岐阜県飛騨役所の地域振興課で、地域活性の取り組みを手掛けている舩坂香菜子さん。ふるさと納税サイトの店長業務だけでなく、飛騨ネットショップ倶楽部を立ち上げ、市内の事業者に寄り添いながら、商品やサービスの認知度向上と売上拡大に繋がる伴走型のサポートを行っています。また飛騨市の人口推移が30年後の日本の人口ピラミッドに近しいことから”人口減少先進地”として「未来のコミュニティ研究室」を立ち上げ、東京大学×FRA(国立研究開発法人)×楽天×飛騨市のメンバーで、関係人口の研究・実証を行っているそうです。2年前までは楽天の東京本社でバリバリ働いていた舩坂さんが岐阜県・飛騨市に家族と共に移住し、数々のプロジェクトの立ち上げから運営まで行うエネルギーはどこから湧いてくるのでしょうか?身近な問題を見つけ、周囲を巻き込み、メンバーの交流から解決策を自然と導いていくマネジメントの秘訣など伺っていきます。 ーーこれまでの舩坂さんのキャリアを教えて下さい。新卒で楽天㈱へ入社しました。2009~2018年は、主にECコンサルタントとして企画や営業をしていました。第一子出産前後にリーダーからヴァイスマネージャーとなり、部下を10名程度持つようになりました。2,3グループをマネジメントしていた時、傍目には忙しそうに見えたかもしれませんが、時短勤務に切り替わり、営業等は部下が行っていたので、実感として負荷が増えたようには感じていません。私自身、熱量の高いところに身を置いていたいと考えているので、メンバーのモチベーションは気になります。なのでマネージャーになってからは、メンバーのメンタルケアに注力しました。 人はやりたいことと今やっていることが違うと、ギャップに苦しんでしまうと思うんです。ECコンサルタントとして活動した9年間で業績が評価され、2度社長賞を受賞できたことは、とても良い思い出です。 実は入社して2ヵ月で福岡に転勤になったんです。その後も1年半から2年のスパン、鹿児島、京都、神戸、東京と転勤が続き、現在は飛騨市役所へ出向中です。ーー楽天㈱から飛騨市役所へ出向になったきっかけは何だったのでしょうか?楽天には『地方を元気に』という考えがありまして、飛騨市と連携協定を結んでいます。そこで今までECコンサルタントとして経験してきたことを、飛騨市に還元できないかというミッションのもと出向しています。他にも楽天が提携している地域があるのですが、私の場合は夫が高山出身だったことなど様々なご縁やタイミングが重なり、飛騨市地域振興課へ出向しています。人が人を呼んでくる 人との交流が成長のきっかけーー飛騨市役所では、どのようなお仕事をされているのですか?飛騨市が掲載しているふるさと納税サイトが6サイトあるのですが、その店長業務を行っています。飛騨市のふるさと納税の返礼品事業者や返礼品の新規開拓や、サイトのUI・UX・SEOのブラッシュアップも行います。 地域の産業振興や魅力発掘に繋がること、事業者様のモチベーションが上がること、効率が上がることならなんでもやります!飛騨市は24,000人弱と人口は少ないので、地域内での人と人との繋がりは強いけれど、業種が異なる方との交流や、新たな考え方に触れる場があまりないことに気が付きました。 寄付金額を上げるにあたって、地域の事業者さんが盛り上がり、主体的に考え自らやってみようと考え動き出すことが重要ではないかと考えているんです。なので私の意見を聞いてもらうのではなく、「楽しいな、やってみようかな」と思える交流の場を提供することに重点を置いています。今では事業者さんが「舩坂さんに会ってみなよ」と新たな事業者さんを呼んできてくれることが有難いです。出展:https://www.rakuten.co.jp/f212172-hida/ーー新しい環境でバックグランドが異なる方々とお仕事されてみていかがですか?やりたいことが多すぎて嬉しい悲鳴です。地域振興課の方々は、企画から予算の確保、そして実行に移すまで一人で担当していて、分業されて効率化されている大きな組織とは違う業務の進め方に学ぶことが多くあります。また地域振興の仕事はまだまだやれると感じることが沢山あり、あれもやってみたい、これもやってみたいと思い、オンオフ限らず「飛騨」を軸に興味の幅と、活動の範囲が広がっています。メンバーを集めて身近な疑問をとことん追及ーーふるさと納税の他に、どのような活動をされているのか教えて下さい。2つありまして、まず1つめは「未来のコミュニティ研究室」を立ち上げました。 飛騨市長の都竹淳也さんが飛騨市を「人口減少先進地」と表現しているのですが、飛騨市の年齢分布は30年後の日本の人口分布に一致すると言われています。飛騨に来て、飛騨の魅力に触れる機会が沢山あり、飛騨の魅力の維持のために地域内の人と地域外の人が一緒になれれば面白いのでは?と考えました。そこで東京大学、FRA(国立研究開発法人)、楽天㈱、飛騨市のメンバーで『関係人口』の研究・実証プロジェクトを発足させました。研究チームでは飛騨市のファンの方やふるさと納税者へのアンケートを実施して、地域への愛着が深まるきっかけや、地域に愛着をもって下さる方の属性、全国的なポテンシャルを調査しています。実証チームでは、『飛騨米ブランド化』『みやがわ考古民俗館の活用』『飛騨市ファンクラブの深化』という3つのテーマで、全国各地から6名程度のチームを作り、ファンづくりを実施しています。私は室長として全体の企画と共に、1メンバーとしてお米チームに所属し、2019年8月5日に飛騨の希少なお米を食べてもらうプロジェクトをリリースしました。最終的には地域に関わる人が増えて活気が増えることを目指していて、研究・実証結果をWebサイトや論文など様々な形で発信していきたいです。出展:https://www.makuake.com/project/banq-ten/ーー企画力と関係者を巻き込む力が凄いですね!2つめの活動についてお聞かせ下さい。「飛騨ネットショップ倶楽部」を今年立ち上げました。飛騨のネット販売を、楽天のノウハウを生かして盛り上げたいと思い、企画・運営・講師をしています。ここでは私が一方的に知識をお伝えするのではなく、各事業者に寄り添った「伴走型」のサポートを行うという点にこだわっています。飛騨市には魅力的な商品やサービスがたくさんあるので、ネットを上手く活用して全国に発信し、売上拡大を目指していきたいです。先日は第2回目の勉強会を実施し、12社16名が集まりました。定期的に開催している勉強会では、メンバーで知識を共有しながら、売上を上げていこうと熱い空気が流れていて良い刺激を受けます。家のことは仕組化し、互いのキャリアを最優先ーー色々な取り組みをされていますが、どのように時間を捻出しているのでしょうか?何かコツがあれば教えて下さい。上の子が生まれてからも、自分のやりたいことはやろうと決めていました。子どもが起きている時間は親子揃って機嫌良く、そして子どもがお昼寝や夜寝ている時は思いっきり自分の時間を充実させようと思ったんです。そこで色々調べていくうちに、子育てをラクにする『ジーナ式』という方法に出会います。そのお陰で、子育ての中でも苦労の多い『寝かしつけ』や『夜泣き』への苦労は、2人ともほとんどなく、育休中も勉強や夫の仕事の手伝いなどの時間が作ることが出来ました。※ジーナ式:イギリスのカリスマナニー、ジーナ・フォードさんが奨める子育てスタイルで、授乳や睡眠をスケジュールに沿って過ごすことで寝かしつけが不要になり、赤ちゃんもお母さんも夜ぐっすり寝られるようになる、などの考え方のこと。ーー旦那様と舩坂さんがお互いのキャリア構築のために心掛けていること、工夫されていることはありますか?相手がやりたいことは背中を押してあげることでしょうか。 例えば急に、明後日から東京へ2泊3日で行きたいと言われても反対せず、どうすればそれができるか考えます。正直なところ、働きながら2人の子どもの世話もあるので私の負担は大きいです。でも長期的な目線で見ると、夫にとってとても大切な投資となるかもしれません。 数年かけて得られない・気付けないことを得てくる可能性が高いですよね。なので夫婦でお互いにやりたいことを尊重しています。夫も仕事に関係がなくとも、私が興味のあることに参加してくれます。夢中になれることをトコトンやってみるーーこれから舩坂さんがやってみたいことは何でしょうか?地域の魅力を知れば知るほど、地域で働くことが面白く、今後も飛騨の魅力発掘・発信に取り組んでいきたいと思っています。東京から飛騨へやって来ましたが、都会に比べて地域の方がやれることがたくさんあるのではないかと感じています。飛騨に来てからやってみたいと思ったことや、面白そうだなと感じることににチャレンジさせてもらっていますが、まだまだやりたいことがたくさんあるんです!引き続き、色々経験させてもらえたら嬉しいです。今は産業振興中心なのですが、世の中にはお金になるもの以外にも、魅力や価値が溢れていますよね。それを発掘・発信して、内外問わず飛騨が好きな人を増やしていきたいです。人口が減っていく中で、重要になってくるのは、その地域への愛着ではないかと思っています。魅力を発信してファンを作る、そしてその地域にいる人が夢中になれる、そんな熱量の高い場ができたらいいなと思っています。現在はECの経験を活かして地域振興に携わっていますが、今後は様々な形で地域のファンづくりに繋がるようなことをトライ&エラーしながら、地域のプレイヤーとして頑張っていきたいです。ーー最後に読者へメッセージをお願いします飛騨には地域を盛り上げるために、以前から色々な取り組みをされている方がたくさんいらっしゃいます。縁あって私もその仲間に入れて頂いているのが現状です。私はECでの経験や知識を活かして飛騨の地域振興に携わっていますが、人それぞれ今までの経験や特技を活かせることが必ずあるはずです。 「都会の方が様々な機会に恵まれているのでは?」と考える人が多いかと思うのですが、私は地域のほうがやれることは沢山あると感じています。今までキャリアを築いてきた人なら活かせることが沢山あると思います。 私もまだまだ、「役に立てそうだな」「面白そうだな」という気持ちを原動力に、新しいことにチャレンジしていきたいですね。編集後記インタビューで飛騨をもっと知ってもらいたい!こんなに魅力的なんだよ!という、舩坂さんの熱いエネルギーと飛騨愛を感じました。周囲を巻き込んでいく統率力、課題を机上だけで解決しようとはせず、自身で実証しているからこそ、行動と発言に説得力があるのだなと思いました。今後も地域の担い手として、飛騨の地域振興の場で活躍される姿をマレキュールで追って行きたいです。私達は日頃何か問題を見つけては「なんとかしなきゃ」「こうすればいいのに」と思って止まってしまうことが少なくないと思います。当事者意識を持ったからには何かしらのアクションを取る、そして活動の輪を広げていくということが社会を変えていく一歩に繋がるんだと改めて考えさせられることがたくさんありました。舩坂さんご自身が立ち上げた未来のコミュニティ研究室、飛騨ネットショップ倶楽部の今後の活動展開が楽しみです。▽舩坂さんの活動はこちらから▽ 未来のコミュニティ研究室 ⇒http://fclhida.com/ 岐阜県飛騨市のふるさと納税 ⇒https://www.rakuten.co.jp/f212172-hida/