コロナ禍をきっかけにリモートワークが加速し、場所や時間にしばられない働き方が浸透しつつあります。これまで「当たり前」だと思っていた自分の仕事観や職場環境に大きな変化を感じているMolecule(マレキュール)読者も多いのではないでしょうか。そんな中、副業やパラレルキャリアを考える女性が一気に増えたというデータも。一方で、「パラレルキャリアに興味はあるけど、始め方がわからない」「自分にできるのか自信がない……」と不安な声も耳にします。そこで今回は、パラレルキャリア情報発信メディア『Paranavi』編集長を務める岡部のぞみさんをお迎えして、Molecule初代編集長・井上千絵との対談形式でお話を伺いました。より自由で柔軟な働き方・生き方を探求する2人に、これからのパラレルキャリアのあり方、新たなキャリアを踏み出すヒントについて語ってもらいました。「パラレルキャリア」に踏み出す女性たちを応援したい岡部 のぞみさん|女性週刊誌・月刊誌の編集、創刊を経験後、紙媒体だけでなくWEBディレクター、読者コミュニティの企画運営などを担当。2016年にはライフスタイル動画マガジンを立ち上げ、編集長を務める。現在は出版社で広告の仕事に携わりながら、個人としても、WEBメディアでアドバイザーや企画編集としてパラレルキャリアを実践。「女性×働き方」の多様性のあり方を発信したいとの気持ちから、『Paranavi』プロジェクトの立ち上げを企画。井上:Paranavi(以下、パラナビ)さんでは、パラレルキャリアとして働き方・生き方をカスタマイズしながら人生を楽しむ女性がたくさん登場されているのが印象的です。岡部:そう言っていただけて嬉しいです。パラナビでは、副収入のおこづかい稼ぎではなく、時間や場所にとらわれず自分のやりたいことにチャレンジする「複業」に近いものとしてパラレルキャリアを定義づけていまして。読者が新たな選択肢を一歩踏み出しやすいように、等身大のロールモデルを見せることにこだわっています。 井上:どういう経緯でメディアが立ち上がったんでしょうか?岡部:きっかけは、友人たちと女性起業家コンテストに応募したことです。以前一緒にお仕事をした方が審査員を務めることを知り「面白そうだな」と興味を持って。でも2年連続で最終選考に落ちてしまい……。2019年に「女性のパラレルキャリア支援事業」を提案して、3度目の正直でグランプリを獲れました。井上:すごいですね! なぜ、女性のパラレルキャリア支援事業をやろうと?岡部:3回目のビジネスプランを考えていたときに、私たちがこうしてやっているような社外活動をサポートできるサービスがあるといいね、という話になったんです。 当時、仕事が終わってから社外の仲間たちと集まって、よなよな新規事業を考えるのがとにかく新鮮で刺激的で。社会人になると毎日が自宅と会社の往復になりがちじゃないですか。それ以外にも頑張れる第三のフィールドがあると、人生がより楽しくなるんだと身をもって知れたからですね。岡部:でも、当初はメディアを立ち上げる構想はなかったんですよ。井上:そうだったんですか?岡部:最初は、副業したい女性と企業のマッチングサービスを考えていました。でも、事業を練っていくうちに、そもそもパラレルキャリアに関する情報が世にほとんど出ていないと感じたんですよね。 新しい働き方に対して、「そんな選択肢を考えたこともなかった」「何から始めたらよいかわからない」というリアルな声もたくさん聞いて。井上:たしかに、会社と自宅の往復だけでは得にくい情報かもしれませんね。岡部:女性は特に、結婚や出産などのライフイベントにどうしてもキャリアが影響されがちです。場所や時間にしばられず、世の中の女性にもっと自由で柔軟に仕事を楽しんでもらいたい。そんな思いや実践的なノウハウを届けたいと生まれたのがパラナビなんです。井上:岡部さんたちの思いが、メディアからとても伝わってきます。“自立”した人生を楽しめるのがパラレルキャリアの醍醐味井上千絵 | Molecule(マレキュール)編集長。2019年に株式会社ハッシン会議を立ち上げ地方のベンチャー企業の広報支援。会社員としてPR会社にも所属しパラレルワーク中。井上:コロナの影響でリモートワークが普及して、従来のような働き方の前提が崩れつつありますよね。同時に、副業やパラレルキャリアに興味を持つ人が増えたと聞きます。どうしてだと思いますか?岡部:みなさん、1つの事業や勤め先に依存することのリスクを感じ始めているのではないかと思います。私たちが調査した結果、勤務先が休業になるなどの理由で、収入が減ってしまった、または減る見込みだという方が3人に1人もいることがわかりました。新型コロナウイルス感染拡大に伴う働き方の変化について意識・実態調査/出典Paranavi井上:今後のキャリアや収入に対する危機感がきっかけになっているんですね。岡部:収入源が1つしかないと、どうしてもそこに依存してしまうと思うんです。経済的に独立できないという不安から、なかなか今の勤め先を離れる選択ができなかったり。井上:すごくわかります。私自身も感じますが、パラレルキャリアとして複数の仕事を持っていると、「事業の1つを手放す」という判断が自分の意思でできるんですよね。 もしその事業だけで自分の仕事を回していたら、辞める勇気がなかなか出ないかもしれません。岡部:「手放す」という選択肢が持てるのはいいことですよね。いつでも辞められるけどそれでも続けているというのは、「やりたい」という自分の意思があるからこそ。仕事に対して能動的にコミットしていれば、アウトプットや生産性がまるで変わってきます。自分のやりたいことで成果を出して周りの役に立てたら、全員がハッピーですよね。経済的にも精神的にも自立した人生を楽しめるのが、パラレルキャリアの醍醐味だなって感じています。パラレルキャリアを始めるコツは、「目の前の仕事に力を尽くすこと」井上:岡部さんがパラレルキャリアを始めた経緯についてお聞きしたいです。岡部:出版社から転職したときに、前職の上司からレポーター兼ライターのような仕事を紹介されたのが最初だった気がします。 その後、勤めていたベンチャーではメディアの新規立ち上げをしていたこともあって、転職してからも「メディアの運営についてアドバイスが欲しい」と知り合いから声をかけていただくことが増えていったんです。今まで、継続的なメディアの運用支援から単発の編集・ライティング案件までいろいろお手伝いしてきました。井上:人とのつながりの中で新しい仕事が生まれていって、それが結果パラレルキャリアになっていったんですね。岡部:最近では、以前いたメディアで連載を担当させてもらっていた著者の方から「今度出す書籍のライティングをぜひお願いしたい」と嬉しい依頼をいただけて。 当時は、取材から執筆まで全部自分でやっていて大変だったんですが、自分自身がその方の話が好きだということもあり、ほかのライターさんに依頼するよりも自分がいちばん上手く書けるという気持ちがありました。その経験のおかげで声をかけてもらえたのかなと思うと、頑張ってよかったですね(笑)。井上:いいエピソードですね。今のお話、まさにパラレルキャリアを始めるヒントがあるなと思います。「副業するには、まずクラウドソーシングに応募!」と考えてしまいがちですが、まずは目の前の仕事を一生懸命やって周りから信頼を得ていくこと。そして信頼を積み重ねることで、新しいチャレンジの場が生まれていくのではないでしょうか。岡部:本当にそう思います。周りを見ても、「パラレルキャリアになろう!」と思って始めるより、本業にコミットしていたらいつのまにか活躍の幅が広がっていった人がうまくいってるなという印象です。パラレルキャリアやフリーランスの世界では「SNSのフォロワーを増やして発信力をつけろ」なんてよく言われますけど、方法はそれだけじゃないと思っていて。今の仕事をちゃんとやっていれば、それが誰かの目に留まって、次の仕事に結びつくチャンスが必ずあるはず。井上:私も同感です。パラレルキャリアはあくまでも理想の働き方・生き方を実現するための手段。パラレルキャリアになること自体が目的になってしまうと、本末転倒ですよね。岡部:パラレルキャリアに対して、「本業がイヤ、向いてないから始めるもの」というイメージを持たれることがあるんですけど、むしろそれだと失敗してしまうという話もよく聞きます。 副収入を得るためだけではなく、時間や場所にとらわれずに自分のやりたいことにチャレンジできるのがパラレルキャリアのメリット。それをもっと伝えていきたいですね。パラレルに働く上で気をつけていること井上:会社員と並行して個人でお仕事をされていると、かなりお忙しいのでは。パラレルに働く上で気をつけていることはありますか?岡部:効率と生産性を高めるために意識していることは2つありますね。 まず、依頼や事務連絡が来たときにできる限り「即ジャッジ・即レス」ですぐ片付けるようにしています。それから「完璧を目指さない」ことです。井上:「完璧を目指さない」……というと?岡部:私は考えるより先に行動することが得意で、反対に細かい経費処理とかすっごく苦手なんですよ(笑)。だから、それはもう得意な人にお任せしちゃいます。気が重いことに取り掛かるのって、つい腰が重くなっちゃいますよね。でも全てを自分でやろうとせず潔く諦めることで、スピード感を持って得意な業務に集中できるんです。井上:自分にしかできないことを生産性高く取り組むようにしているんですね。岡部:はい。それに、私の不得意はきっとだれかの得意でもあると思っていて。得意な人にお任せすることで、それぞれが得意分野を活かし合える環境をつくっていけます。井上:個人の強みを活かせるよう、チームで動くのもポイントだと。パラレルキャリアを始めることが不安な方も、まずは周りに声を掛けたり頼ったりしてみると、物事が良い方向に進みそうですね。岡部:そうですね。なので、自分のダメな部分はいつも素直にさらけ出すようにしています(笑)。 井上さんはどんなことに気を付けていますか?井上:私は、管理ツールを使って「この曜日のこの時間に何をやるか」をきっちり決めるようにしていますね。 パラレルキャリアを始めたばかりの時期は、来た依頼を全部受けてしまいコントロールが利かなくなってしまって。これではダメだと、やるべきことをきちんとスケジュールに落とし込むようになりました。岡部:失敗した経験があると、そこから学んで対策が打てるようになりますよね。私も、今でも失敗と改善の繰り返しです(笑)。「私らしく生きたい」と願う、すべての女性に井上:パラナビさんのような素敵なメディアと記事を連携していけること、すごく楽しみです。岡部:ありがとうございます。固定観念に縛られず自分らしいキャリアを実現している人たちがこんなにたくさんいるんだと、マレキュールさんを読んでいて勇気をもらえます。マレキュール編集部のメンバーたち井上:マレキュールでは「子育て中のママ」としての自分だけでなく、「私」らしく生きることを追求するメディアでありたいと思っています。同じ志を持つパラナビさんと一緒に頑張っていけたら嬉しいです。過去のイベント開催時の様子/写真提供Paranavi岡部:パラナビでは読者同士で交流会を開いたり、定期的に情報交換をしたりしているので、今後イベント開催もご一緒できたらいいですね! つながりを深めていくことで、“働く”を自由に楽しむ女性をもっと増やしていきましょう!パラナビ