こんにちは、小3と3歳の息子の母・岡村紘子です。今年40歳を迎え、自分の働き方についてモヤモヤ考えています。というのも、この秋、夫の転職に伴い、お互いのキャリア形成について初めて意見がぶつかり、結婚12年目にして家庭内のパワーバランスが変わりつつあるんです。ちょっとしたことで夫に対してイラッとしてしまう。ホルモン的に下り坂なお年頃とはいえ「このままではマズイ。このイライラの原因は何か?」と考えてみたところ「キャリア形成への焦りなのではないか」と一つの仮説を立てることができました。人生100年時代、せっかくならば楽しく働き続けたい。そんな時、男子母として憧れの存在である元レタスクラブ編集長・松田紀子さんがこれまでの仕事術をまとめた初の著書『悩んでも10秒 考えすぎず、まず動く!突破型編集者の仕事術(集英社)』を出版されると聞き、キャリア論の専門家である法政大学キャリアデザイン学部・田中研之輔教授との特別対談イベントを企画させていただきました。田中教授は近書『プロティアン(日経BP)』で変芸自在なキャリアが人生100年時代の処方箋であると提唱されています。イベント参加者を圧倒的ポジティブさで勇気づけていくお二人。その様子を悩める母・岡村がレポートします!(写真左)松田紀子さん/株式会社ファンベースカンパニーファンベースディレクター 1973年長崎生まれ。97年リクルート九州支社に入社し、旅行雑誌「じゃらん」の編集に3年間携わったのち上京、2000年メディアファクトリーに入社。11年メディアファクトリーがKADOKAWAに子会社化ののち合併され、「コミックエッセイ編集グループ」編集長に。16年「レタスクラブ」の編集長も兼任。19年9月にKADOKAWAを退社、(株)ファンベースカンパニーに合流。編集力を活かした<ファンベースディレクター>として様々な分野の起案・企画に伴走。(写真右)田中研之輔さん/法政大学キャリアデザイン学部教授 専門:キャリア論。 一橋大学大学院社会学研究科博士課程を経て、メルボルン大学、カリフォルニア大学バークレー校で客員研究員をつとめる。博士(社会学)。大学と企業をつなぐ連携プロジェクトを数多く手がける。著書24冊。『辞める研修 辞めない研修―新人育成の組織エスノグラフィー』。『先生は教えてくれない大学のトリセツ』、『先生は教えてくれない就活のトリセツ』、『覚醒せよ、わが身体。』、『丼家の経営』等。企業の取締役、社外顧問を15社歴任。最新著に『プロティアン』(日経BP)私にもあった「モヤモヤ期」。 社外コミュニティが切り開いた未来ーー『ダーリンは外国人』など数多くのコミック書籍を大ヒットさせ、老舗雑誌『レタスクラブ』の編集長としてV字回復させるなど、出版業界で結果を出し続けてきた松田さんの異業種へのキャリアチェンジはとても驚きました。松田紀子さん(以下、松田):最初にお伝えすると、決して出版業界が嫌で辞めたわけではないですよ(笑)。編集長という仕事はすごく楽しかったです。周りからもチヤホヤされますし(笑)そのまま続けることもできました。でも、ある程度働いて役職をいただき、「これで安泰」と思った途端に心身の老化が始まるんですよね。自分は全然成長できていないようなもどかしさ、苦しさがありました。田中研之輔教授(以下、田中):すごく良く分かります。多くの人は、社内で役職を得ると役職に固執するようになります。そして社内の人間関係にこだわりだす。こだわりは、変化へのブレーキにもなります。こだわりの中に、学びがないとつまらないんですよね。ーーお二人もモヤモヤすることがあるんですね、安心しました(笑)。松田:最近はほとんど悩むことはなくなりましたが、書籍編集の編集者だった時に、やってもやっても本が売れない時はすごく焦りました。モヤモヤ期でしたね。編集者って、何の苦労もなく何をつくってもヒットするノリノリの時期というのが必ずあるんです。勢いと自分の感性だけで勝負しても、時代にばっちりフィットし、全部重版!みたいな。でも30代後半になるとそれがだんだん通用しなくなってきて。その横で後輩が鮮やかに自分を抜いていく。「勢いと自分の感性でいけるのもここまでか」と葛藤しました。そんな時期に何をしていたかと言うと、新しい刺激を取り入れるようにしました。最初に参加したのは株式会社コルクの佐渡島さんが主宰する「コルクラボ」。その後、コミュニケーション・ディレクターの佐藤尚之さん主宰の「さとなおオープンラボ」に通うようになり、本当にいろんな人に出会いました。 みんな生きることに貪欲というか、絶対に立ち止まらないアグレッシブな人たちばかり。自分の周りにそういう人はいなかったので「私ももっと暴れてもいいよね、まだまだいけるよね」とたくさんの刺激を受け、その勢いで転職までしてしまいました(笑)。モヤモヤを打破する上で、新しい仲間たちとの出会いはとても大きかったです。田中:松田さんの凄いところは、編集長で忙しいのに、現状に満足することなく常にアンラーニング(学び直し)し続けていることですね。人間は惰性で生きるほうが楽。でも、同質な人ばかり集まるコミュニティ(=コンフォートゾーン)では成長に必要な緊張って生まれにくい。なので、コミュニティを変えることは大事なポイント。常にオープンでいること、異なる環境に身を置くこと、柔軟なキャリアチェンジのコツです。必殺!ちぎっては投げ戦法。その極意とは?ーーでは、悩まずに行動するために、心掛けていることはありますか?松田:ちぎっては投げ戦法ですね。仕事もプライベートも悩みが大きいから動けなくなる。ドカっとくる大きな問題や課題を、小さくちぎって、得意な人にお任せする。「1週間後までにお願いね!」って感じで。大きかった問題もちぎって投げていくうちに小さくなり、気持ちが楽になってくる。私は自分の得意なところに集中できますし。そして1週間後、周りにお任せしたものをそれぞれ持ち寄る頃には状況は進化しているわけです。そうすると、今度は一段高いところからスタートできる。そういうふうにグルグル回してきました。なので、悩んだら、すぐちぎって渡しちゃう(笑)。田中:ちぎっては投げ戦法、面白いですね!早速取り入れてみます。では私は違う視点から。人はいつ悩むかと振り返った時、ゾーン状態(没入状態)に入っていない時に悩むんです。ゾーン状態でいる限りは悩まない。ゾーン状態は、スキル×適切なレベルのチャレンジで生まれます。よくサッカー選手がゴールを決めた時の試合後インタビューで「あの時、ボールが止まって見えた」と話すことがありますよね。あの時がゾーン状態なわけです。それって、日常でもつくれると私は思っていて、ゾーン状態になる仕掛けつくりを自分を使って常に実践しています。ーーでも、働く母にとって、ゾーンに入ることは凄く難しいように感じます。特に子どもが小さい時は常に集中力を削がれることが多発し、何もかも中途半端な状態が自己嫌悪に繋がってイライラしてしまうのかも。田中:私は日頃からの心がけでゾーン状態は生み出せると考えています。まず、有効活用できるのが隙間時間ですね。家事やワークの間にふと15分あるとします。その15分で何をするかを意識化するのです。スマフォでSNSをみていているだけでも、15分はあっという間に過ぎてしまいます。私が実践しているのは、15分のライフキャリアスケッチです。 今、何をすべきなのか、これから何をすべきなのか。15分しかないからこそ、優先順位の高いことが浮かび上がるのです。とにかく書き出します。おすすめです。もちろん、もっと具体的なスキルアップに使ってもいいかと思います。 英語を学習してみる。デザインを勉強してみる。文章を洗練させるetc。日常の隙間時間を最大限有効活用すると、ゾーンに入るはずです。「時間を忘れそうになるぐらい」集中できるようになってきたら、携帯でタイマーをかけておきましょうね。ぜひ、やってみてください。自分を見える化。軸がブレブレな時は頭の中を紙に書き出してみよう!ーーありがとうございます。さっそく実践してみたいと思います。では、会場からの質問も聞いてみましょう。Aさん:成功している人は軸をもっていると思うのですが、私はいろんなことに興味があり、すぐ興味が移ってしまい軸がなくブレブレです。アイデンティティが無いというか。「次これやってみよう」とどんどん手を出してしまう。結果、全て広く浅くで。そんな軸がブレブレな自分に悩んでます。松田:むしろ器用で羨ましいです(笑)。私からのアドバイスとしては、今までやってきたことを紙に書き出して、可視化してみることをオススメします。いろいろと手を出したものの中に共通点があるはず。まったく興味ないことは思いつかないですし、手をださないですから。なので、紙に書き出すとワクワクしたこと、長く続いたもの、苦痛じゃなかったもの、という視点で共通点が見えてくると思いますよ。それを繰り返すと、「なんとなく自分はこれが向いてるのかな」と方向性が絞られていくと思います。田中:いろんなチャレンジをするのは大賛成です。私からのアドバイスは、一つのことをかじっただけで終わらせずに、一回はやりきる。その環境の中で、トップをとる。突き抜けることは大事だと思います。成功経験を1回でも多く積むことが自信に繋がりますから。そして結果より大切なのが、そこに向けて実践していく「プロセス」そのものにあります。自分をとことん接待。自分のご機嫌は自分で取ろうーー最後に、お二人を見ていると、いつも楽しそうなのですが、秘訣を教えていただけますか?松田:まず、すぐに答えの出ないものは放っておきます(笑)。「とりあえずあっちに置いておく」みたいな感覚です。そして、またその問題が出てきた時に改めて考えれば良いと。ちぎっては投げる。毎日その繰り返しです。とは言え、私も若い頃は悩みましたよ。30代はまだまだ、モラトリアム期。ようやく40歳過ぎたあたりから悩む時間が減りました。それって、それまで生きてきた経験から自分の思考回路が分かってきたからなんです。「Aで悩んだ時はBを試した方が良い、Cじゃないな」って。なので、今が一番楽しいですよ。田中:松田さんはいろんなことに気づく感度が高いんですよね。編集長という立場的に仕事の悩みのファクターも増える。でも悩んでたら〆切に間に合わない。だからこそ、人に聞いたり、人に任せて、関わる人を大事にしてきたんでしょうね。しかも40代って体も元気だし何でもできちゃいますよね。モヤモヤを突破すると人は多動になりますから(笑)松田:そうかもしれませんね。楽しそうな人のところには自然と人が集まりますし、だからこそ自分を接待して上機嫌をキープしたいですね。著書の表紙には生ビールと骨付き肉を持つ松田さんのイラストが描かれています。生ビールの商品サンプルと骨付き肉のクッションは参加者からの出版記念プレゼント(しかもサプライズでした!笑)。取材後記とにかく明るい松田さんと田中教授の対談イベントでした!今回、私にとって1番の学びは「人はゾーンに入っていない時に悩む」という点。私たち30~40代の子育て真っただ中の【Molecule(マレキュール)】世代は、なかなかこのゾーンに入りづらい。むしろ、産後、ゾーンに入れたことなんて僅か。そんな中、みんな必死な思いをして仕事と家庭の両立をしている人がほとんどだと思うのです。 自分が集中できる環境・心境を整えることが大事なのは頭では分かる、分かるけど、、、と言い訳したい気持ちもありました。でも、私は気づいたんです。逆にいうと、特に子どもが小さい時期は他のことに気が散ってゾーンに入りづらい(=悩みやすい)。そういう時期なんだと受け止めて、やり過ごすのも大事なスキルなのかもしれないなって(笑)。では今できることは何か。まずは、自分の頭の中を可視化し、自分の本音に気づくことから始めてみます。そして、それを自分の大事な人に少しづつ開示できるようになったら良いなと感じたイベントでした。関連記事https://molecule.news/stories/hirunomi-snack/