みなさん、こんにちは!molecule(マレキュール)ライターの呉由香です。昨年夏より上海で暮らし始めてから、早半年が経ちました。「子ども三人を連れて、上海の生活大変じゃない?」なんて、いろんな方に心配をいただきましたが、中国は思っていた以上に子育てがしやすい国!ハイピッチでこちらでの生活に慣れ親しみつつある私です。 そこで、連載企画「産後のわたし」の第3回目を、上海からお届けしたいと思います!ふと街中を見渡すと、ママだけがあくせく動いている姿はあまりなく、子どもを見守っている大人は、父親から母親、祖父母、お手伝いさん、など実にさまざま。とにかく子育てに皆が熱心!という印象です。中国では子どもは「祖国的花朵」=祖国の花。いつも誰かが「子どもはみんなで育ているから大丈夫だよ!」・・・と囁いてくれているような、暖かい空気を感じます。じゃあ、上海のママたちは、誰もが肩の荷を軽くして子育てライフを過ごせているの?日本で産後イライラしたり子育てに奮闘していた私のように、子育てを抱えて悩む人はいないんだろうか・・・??そんな素朴な疑問について、現地の中国人ママの本音を聞きにいってきました。上海ママのプレッシャーは高騰する「教育費」、移住も選択肢に写真:https://www.dailymail.co.uk/home/index.html より「中国って、物価が安いよね。」という印象を持つ日本人の方、まだまだ多いのではないでしょうか?上海では、それはもう10年前の話。今や、「東京よりこんなに高い!」とビックリするものばかりです。その中で目を見張るのは、家賃と教育費の高騰。まさにバブルです。特に子育て中の家庭にとっては、教育費は大問題。学校入学の競争の激しさを煽るように、赤ちゃんからの早期教育、知育教材、進学に有利な習い事など、実にさまざまな教育サービスが軒を連ねています。どんな教育を受けさせるといい?そんな情報がネットにも溢れ、親の目標は「いい学校へ」。そのために、あらゆる手段で教育への投資ができるのが上海なのです。公立・私立問わず、いい学校へ入るための教育投資を。そのためにどうやって子どもを養い、お金を捻出し、親が働くか?これは一大マターとなり、妊娠期からママだけに限らず家庭全体で非常に重いプレッシャーとなるようです。ちなみに、上海で経済的に余裕がある家庭は、海外留学を視野に入れたインターナショナルスクールが人気だとか。学費は日本円で、年間300万円以上はかかるところが多いようです!高洋(コウ ヨウ)さん。別府大短大、立命館アジア太平洋大学を卒業後、広州、上海、シンガポールで仕事を積む。上海に戻って結婚、産後2年は専業主婦。2018年5月より製紙メーカーに勤務中のワーママ。そんな上海で、今後の子育てに悩む2歳児ママの高洋(コウヨウ)さん・30代は、今、こんな計画をしているそうです。「半年後には仕事をやめて、タイ・チェンマイに移住したいと思います。英語環境の学校で、上海よりも安く教育を受けさせてあげられるから。夫も、理解・協力してくれます。その後は、シンガポールに行くことも考えています。」聞くと、タイの学校では年間4万元(日本円で65万円強)程度、生活費も上海の半分で済むそうです。 すでに高さんのように考え、海外に移住したママも少なくないのだとか。それほど、経済的なプレッシャーと闘っている家族も多いのが、上海の街の現実。そして、そのプレッシャーこそが、今の中国社会で、「家族一丸となって子を育てる」という原動力になっているのかもしれません。家族一丸となるからこそ、ママが孤立しない?中国流子育て休日の上海・世紀公園。多くの子連れファミリーは、パパ・ママ・子どもだけでなく、祖父母や兄弟姉妹家庭などと一緒に過ごしているようです。家族が一丸となるからには、夫に限らず、祖父母や阿姨(アーイー=お手伝いさん)は強力な子育てパートナー。学校・園への送迎だけでなく、宿題を見たり習い事や塾の送迎も、ママだけが抱え込んでいません。日系企業に勤める王玲(オウ レイ)さん(仮名)・40代は、小学生と幼稚園生の2児のママ。「一度目の出産前後は、日本の国立大学院入試準備の真っ最中でした!」将来のキャリア形成のために、生後間もない子どもを抱えて勉強をしたいと強い意志を持っていた王さん。そのため、中国から義母や実父に交替で日本に来てもらい、無事に子育てを乗り越えたそうです。大学院修了後、東京の企業へ就職し、二度目の出産後は育休取得。ご主人が海外転勤中でしたが、義母や義姉にも手伝いに来てもらい、夫婦離れての共働きを、ワンオペ育児で抱えることなく、やはり家族一丸となって協力する体制をしっかり築かれていたようです。産後ママの身に降りかかる心身トラブルは日本と一緒そんなふうに、子どもの教育のことで頭がいっぱいになりがちとは言え、家族全体が子育てに協力的だから、ママ自身にかかる負担は軽いのかというと、そんなわけでもないようです。高さんは、こう言います。「産後は、24時間子どもと一緒にいるのが辛かった。産後うつだった。自分の存在・価値を感じたかった。仕事をストップしていたけれど、子供が2歳になったら働きたいと思った。ビジネス用語も忘れつつあり、ブランクがあることがとても不安だった。」あれ、日本で私が育休中に経験した状況と同じだ・・・。キャリアコンサルタントになって、産後ママから受けた悩みと同じだ・・・。続いて王さんの悩みも、同様でした。「産後うつの手前のような状態になった。出産後は、「自分の将来は?」と不安に。感情の変化が激しく、4ヶ月頃までイライラが絶えなかった。」そうです。心身の不調や将来・キャリアへの不安。国も子育ての環境も違えど、産後ママに降りかかる悩みは一緒なんですね!本来ママである前に「わたしである」ということ、それを出産を通して自覚し、これからどうしたら・・・と悩むことは、母になる女性の共通の課題のようですね。どうやったら乗り越えられる?心身トラブルから「わたしらしさ」を取り戻す上海ママ流行動スタイル高さんと2歳になる娘さん。産後うつの頃を振り返ると驚くくらい、今は楽しく充実した気持ちで毎日を過ごしているそう。しかしそんな悩みを持ちつつも、なんだか上海の産後ママたちって、仕事への復帰も早かったり、「我が道」を颯爽と歩いているように見えるけれど・・・?と、私自身が周囲を見て感じる疑問は尽きません。そんなことを、二人から探ってみたところ、高さんからは、こんな答えが返ってきました。「自分らしく生きていくために、重要なことは「自分の存在意義」。上海の女性だって、悩んでいる人は多いんじゃないかな。でも悩みながらも、何かをやりだそうと動いている主婦が多いです。そのうちに自分の志向や好きなことに気づいたり、存在意義を自分で見つけているようで、時が来たらちゃんとライフワークを見つけている人は多いですね。私もタイ行きは子どもの教育目的もあるけれど、自分自身に対する挑戦の意図もあるのです。そのためにも、夫とのパートナーシップは大事にしています。出産したからこそ、話し合える関係性になった。家族の愛が深まったと感じています。」続いて王さん。「日本でも中国でも、働く女性やママの悩みは同じだと思います。私は今、上海の日系企業で人事をやっていますが、会社の子育てを応援する制度はあくまでも会社の制度。会社がどんなに頑張っても、できることは限られています。そこを一喜一憂するよりも、プライベートな部分をどう豊かにするか、の視点が重要だと思います。どう心身ともに健康に過ごし、自分の将来にも自信を持って考えられるようになり、楽しく育児ができるようになるか。それを自分自身で解決していく力を持つことこそが、女性がイキイキと活躍できる原動力になると思うのです。だからこそ、産後のサポートは必要があれば親・家族だけでなく、専門家にも頼ったらいいんじゃないかと思っています。」なるほど。お二人から聞く、上海ママの産後の行動スタイルは、「悩むことは当たり前に誰でもある」ことを受け入れた上で、自分の存在意義=ナチュラルな「わたし」を、どう充実させるか考え工夫する方法を持つこと。そしてそのために、積極的に周囲の協力を築いていくことを厭わない。そんなエネルギッシュな姿勢であるのですね!産後のママの前に現れるハードルは、国によっても様々。でも、二人のように、周囲にたくさん力を貸してもらうことで、「自分が持てる力」や「自分こそができること」を発見できる。そして「自分のやりたいこと」がどんどん研ぎ澄まされていく。そんな人間関係の育みができたら、産後ママも、より前向きに過ごしていくことができるのかもしれませんね。 わたしらしさを築くための動き方。上海ママのリアルな生き方をヒントに、産後期間である私自身も、自分探求や未来への挑戦をを楽しんでいきたいなと思います!▽連載企画「産後のわたし」記事はこちら▽産後の結婚観ぶっちゃけトークヨーロッパのママが「自分だけしんどいワンオペ育児」に陥らないのはなぜか