「移住」と聞くとどんなものを想像しますか?都会から地方へ引っ越し、定住する。そんなスタイルが一般的かもしれません。【Molecule(マレキュール)】世代の皆さんは、働き盛り!移住と聞くと仕事は?とハードルが高く感じる人も多いのではないでしょうか。仕事と生活、いいとこどりできたら…どこにいても自分らしくいるために、その時の自分に合う場所を探す。定住スタイルではない移住について考えてみませんか?移住ってそんなに特別なことじゃない筆者撮影生まれ育った東京を離れ、長野へ何を隠そう私は東京生まれ、東京育ち。そんな私が長野に移住するだなんて、なかなかのチャレンジかもしれません。移住先は軽井沢にほど近い、佐久市。新幹線も停車する地方都市のような雰囲気です。程よく都会、でも四方には山がそびえたち田んぼや畑はそこらにたくさん見られます。地方移住というと、自然あふれるのどかな山間にリノベーションした古民家で自給自足…みたいなイメージがあるかもしれませんが、私の移住先は残念ながら?そのような趣ではありません。近年の開発の流れで建てられた駅徒歩圏内の集合住宅に住んでいます。仕事は個人事業主で、軸足を都内に置いたまま移住しました。ですから劇的な変化は自分の中では実はありません。都内と同じようなスペックの家に住み、似たようなサイクルで仕事をし、生活をしています。旅好き、だからこそいろいろなところに住んでみたいなぜ移住に踏み切ったか、については必ず最初に質問されるところです。理由は大きく分けて三つありますが、まず一つ目は、住む場所は好きに選んでいいと思っているから、です。私は旅が好きで、日本や世界のいろいろな生活を見ては、自分の暮らし方について考えてきました。マイホームの一軒家を買って一生そこで何不自由ない暮らしをする、そんな一般的に「幸せ」と考えられる暮らしのスタイル以外にも、「幸せ」な暮らしがあるのではないか、と模索していましたし、今もしています。東京で生まれ育ったことが大きく影響しているかもしれませんが、土地に対して愛着はありますが、私がそこを守り抜かなければならない、という気持ちがありません。もしかしたら、代々引き継がれている土地に住んでいる人にはない考えかもしれません。(どちらかといえば、私はそのように歴史がある場所に住んでいる人たちがうらやましくさえ思います。)だから、どこかに定住しなければいけないとは思いません。気に入ったところに住みたいし、そのお気に入りをたくさん見つけたいのです。ライフスタイルの変化に合わせて住む場所を変える移住の理由の二つ目は、ライフスタイルの変化に合わせて住む場所も変化するのは合理的だと考えていることです。独身時代・子育て時代・老後では自分たちに必要なものは変わります。同じ住まい、同じ場所に住まなければいけないなんて決まりはどこにもありません。独身時代は終電の時間が遅い都心や繁華街近く、子育て時代は近所迷惑が気にならない自然が豊かな広々とした土地、老後は病院へのアクセスもよい買い物がしやすい街…など、その時々で必要だと感じるものがある場所に住み替えたほうが、快適です。新居を買う時に老後の生活は想像できません。その時に必要なものはその時にならないとわかりませんから、ライフスタイルの変化に合わせて住処が変わるのはとても自然で合理的なことだと思うのです。その変化のタイミングが「今」だったそして三つ目の理由は、その変化のタイミングが今だったということです。 変化が必要だと感じたのは、子どもが生まれてから続けていた都内の生活に違和感があったからです。特に環境面と金銭面。環境面では、都内では隣家と密接し、特に集合住宅では騒音に気を付けながら生活しなければなりません。 我が家も集合住宅だったので多分に漏れず何度か苦情をもらったことがありました。そのため、うちの中では静かに歩く、大きな音が出る遊びはしないというルールを設けていました。住宅街の中にある公園にもたくさんのルールがあります。ボール遊びはしてはいけない、大声は出してはいけない…子どもたちはもちろん、大人もいつでも何かに気を付けながら子どもを遊ばせなければいけません。のびのびとした子育てなんて程遠く、常に周りを気にしなければなりません。金銭面では、家賃などのランニングコストの高さです。独身時代に比べ、子どもの教育費が多く家計に加算されます。部屋も子どもが大きくなるにつれて手狭になり広い物件に引っ越したところ、なんと毎月の出費の高いことか!地方では同じスペックの物件が半額以下。さらに都内ではのびのびと過ごせない…高い家賃を払うことと、都内にいることの価値が釣り合わなくなってきたのです。というわけで自然な流れでの移住が決まりました。一大決心というわけではありません。別に移住先で一生住まなければいけないわけではありません。違うと思えばまた戻ればいいだけ。都内にそのまま残ることも、地方に移住することも、どちらにも同じようにリスクがあるのです。そういう意味で、今自分たちに適しているのはどちらか、という選択をした結果、移住という答えが私たちには浮かびました。移住と仕事、自分らしく働くために仕事は自分らしさの構成要素仕事は自分らしくあるための大事な要素です。ですから、新しい土地でも同じように働くためにはどうしたらいいか、考える必要がありました。幸い私は会社員ではなく個人事業主として働いています。ですから、良くも悪くもすべて自分次第!そういう意味では融通は利きやすかったかもしれません。都内に出向いていく必要のある仕事は一つを残して整理しました。週に1~2回都内に新幹線で通っています。交通費が大幅に増えたので同じ仕事でも収入は減りましたが、私にとっては大切な仕事なので、そのまま続けています。ここで大切なことに気づきました。それは、仕事=収入を得るためだけのものではないということです。自分が自分の役割を果たし、そこに喜びを感じること。その手段としての仕事なのです。だから、都内での仕事の実質の収入が減ったとしても、あまりたいしたことではないと感じました。とはいえ、生活のための収入も確保しなければなりません。手放してしまった仕事の分、どのように収入を得るか、考える必要があります。自分らしい働き方とは?私は、定住しないという選択をすることが自分らしくいることを実現する一つの手段だと考えました。そのようにするには、どこにいても働いて収入を得ることが必要です。なおかつそれは、喜びを感じる仕事。それが自分らしい働き方です。もともと私のテーマでもある”生きる”ということについて、今まで主にヨガを通じて私なりに伝えていました。今まで私が様々なところに行きたい、知りたいと思っていたのは”生きる”ことについてもっと知りたかったからです。でも、現代社会の技術を使えば、対面で会う方だけでなく、もっといろいろな人たちと”生きる”ことについて考えられるのではないかと考えたのです。対面と遠隔、両輪でやっていくことで自分自身の考える幅も広がるのではないか、と。そこで、どこにいてもできるライターとしてのリモートワークの比重を増やしました。幸い新しいご縁もあり、様々な媒体を使い伝えたいことを発信させていただいています。出会う人の幅も広がったと感じています。そして、新しく自分でもどこにいてもできる仕事を作りました。オンラインサロンのようなヨガを通じた開かれた学びのプラットフォームです。受動的に学びを受け取るだけでなく、自ら学びを生み出す、考える場としてのオンラインクラスです。今はまだ生まれたての赤ちゃんですが、少しずつ育てているところです。こちらは仕事についての記事で、改めて掘り下げられたらと思います。また、新しい土地でも自分のスキルが役に立つよう少しずつ動き始めているところです。もともと都内に住んでいた時も、何もないところから自分でヨガ教室を立ち上げ、小規模ながら沢山の生徒さんに来ていただき、とても素敵な出会いがたくさんありました。自分も行き詰っていた赤ちゃんとの生活、その息抜きの場としてのママ向けのヨガ教室でした。小さいスタートではありましたがその教室があったからこそ、今現在も大切にしている講師養成の仕事や、地域の人たちとの出会い、そこからの学びや共に作り出す仕事に発展することができました。ゼロから仕事を構築すること、そしてそれを様々な関係やコミュニティを通じて育て発展させていくことは挑戦です。始めた時は、どうなるかはいつだってわかりません。でも、然るべきことを丁寧にやっていたら、どこからともなくご縁はつながるのだと実感しています。そういう意味では、どこにいても、同じようにゼロからやればいいというスタンスなのです。人によっては転職や仕事を手放すこと、新しく何かを始めることに抵抗を感じる人もいるかもしれません。でも、住まい選びと同じように、どちらにもリスクはつきものです。現状維持にも、変化にも、絶対的な正解はなく、保証もありません。そんな中で、どちらの方が自分らしくあれるか、自分が幸せを感じるかを基準に考えるだけです。だから、会社に属することが好ましい人もいるはずです。自分では思い通りにならないこともあるし、自由は少ないかもしれないけれど、安定した収入を得られる。そのお金を使って自分らしさを謳歌できる人もいるでしょう。自分らしさの実現方法は人によって違います。自分がどうしたいか、それに尽きると思うのです。仕事を変えていくのだって、ありなのでは?ライフスタイルに合わせて住まいを変えることのように、仕事の仕方だって、人生の中で変化させていくことが自然のような気がしてなりません。独身時代のようにバリバリ働くことができる人は、やっぱり実際には少ないと思います。現状日本に住んでいると、ワンオペ育児がスタンダード。一日中仕事をすることは、かなりハードルが高い。だから、フレキシブルに仕事の仕方も変化させていった方が、無理がないでしょう。でも、ここで自分らしくあるために大切なのは、その仕事に喜びを感じ、自己実現ができているかどうかです。キャリアをあきらめ、内容や収入の面で不本意な仕事を仕方なくするのは、違います。そのときのライフスタイルに合わせた、喜びを感じる仕事をする、そのバランスがうまく保てた時、自分の毎日に対する満足感は上がるのではないでしょうか。移住の決め手は家族のコンセンサスを得るということ家族みんなが望む移住を最後に、一番大切なのは家族での移住の場合、誰かひとりだけの希望ではうまくいかないということです。必ず家族みんなが望む形をとる必要があります。我が家も、夫と息子と移住の前に何度か現地に赴きイメージを膨らませました。もともと夫も都内から地方への移住を希望していましたが、改めて住みやすさ、どんな雰囲気か、本当にやっていけるのかをシュミレーションしてみました。夫も私も、自分のライフプランについて考え、議論することができました。それぞれのキャリアややりたいことは尊重しつつ、家族との時間、子どもとの向き合い方、現実的な生活をどうしていくかを見つめるとてもいい時間でした。普段の生活の中ではなかなか夫婦で人生計画の話をする時間はありません。移住をきっかけにして、それぞれの理解が深まり、お互いを尊重しつつ、でも納得して生活を円滑に進めるための答えを導き出せました。夫婦の関係性も、よりよい新しい段階に踏み出せたような気がします。そうして、みんなが長野で住むのもいいかも!と結論を出すことができました。この作業はとても大切なものだったと、今になって思います。少しずつ、計画的に移住への準備ができたことで、家族みんなが仕事や生活、学校などの変化について受け入れ、楽しむことができたのです。子どもにも楽しんでもらう移住によって子どもは学校を転校することになります。ですから、新しい学校や環境が楽しいところであるという実感を持てなければ、きっと転校には否定的になってしまうでしょう。そこにも、何度か移住先に事前に行くことはとても役に立ちました。その移住先へ訪れる行先の中には、新しい学校も含まれていました。幸い子どもものびのびと過ごせる学校があったので、そのあたりはスムーズで、想像通り転校後も新しい学校生活を楽しんでいるようです。親の一任だけで子どもが心地よいと思っていた環境を壊してしまわないように、みんなそろって笑顔になれるような新しい移住先が見つけられることが、移住を成功させるために大切です。子どもとはいえ、そこには社会があります。いかにそこで心地よく過ごせるかについて、親は尽力する必要があるでしょう。家族の幸せは自分の幸せにもなる家族全員がそれぞれの新しい環境を楽しむことができるとき、それがそれぞれの喜びにもなります。自分らしさを追求するあまり、自分本位の選択になってしまっては家族全員の居心地よさにはつながりません。みんなが笑顔でいられることと、自分が望む仕事や生活ができること、その両立ができる時にみんなが喜びを感じるのではないでしょうか。今回の移住では、現時点ではみんなが納得した移住にすることができました。でも、今後また子どもの成長につれてニーズは変わってくるかもしれません。その時はまた、その時のライフスタイルにちょうどいい場所を探すはずです。未来のことは、わかりません。今何が必要か、それを一つずつ丁寧に取り組んで実現していくことで、結果的に自分たちのライフプランを構築していくことができるでしょう。私だけの、オーダーメイドのライフプランをライフプランや、人生の過ごし方は誰かが決めるものではありません。現代社会の中で作り出された、商業的や文化的な「あたりまえ」が本当にあたりまえなのか、考える必要があります。誰かが与えてくれたレールに何も考えずに乗っかっていくことが、本当に自分の人生を生きることにつながるでしょうか?自分らしい人生を送ることになるでしょうか? 私は違うと思います。自分で考えた結果、与えられた人生の過ごし方が、自分の幸せだと感じるのならば構いません。それはその人の自由です。でも、何も考えずに日々を過ごしてしまうことはもったいないことなのではないでしょうか?どのような形で自分らしくいられる喜びが実現できるのか、模索していくことで、自分だけの人生を作り上げることができるのだと思います。さあ、あなたはどのようなライフプランを考えていますか?それは今のライフスタイルにフィットしていて、自分らしくいられるものでしょうか?ぜひ一度、考えてみてください。その答えは、きっとそれぞれ違います。それでいいのです。自分の人生に向きあうことが大切なことなのですから!