こんにちは。Molecule(マレキュール)ライターの羽倉綾乃です。ただいまミラノからドイツへの引っ越し中。イタリアを離れるのはさみしいけれど、古巣のドイツもいい所がたくさん!新しい出会いに期待です。さて、先週からスタートした連載企画「産後のわたし」について、本日はヨーロッパの事情をお届けします。日本のメディアに連日登場する「母親によるワンオペ育児」、日本の子供を持つ共働き女性の労働時間の長さは海外のメディアにも度々取り上げられ、世界の知るところとなってきました。みなさん、ヨーロッパのママ達と聞くとどんなイメージが浮かびますか?協力的なご主人やパートナーがいるイメージ?社会も子育てに優しい感じ?最初から子供と離れて眠る、ちょっと割り切ったイメージ?旅行やお出かけ、自分の人生を謳歌している感じ?はい、それ全部当たっています(笑) が!ヨーロッパと一口で言っても、文化も違えば制度や福祉も様々。そして国に限らず、苦労のない出産や育児なんてありません。みんな失敗してもがいて解決策を探している。今回、イタリア、フランス、ドイツ、スイスを中心に6国、30人あまりのママ達にアンケートやインタビューにご協力いただきました。それぞれの産後事情を各国別にご紹介していきたいと思います。【イタリア】我が子や孫への全身全霊のアモーレお誕生会は盛大に且つユニークに。ママの腕の見せ所です。パパはもちろん祖父母や親戚、シッターさんも駆り出される大仕事です。南北に長いイタリア、国が統一されてまだ100年余りとあって、かなり地域差もありますが、概ね出産や育児へのサポートは積極的です。それでも育児休暇中は30%までしか収入が保証されていないことや、キャリアへの影響の危惧もあって、育休取得率は10%台前半*止まりです。また南に行くに従ってイクメンすぎると、”Mammo“(マンモ=Mamma(ママ)とBabbo (パパ)を組み合わせている造語)と言って揶揄されたりする、保守的な面もまだまだあり、男性もなかなか辛いようです。ママが抱えるプレシャー本人だけでなく、パートナーも家族も育児に全力投球。過密スケジュールなお稽古に週末に、超活発なお父さん。おじいちゃんにおばあちゃんも加わって、子供は愛情に窒息気味かも? 「良き母親」でなくても良いけど、「全力でアモーレを与えているか?」ここに尽きます。【フランス】女性が無理なく自分らしい人生を送れるよう、皆でサポートヴァカンスは聖域。時には「子抜きヴァカンス」で充電してから、家族でのヴァカンスに向かうというママ達も。欧州だけでなく、先進国でもほぼトップの出生率を誇るフランス。これに至るには行政も様々な工夫を重ねたようです。結婚していてもいなくても、福祉や国からの援助は変わりませんし、最近では養子を持つ親たちへの援助も充実しています。また女性がキャリアへ戻れるように保育所だけでなく、保育ママやシッターさんの利用も盛んです。 そして男性の育児参加もとても積極的のようです。むしろ親はどちらも主体であるべきなので「協力」「参加」という言葉は不自然。父親もこんな楽しいこと、ママだけに渡せられない!という気持ちで子供を大事にしているそうです。男性の為の育休は2週間あり、7割の取得率。学校のストや学級閉鎖の際には、父親が進んで休暇をとるそうです。たとえママであっても「女」に戻る女性達の多くは無痛分娩を選び、粉ミルク派もとても多くいます。身体的負担を減らすために、あまり伝統的なやり方にはこだわらないようです。しかし、妊娠中12kg以上体重が増加するとお医者様に注意されるようですし、体型を早く戻さなくてはいけない、美しくあるべき、というプレッシャーは強いようです。退院するときもマニキュアを塗って髪の毛を巻いて準備していた、なんて声もちらほら。出産後もいち早く「女」に戻ることが期待されているんですね。【ドイツ】とにかく自然。そして親はひたすら考える男性の育児への関わり方に関しては、かなり意見が割れました。欧州はどこもそうですが、ドイツは特に移民が社会に溶け込んでいる国。その人の文化背景や考え方によって差はありそうです。とは言っても、男性の育休取得率は40%弱に上り、休日の公園、気がつけば女親は私だけだった!という記憶もあります。男性も女性も遊びたい、そこは対等にとことん話し合う、そんな意見もありました。自然分娩で、強力な母乳説。予防接種も子育て法も世論に流されない。お隣のフランスとは対照的に、こちらでは無痛分娩は少数派です。麻酔や薬に頼ることを避け、痛みも全て出産の醍醐味として受けるマインドが浸透しています。その代わり、体重が増えようが、髪の毛が抜けようが骨盤が広がろうが、誰も何も言いません。産後は助産婦さんが定期的に家に来てくれ、手厚いケアをしてくれます。ハーブやホメオパシーなどの自然治癒への関心も高く、予防接種や抗生物質などにも自分で調べて判断する親達が多いです。「日本x現地人」と「現地x現地人」カップルの夫婦関係の乗り越え方現地人のカップルも、夫婦どちらかが日本人のカップルも、概ね産後の関係は良好だという回答が多い中、一点だけ大きな違いがありました。 欧欧カップルは「産後でも愛情は変わらない。男と女だけの関係から今はチームになれた。」という何とも百点満点の答えが中心なのに対し、日欧カップルでは、「産後は、愛情や関心がすっかり子供に移行し、寂しそうにしている主人の姿が正直重荷だった」という葛藤や亀裂があったようです。つまり、欧欧カップルのママは「パートナーと子供の愛情は別物」で、どちらが減ったりすることないけれど、日欧カップルのママは、産後、愛情が全て子どもにいきがちになる傾向があるようです。わたしも同じ経験があるので、これは文化の違いでしょうか。ただ、日欧ママのここからの挽回が素晴らしい。その後にすぐ「でも彼の気持ちも分かるし、そこを汲んであげられていなかった」と自発的にママの方から改善しようとしているのですね。「コミュニケーションを怠ってはならない」というのは頭では良く分かるのですが、なんせ寝不足でホルモンバランスも乱れる中、「自分だけが大変」という心理状態に陥ってしまうこと、女性には良くあるのではないかな、と思います。ある日本人ママの回答では「9ヶ月お腹にいて産後も子供とずっと離れず一緒にいる私と彼の、親の自覚の現れ方の違いに不満もありましたが、それも予想通りというか、理解できること」という成熟した答えもありました。「なんで分からないの!」ではなく「自分はわかってあげられているか」の姿勢、なんですね。ママがヤキモチ焼くくらいパパが大好き。幸せカップルの共通点夫婦間がうまく行っているカップルの特徴の一つに、「パパファースト」であることがありました。ママっ子とかパパっ子という言葉があるとおもうのですが、幸せカップルの子供達は「パパ大好き」なんですね。一緒に寝る、遊ぶ、歯磨き、お着替え、いろんな場面で「パパ〜、パパと一緒がいい」と言うそうで、その話をするママ達は寂しそうに見せかけて、とても幸せそうです(笑)そのくらいパパがたくさん子育てに関わっている証拠。目指せ、パパファースト!日本のこれからを考える男性による育休取得率が低い日本ですが、欧州ママ達は「個人の意識だけじゃ限界がある。国主導で、育休取得者のポジションの確保や、休業補償・育児手当の制度を整え、若い親を守っていかなければ」という意見が圧倒的でした。どこの国でも最初からこうであった訳ではありません。みんなが声をあげて政治を動かしてきた歴史があります。また欧州ママに共通しているのは「出産も育児も千差万別。みんなそれぞれストーリーがあるのだから、人の意見を聞きすぎないこと」が大事、とのことでした。産後、私も何度ネットや育児書の意見に一喜一憂したことでしょう(笑)肩の力を抜いて、このかけがえのない時間を楽しみたいですね!*:参考資料OECD;International Network on Leave Policies and Research (2014); European Foundation for the Improvement of Living and Working Conditions (2011); Hong and Lee (2014, Gender Studies and policy review)▽連載企画「産後のわたし」▽ 初回「結婚観ぶっちゃけトーク」はこちら