「見た目は気に入ったけど、履いてみるとちょっと合わない…」「なかなか理想の一足に出会えない」本当に自分に合った一足を見つけるのは意外と難しいものです。あなたも靴選びに悩んだ経験、ありませんか?鈴木いづみさん(以下、鈴木さん)は、自身の靴選びの苦労をきっかけに、大きいサイズの靴を取り扱うセレクトショップのオーナーになりました。彼女の店には、サイズの合う靴を探す多くの人が訪れます。くつやの日がある9月は、靴選びの悩みをビジネスチャンスに変え、多くの人に喜びを提供している鈴木さんのストーリーをご紹介します。靴選びに悩む人の助けになりたい北海道札幌市内に店舗を構える「SEVEN AND A HALF(セブンアンドアハーフ)」。25㎝以上の大きいサイズの靴を取り扱う同店は、北海道から沖縄まで、全国各地からの問い合わせや注文に応えています。この店で長年働いてきた鈴木さんは、2019年に事業譲渡という形でSEVEN AND A HALFのオーナーになりました。「私自身、靴のサイズが26㎝なんです。男性もののスニーカーやローファーを履いていた時期もあり、靴選びにはずっと苦労してきました。そんな中、十数年前にとある情報誌で見つけた『SEVEN AND A HALF』に行ってみたんです。そうしたら、高校の同級生がオーナーをしていて、とても驚きました」。数々の素敵な靴に魅了され、お店に通い始めた鈴木さん。種類が豊富でとても嬉しかったそうです。当時のオーナーにSEVEN AND A HALFで働いてほしいと言われたのは32歳のとき。その後、前オーナーが海外移住することになり、事業譲渡の打診を受けました。「靴選びに困っている方をたくさん見てきました。このお店をなくしてはいけない、そう強く感じたんです。不安も大きかったですが、子どもも成長し、ちょうどフルタイムで打ち込める仕事を探していたこともあって、決めました」意を決した鈴木さんは、事業譲渡の話を受けたのでした。オーナーになったとたんコロナ禍にところが、想定外のことが起こりました。事業を引き継いですぐ新型コロナウイルスの流行が始まり、セレクトショップを訪れる顧客が減ってしまったのです。鈴木さんは悩みましたが、自分自身を奮い立たせてお店を継続してきたと言います。「コロナ禍ではDMを送ったり、メルマガを送ったりしてお店を忘れないでいてもらえるように働きかけました。今年に入ってからは、大阪の阪急百貨店でポップアップショップを開催させていただき、常連様から新規のお客様まで、たくさんのお客様にお会いできた良い経験となりました」。小学生からLGBTQまで 人気がある理由「SEVEN AND A HALF」の靴を必要としているのは、大人の女性だけではありません。小学生、中学生や男性のお客様も来店します。その理由は何なのでしょうか。理由1:ファッションの多様化と足型の変化ファッションの多様化が進む近年「性別に関係なく、誰だって、おしゃれな靴を履いていい」と考える人が増えています。そのため1年を通して300足以上を取り揃えるSEVEN AND A HALFの靴が選ばれているのです。加えて「最近は足幅が狭いけれど足長が長い、西洋人のような足の人が増えています」と鈴木さん。「一般的な日本の靴だと幅が広くて、靴の中で足が遊んでしまうんですね。足に合っていない靴を履き続けていると、足の形が変わったり、足を悪くしてしまったりする可能性があります。おしゃれも大事ですが、自分の足型に合った靴を履くことが大事です」変化した日本人の足に対応するべく、細身の靴を作っている神戸のブランドを取り入れました。靴は健康へ直結しているもの。体のためにも、自分に合った靴を履きたいものですね。理由2:手入れで長持ちする本革へのこだわり2つ目の理由は、鈴木さんの素材へのこだわりです。特に本革の靴は、適切に手入れすれば、合成皮革の靴と比べて長持ちすることから勧めることが多いそう。「当店の靴はかなり長くもつことが多いんです。長い方だと7年など、きちんとお手入れしながら履けば相当長く履けます。1足の質の良い靴を大事に履き続けてほしいという思いのもと、本革の靴をお勧めして、ケア方法もあわせてお伝えしています」。物価高騰で消費を抑える人が多い今こそ、地球にもお財布にもやさしい本革の靴に注目すべきと言えるかもしれません。理由3:顧客の声を聴く姿勢3つ目は、鈴木さんの人柄。イタリアの工房で作った一点ものの靴を中心にSEVEN AND A HALFの靴は、すべて鈴木さんが仕入れています。「最初は自分が欲しいと思うものばかりを仕入れていたのですが、お客様の声を第一にするべきだとこの数年で学びました。お客様との対話やお問い合わせを通じて、サイズや色、流行などを把握し、本当に求められている靴を提供するように心がけています」。またオンラインショップでは、zoomで会話しながら使い足の状態や靴のフィット感などを確認するサービスをはじめました。コミュニケーションを通じて、顧客の疑問や要望に応えようとする鈴木さんの姿勢が、多くの人を惹きつけています。コンプレックスを強みに自分らしく歩む鈴木さんは、いまの仕事を「自分にしかできない仕事」だと自信をにじませます。「ずっと靴選びに悩んできた経験がある私だからこそ、お客様とお悩みを共有できると考えています。これは私にしかできないこと。『ここの店に来てよかった』という言葉を聞くたびに、喜びや幸せを与えられているのかな、と感じますね。この仕事がとても好きだし、子どもたちには『好きなこと』を続けて欲しいなと思っています」最後に、今後の展望を聞きました。「2024年に初めてポップアップイベントをさせていただきましたが、北海道外でのイベントを開催して、より多くの人に『SEVEN AND A HALF』を知ってもらいたいという思いがあります。過去には靴磨きイベントやシューフィッターを招いたイベントも開催してきましたが、今後は靴を含めた全身のコーディネートのアドバイスができるような企画も考えています。情報交換ができたり、悩みを共有できたりする場を作りたいですね」かつて靴選びで悩んでいた鈴木さんは、コンプレックスを活かした仕事で自信を取り戻しました。一人ひとりの足に合った靴を見つけることは、単なるファッションの問題ではありません。それは自信を取り戻し、自分らしく歩む人生の第一歩なのです。靴を通じて人生を豊かにする。鈴木さんと「SEVEN AND A HALF」は、これからも多くの人々の一歩を支え続けていくことでしょう。SEVEN AND A HALF