3月8日は国際女性デー。国連が提唱する、女性の地位向上と社会参加をたたえる日です。日本も女性活躍が求められていますが、自信を持てない人の多さが指摘されています。子育て世代のMolecule(マレキュール)読者の中には、産後太りで悩んでいる方もいるのでは?ダイエットしようにも産前と産後は体が変わっています。これまでの方法が通用しにくくなっていますが、うまくいかずに自信をなくしてしまう悪循環に陥りがちです。「子育て世代こそ、自分の体をもっと意識してほしい」そう話すのは、理学療法士の辻 陽子さん(以下、辻さん)。辻さんはこれまで2万人以上に対面やオンラインのレッスンで骨盤底筋トレーニングの指導を行い、体のトラブル改善へ導いてきました。子育て世代に知ってほしい「自分の体と心」の話を教えてもらいました。骨盤底筋トレーニングで自信を取り戻そう子育て世代が自分の体を意識すると、どんないいことがあるのでしょうか?「体と心は連動しています。体の不調をそのままにしておくと、メンタルまで弱ってしまいます。悪い影響は、自分だけでなくパートナーや子どもとの関係にも広がりかねません」と辻さん。骨盤底筋トレーニングは、美しい体づくりだけでなく、人生を能動的に生きるためのエンパワーメントでもあるのです。出産で女性の身体は大きく変わります。今の子育て世代は育児と更年期が同時にやって来る近年、女性の出産年齢は上昇傾向にあります。厚生労働省の「令和3年度『出生に関する統計』」によると、第1子出産の平均年齢は30.7歳でした。子どもが小学生になる頃、30代後半から40代にさしかかっている人も少なくないでしょう。閉経の平均年齢は50.5歳。子育てと更年期を同時に意識しないといけないのが、今の子育て世代です。「実は、人生100年時代では閉経後の人生の方が長いんです。女性は生理周期で月に4回性格が変わると言われるほど、女性はホルモンで体の調子やメンタルが大きく左右されます」と辻さん。だからこそ自分の体について知ることがとても大事です。自分の排卵周期を知り、理解が深まると、PMSや更年期といった体の悩みを減らすことにもなるでしょう。そんな中、比較的アプローチしやすいのが骨盤底筋のトレーニングです。出産後の尿もれや骨盤臓器脱のリスクは4倍近くになりますが、正しく鍛えれば、筋肉はいくつになっても変わります。「過度に怖がる必要はありません」辻さんはレッスンで自分の骨盤底筋がどういう状態なのかを模型を使って解説したり、自分の排卵周期を知る方法を伝えたりするなど、体の動かし方と知識をセットで伝えているのです。骨盤底筋のキレイもおしゃれのひとつかつて、辻さん自身も尿もれに悩んでいた1人でした。第1子を妊娠中にはじめて尿もれを経験した辻さん。体の衰えに焦りを感じたといいます。「10代、20代のときとは違うのだから、仕方がない」と思う反面、学生時代から学んでいた理学療法士の知識が尿もれの改善に役立つことを知りました。今の仕事を始めたのは、日常生活に簡単に取り入れられる骨盤底筋トレーニングを子育てサークルで教えたことが原点です。尿もれなど泌尿器のトラブルや、性の話など下半身の悩みは、これまでタブー視されていました。気のおけない相手でも、どう打ち明ければいいかわからない人も多いのではないでしょうか。フェムテックの高まりを背景に、世の中の意識も少しずつ変わってきています。海外セレブの間では顔の美しさと同じくらい、骨盤底筋の美しさも重視する傾向があるのだとか。骨盤底筋のケアはおしゃれなトレンド。自ら自分を愛し、慈しむ女性を増やしたいという辻さんは、そんな時代の到来に喜んでいます。男性の尿キレの悪さは骨盤底筋が原因かも骨盤底筋=女性だけの話と思いがちですが、そうではありません。加齢による骨盤底筋の低下は、男性も同じなのです。「トイレに行ったのに、スッキリしない」その原因の一つに、前立腺肥大症という病気があります。この病気は手術で治療できますが、術後は尿もれリスクがあります。そのため「術前に骨盤底筋トレーニングを行い、リスクを軽減するのが一般的になっています」と辻さん。男女ともに、子育て世代が骨盤底筋を鍛えて心身ともに健康になることは、家庭にとって大いにプラスになることでしょう。正しいアプローチで体は変わる。腟から始まる世界平和辻さんのスローガンは「腟から始まる世界平和」。自信が持てれば、ポジティブな空気が子どもやパートナーに広がり、まわりのみんなが平和になるという意味が込められています。子どもを持つことは、とても幸せなことです。子どもは夫婦二人だけのときには味わえなかった幸福感や、人としての成長をもたらせてくれるかけがえのない存在です。自分よりも大切だと考える人もいるはず。一方で、子どもを持つと自分のためだけに使える時間やお金が少なくなるのも事実です。ライフイベントで自分のキャリアをあきらめたり、産後太りやパートナーとのセックスレスなど、思い通りにいかない経験をしたことのある人もいるでしょう。私たちは大きな環境の変化にとまどいを感じますが、「子どもがいるから仕方がない」とあきらめるしかないのでしょうか。「体と心は連動しています。正しい知識を持って正しいアプローチをすれば、体は変えられるんです」と辻さん。自信は自分の体のコントロールから心に比べると、目に見える体はわかりやすいもの。運動で自分の体をコントロールできれば、自信をひとつ取り戻せます。困難を自分で克服した経験を持つ人は、他人にも優しくなれるのではないでしょうか。そんな優しさが連鎖して、世界平和にもつながってほしいと辻さんは思っています。今、企業と一緒に「育休プログラム」を開発したいと考えている辻さん。働く女性が産後の生活を具体的にイメージできるように、出産や女性の体に関する知識を広める活動をしていくそうです。女性の体はすばらしいし、自分の体も大事なものです。いつの間にか忘れていた大切なことを、辻さんは思い出させてくれました。まわりの人に優しく接するためにも、まずは自分の体を大切にしたいですね。ヨーコ式骨盤底筋トレーニング