「再来年にはアメリカ移住を予定しています。1年のうち半分日本、半分海外。いろんなところに行っていろんな素敵な人に会いたいという理想が叶いそうです」そう話すのは株式会社KMJでコミュニティーディレクターを務める鈴木美帆子さん(以下鈴木さん)です。KMJは近藤麻理恵さんの「こんまり®メソッド」を基盤に、教育・研修事業、メディア事業、プロダクト事業を手がける会社。今や米国で「KonMari」「Kondo」は「片づけ」を意味する新たな言葉として使われるほど「こんまり®メソッド」は広がりを見せています。世界規模の会社の主要メンバーとして実績を上げ、二拠点生活を実現しようとしている鈴木さん。大きな夢が形になるタイミングですが、いたって淡々と「そうだよね、そう思ってきたもん」と感じているとのこと。当たり前のように理想の暮らしを実現できるのは、鈴木さんが「特別な人」だったから?そのように考えてしまいそうですが、決してそうではありません。片づけと理想の暮らしには深い関係があるようなのです。キャリアで意識した「攻めの転職」短大卒業後、ホテル業界に就職した鈴木さん。しかしほどなく結婚・妊娠し、退職。2人の子どもを出産します。友人の活躍を尻目に社会との距離を感じつつ、専業主婦生活を送っていました。その矢先、夫のオフィスがクローズ。仕事を探す必要に迫られます。職歴がほとんどなかった鈴木さんは、カスタマーセンターの仕事を経験後、職業訓練校に通い、PCなどのスキルを身につけました。その後派遣社員として外資企業のエグゼクティブ付き秘書に。華やかな世界に身をおいていましたが、鈴木さんはその環境に満足しませんでした。当時のパートナーとの離婚を意識していたこともあり、経営大学院に通ってMBAを取得したのです。「美容も健康も全て手放し、勉学に勤しんだ3年間」と笑って話す鈴木さんですが、並大抵のことではなかったでしょう。ユーザーと働き手の根本的な課題解決に寄り添いたいMBA取得後、縁あって家事代行サービス会社の立ち上げに参画します。事業拡大に貢献しましたが、心の中では2つの思いが芽生えていました。1つは、「ユーザーの根本的な課題解決にこだわりたい」ということ。一時的にハウスキーパーに片づけてもらったり、自分でその場しのぎの片づけをしたりしても、忙しい人ほどすぐにリバウンドしてしまいます。もう1つは、「働き手がプロフェッショナルとしてもっと高い収入を得、やりがいを感じられるようにしたい」ということです。専業主婦時代の経験から、主婦が生き生きと働ける環境を作りたいという思いをもっていたのだといいます。仕事選びも、ときめきでそんな時期に出会ったのがKMJです。代表のマネジメント能力にほれ込み、ジョインすることを決めたのでした。KMJの代表の言葉の中で印象的だったのは「僕の仕事はみんなが働きやすい状態にすること。そこに僕はコミットしているんだ」という言葉だったと言います。それを聞いた鈴木さんは「この会社なら抱いていた思いが叶えられる」と直感したそうです。得意の英語はもちろん、人と人とをつなぐ力や育成能力を買われての採用でした。鈴木さんは人より早くにキャリアの中断を経験しましたが、この出会いはあきらめずに学び、動き続けてきたからこそ。そしてせっかくこの会社にジョインしたからには……と、KMJの「こんまり®メソッド」を学びコンサルタントの資格も取得しました。この出会いは鈴木さんの人生を大きく変えていくことになります。片づけはノウハウじゃない。ときめく人生のためのツール「家の中が片づかない」「いつも雑然としている」そんな悩みを抱える人は多いかもしれません。ところが「片づけのゴールは”きれいに整った家”ではありません。あくまでそれは通過地点なのです。家の中を片づける時間がないほど忙しいのは、実は、自分自身が片づいていないからです」と鈴木さん。生活や頭の中が散らかっていると、優先順位を決められず保留が多くなってしまいます。つまり、人生に必要な決断ができていないというのです。「今は仕方ない」と割り切って生活をキープすることに集中し、時間ができてから片づけるのも一つの選択肢でしょう。しかしそれでは、居心地は悪いままです。「片づけは自己投資です。もし、今の暮らしに疑問を感じるとか、自分の生活を、人生を変えたいという思いがあるなら、覚悟を決めて根本的に片づけることが解決策になります」と、鈴木さんは言います。「こんまり®メソッド」は、片づけは断続的に行うものではなく一気呵成にやりとげることを勧めています。これが終わると「ときめきで選ぶ」感覚がマスターでき、つきあう相手や行動が選択できるようになるのだそうです。片づけはときめくトレーニングとはいえ「片づけ」と「ときめき」がどのような関係があるかピンと来ない人も多いのではないでしょうか?鈴木さんによると「ときめき」は自分軸であり、人生を切り開くヒントになるもの。自分軸が大事と頭では分かっていても、なかなか実践できない人は多いのが現状です。その「自分軸」を日常に落とし込むためのトレーニングが、片づけなのです。鈴木さん自身も、片づけを通して人生が変わった一人。ときめきを感じるためのきっかけとなるのが「理想を思い描くこと」だと言います。定期的に強く理想を思い描く習慣を身につけることで、鈴木さんの人生は少しずつ、思い描いた生活に「当然のように」近づいていったのです。ときめき感度を上げるにはこんまりメソッドでは、最初に理想の暮らしを思い描き、ときめきを判断基準に残すものを決めていきます。けれど「ときめく」がどういうことか分からない人はどうすれば良いのでしょう?そんなときは「まずモノを触って、自分の体の反応に目を向けて」と鈴木さんは言います。ときめきは触った瞬間に分かるもの。「まだ使える、買ったばかりだし……」などと私たちは損得で考えてしまいますが、直感を優先するのです。もちろんときめかないものを全部捨てるというわけではありません。役目が残っていればそこにときめく感謝をして残すなど、今の自分にとっての必要性を大事にしていきます。理想は最初からスムーズに思い描けなくてもOK。大事なのは「イメージと行動を繰り返すこと」なのだそうです。それによってときめき感度が上がり、より自分にとって大切なものを選べるようになるのだと、鈴木さんはアドバイスしてくれました。片づけを通してときめき感度を上げていった結果、鈴木さんは思い描いてきた理想の生活にどんどん近づいていることを実感しています。それは、一体どのような生活なのでしょうか。片づけの先にあった理想の暮らし職歴なしの専業主婦から外資系秘書、新規事業の立ち上げへ。鈴木さんは片づけに出会う前も自分で人生を切り開く決断力があったように思えます。しかし「片づけに出会う前と後とでは、決断の軸が変わった」と鈴木さんは言います。それまで決断とは、ロジカルに多くの情報を集めて、検討するものだと考えていました。今の判断軸は「ときめくかどうか」です。片づけを通じて自分の感情や感覚を意識するようになった結果、鈴木さんは自分自身が持っていた「あるものに気づく」ことができました。気づいたのは、自分のときめきポイントは「成長」と「社交」であるということ。現在の鈴木さんは、アメリカ人のパートナーと出会い、日本とアメリカを行き来する生活をスタートさせました。描き続けてきた理想の暮らしが叶いつつあります。こんな暮らしをしたいという思いを言葉にした結果、会社がアメリカの仕事も用意してくれたのだとか。鈴木さんは理想の二拠点生活に向けて準備を進めています。私たちは日々の生活に追われ、「自分にとって本当に大切なものは何か」を見失いがちです。Molecule(マレキュール)読者のみなさんも、「何が自分にとってのときめきか」を見失いそうになることがあるのではないでしょうか。けれど「ときめき」を感じられる理想を探すことは、自分と向き合うことにほかなりません。鈴木さんはときめきというものさしで自分の軸を大切にし、理想をイメージすることで、点と点をつないでいきました。私たちも自分だけの「ときめき」を見つけていきたいですね。KMJオフィシャルサイトKMJインスタグラム