大切な一要素なのかもしれません。株式会社rainboww