城梨沙さん | 株式会社エスキャリア・ライフエージェンシー代表取締役/両立支援サービス「エスキッチン」「両立チーム育児ラボ」を運営。/国家資格キャリコン/女性のキャリア・ライフ支援を10年/女子大非常勤講師/ 5歳、2歳の2児のワーママ/オーストラリアの自由な空気と空が好き。 こんにちは!最近ますます日々の生活を文明の利器に頼っている井上千絵です。床掃除はルンバにブラーバ、ご飯はミールキットの宅配で10分で調理、食べ終わったら食洗機へ。こんな感じで様々な家事サービスやテクノロジーをフル活用しているMolecule(マレキュール)読者の方も少なくないのではないでしょうか。しかし私も思い返してみると、子どもが産まれて1年くらいは「娘に対して手抜きをしているんじゃないだろうか?」と珍しくネガティブに考え込むことがありました。そんな時、城梨沙さんが提案する「両立チーム育児」の考え方、仲間たちと出会っていたら、どんなに気持ちがラクになったことか、と思います。ということで本日は、家事代行やテクノロジーなどいわゆる「第三者」を自分なりのスタイルで活用することを仲間と目指す「両立チーム育児ラボ」の取り組みについて城さんに伺いました。家事と育児「5:5」の呪縛に苦しんだ出産直後イメージ今は毎日楽しく仕事に子育てに両立している印象の城さんですが、第一子出産直後の2013年は、全くそのような状況ではなかったというのですから驚きです。当時フリーランスで活動していた城さんは、育休期間もないまま産後数ヶ月で仕事に復帰。第三者に頼るとか新しいサービスを使う、といった発想も当時はなく、産前と同じように仕事のスケジュールを入れ始めると、次第に子育ても仕事も色々なことが上手く回らなくなる現実に直面したといいます。「夫と完全に5:5の家事育児分担を目指したまま仕事に復帰したら、すごい大変なことが起こったんです。自分の得手不得手が鮮明に見えてきて、家事全般が効率よく出来ない上に、あまり好きな方ではないのでそれに時間とパワーがとられて、他のことが遅延していくことがフラストレーションになってきました。なおかつ、そこはあなたの担当だよね?って柔軟に行かない夫婦の分担に対して、二人の間に険悪なムードが流れてきて。」子どもが産まれる前は自宅でご飯を作るような生活ではなかったという城さん。そこから一転、毎日の離乳食作りに家事に仕事に次次と現れる日々のタスクたち…。みんなが無理をして、次第に疲弊していく中、子どもを持って仕事をすることは、こんなにも苦しい世界観だったけ、と壁にぶちあたったような感覚だったといいます。転機は「シルバーさん」 抵抗があった夫は…産後、暗黒期だったかのように思えた城さんでしたが、その中で転機が訪れます。ネット検索で見つけた区のシルバー人材センターに登録し、毎週「シルバーさん」に家の掃除に来てもらうことに。これまでは、部屋が汚くなるとイライラしていたところも「2、3日でシルバーさんが来るから、まイイか」と気持ちにも余裕が生まれたそうです。そして、来てくれるシルバーさんが近所のおばあちゃんだったことで、地域の情報もたくさん入ってくるようになったと言います。一方、城さんの夫は当初、「自分のお金で自分がいる時に頼むならどうぞ」といったスタンス。家事育児に第三者を巻き込むことをあまりポジティブに捉えていなかったそうです。筆者の周りでも、「夫が家事のアウトソーシングに反対している」という声を聞くことがあります。そんな時に、家族を巻き込むにはどうしたら良いのでしょう。城さんの場合、ある日どうしてもシルバーさんの在宅時間に城さんが立ち会うことが出来ず、夫に渋々立会いを引き受けてもらったことをきっかけに変化が訪れたそうです。「実際夫がシルバーさんに会ってみたら、とってもいい人だったって言ってきて、意気投合して仲良くなっていったんです(笑)。そこから、シルバーさんが段々と家族のチームに入ってきた感じで、他にも第三者がたくさん入るようになりました。」家事育児に第三者を巻き込むことで、子どもとの関係にも変化があったという城さん。自分以外の人に任せられることは少しずつ手放していったことで、逆に「子供と接する時間」がどんな日常のタスクよりも重要なのだと、明確になったそうです。「帰ってきたらそのままいただきますして、子どもたちと遊んで、お風呂入ってっていう日常で、コミュニケーションは多く取れているなと思います。やらなければいけないことに縛られなくなってきていることが大きいと感じますね。あとは、第三者が家族のチームに入ってくれることで、子ども自身も多様な世代の人と関わることになりますし、親が多様な社会と関わっているのを子どもに見せるというのもすごくいいことだなと思っています。できないものをお金でアウトソーシングしているという感覚ではなく、もっと奥が深いものがチーム育児の良さだということを皆さんに知ってもらいたいなと思うんです。」「脱・固定概念」令和型 #両立チーム育児 を提案両立チーム育児ラボのキックオフミーティング城さんが第一子を出産した2013年から6年の間にも、家事育児における外部サービスの選択肢が格段に増加しました。 城さんは、自分自身の原体験や女性のキャリア支援の経験から、女性が働き続ける上で大きな壁が「両立」であることに気付きます。その現実を何とか変えたいと思う中で2019年10月に活動をスタートしたのが「両立チーム育児ラボ」でした。立ち上げた背景は、周りのママたちから両立の悩みを受けて「こういうサービスや商品を使ってみては?」とアドバイスをしても、なかなか動けなかったり、パートナーの反対にあい実現できないなど、両立を実現するにも、母親の意識や、パートナーとの価値観すり合わせなど、ハードルが多くあることがわかったからだといいます。確かにこれを女性一人で立ち向かうには、また何十倍もパワーがいります。「仕事は産後も続けていく時代であるけれど、まだまだ家事育児という割合が女性には重くのしかかってくる中で、いろんな人(第三者)を巻き込んだりとか、使えるものを使っていこうよっていっても、なかなか1人で決めるのはハードル高いけれど、仲間で取り組めば乗り越えられるんじゃないかと考えました」メンバー全員が現在育休中で、来春の復職を控える中、Facebookやオンラインを活用しながら家事育児サービスの情報交換や目標設定をしながら、仕事復帰に向けて段階的に第三者を巻き込んだ「チーム育児」を実践していくのだそうです。 意外にも、両立育児ラボの活動の最初にすることが、「夫婦におけるスタンド(大切な価値観)をすり合わせる」ことなのだと言います。「両立に向き合っていくと、自分にも向き合うし、夫婦とも向き合っていって、自分がこうしなきゃと思っている固定概念とぶつかるんです。子どもがいなかった生活は、それこそ時間があるから、自分のこだわりや、やりたいやり方でできていましたが、子育てが始まるとそれ以上のパワーがかかるものが否応無しにくるので、自分のこだわりや、固定概念が強いと、どうしても苦しくなり、できない自分・・というベクトルになってしまいます。 それをどれだけ許容していけるかで、生きやすさや、本当の自分らしい形に繋がっていくと信じています」両立チーム育児ラボは、第三者や便利なサービスを「使うこと」をゴールにするのではなく、それぞれの夫婦がその夫婦らしい両立のスタイルを「家族で形成していくこと」を目指していることにも納得です。 ちなみに城さんの夫婦のスタンドを伺ったところ、新婚直後にオーストラリアで見た光景=家族が毎日、当たり前のように食卓を楽しく囲む日常、なのだそうです。ご家族で海外を訪れる機会が多い城さんだからこそ、日本人サラリーマンの働きすぎなライフスタイルに違和感を覚えることがあるのかもしれません。 これぞ脱・固定概念。私も改めて、夫婦のスタンドから確認し合いたいと思います!▼城梨沙さんの近況はこちらをチェック関連記事https://molecule.news/stories/parenting/ https://molecule.news/stories/internship/