2015年に働く女性のためのワンピースブランドAyuwa(アユワ)を創業した渡部雪絵さんが、この春、新たに生理用品ブランドamiee(アミー)を立ち上げた。以前から渡部さんと交流させてもらっていた私・井上は、渡部さんが息子さん(5歳)の子育てをしながら2ブランド目を立ち上げたエネルギーに驚きつつ、なぜ生理用品ブランドなのか?背景も含めて渡部さんの新たな挑戦が気になって仕方がなかったので、今回インタビューさせてもらった。きっかけはスタッフの一言 構想から3ヶ月で生まれた「amiee」渡部 雪絵さん | アユワ株式会社 代表取締役・amiee(アミー) 代表 早稲田大学商学部卒。新卒で三井住友銀行に入社後、新聞社、証券会社等の金融業界・金融メディアにに勤務。2015年に起業。アパレルブランド「Ayuwa」を手がけ、ネットショップや伊勢丹、髙島屋等の百貨店で期間限定ショップを展開。amiee構想のきっかけは昨年12月、ワンピースブランド「Ayuwa」の期間限定ショップで渡部さんの『生理がつらくて』というコメントに対するスタッフの一言だったそう。「本当は布ナプキンがいいけど洗うのが面倒。使い捨てが出来る布ナプキンがあればいいのにね」。その瞬間、渡部さんは、ん?と気になり調べ始めた。「生理トラブルを抱えている女性は、肌感覚で8割くらいいる印象でしたが、実際に聞いてみると、思っていた以上に様々な声がありました。そして、生理の悩みだけではなく、通年でデリケートゾーンの悩みを抱えている人たちがいることも知りました」周囲に聞けば聞くほど、新型生理用品ブランド立ち上げへの想いは強まっていく。構想から3ヶ月、渡部さんはamiee商品の第一弾として「使い捨て布ナプキン」を活動に共感してくれた仲間3人で開発し、クラウドファンディングを実施。渡部さんが「リチウム型原子組織」と表現するように、プロジェクトは賛同の輪が自然と広がり、数多くのプロボノスタッフがブログを書いたりイベントを開催したりそれぞれの形で支えてくれているという。ふんわりした素材とさらっとした素材の2種類を2019年秋より展開予定とのことAyuwaが創業期から大切にしてきた「消費を通じて社会と向き合う」「日本に寄付文化を広げる」という2つのコンセプトが今回の布生理用品の取り組みとリンクしたことも、新ブランドの立ち上げを更に加速させている。「日本は生理用品が行き届いていますが、途上国では、生理用品がなくて生理になったら学校に行けなくなる国もあると聞き、深刻な問題であることを改めて気づかされました。Ayuwaは使い心地が良い、ということだけではなくて、aimeeを通して届かないところに届ける活動をしなければいけないなと思いました。」「Ayuwa」が1アイテムの販売につき500円を子ども支援活動団体に寄付するソーシャルブランドとして運営していた仕組みを応用し、1セットの販売につき5円を国際NGO「プラン・インターナショナル」に寄付し、途上国の女の子の教育や衛生面の支援に役立てる方針だ。「家族は人生の基盤」再認識出来たからこその新ブランド立ち上げところで、渡部さんの旦那さんは現在、仙台での単身赴任3年目。長男(5歳)の子育てを時折義母に支えてもらいながら、2つのブランドの代表を務めている。ワンピースブランドAyuwaでは、全国の百貨店で期間限定ショップも数多くこなし、多忙を極めている中と想像するが、子育てや家族時間との向き合い方はどうしてきたのだろうか。そこには葛藤からの今の姿が見られた。「今までは、子供は一緒に過ごす時間が少なくても密度が大切だと思っていましたが、やっぱり違うな、と最近思い始めてきたんです。例えば1日1時間は、この頃には少ないなって」アユワ創業当時、息子は2歳。当時は毎日保育園で夕食を食べていたが、それから1年半 が経った頃に、息子に変化を感じ始めた。少し気持ちが不安定になったり、落ち着かなくなったり。ちょうどその頃、旦那さんが転勤となり、更に渡部さん自身も百貨店での出店が続き忙しさのピークと重なっていたことで、息子と過ごす時間が少ないことが関係しているように思えた。その後、渡部さんは息子との向き合い方を考え直し、意図して朝の過ごし方を変えるところからスタート。この1年は、ゆっくり2人の朝時間を作る、お片づけをする、洗濯物を一緒にたたんでもらう、など少しずつ変えたところ次第に息子の心身も落ち着き、渡部さん自身も逆にamieeの事業立ち上げへの力が生まれたという。「これまでは、正直育児は自分1人がやるし、仕事も多忙でモヤモヤしていた時期もありました。でも、息子が習い事のゴルフにハマってから、変化があって。今年3月に息子がゴルフ大会に出場する際に夫が一緒に回ってくれたんです。息子が頑張りたいものを見つけて一生懸命取り組んでいる姿を見ると、私たち夫婦も頑張らないとな、と教えてもらったような感覚で。息子の選択を夫婦で応援する体制がこの半年で整ってきたように思います。同時に、私も応援される自分でいないといけないな、と気づくことが出来て、家族はやっぱり基盤だなと再認識しました。」我が子が直向きに挑戦する姿から、逆に親が大切なことに気づかせてもらう機会は、私自身も経験してきた。渡部さんのように、息子との向き合い方や家族関係のプラスの変化が新たな事業のエネルギー源に繋がった点は、【Molecule(マレキュール)】読者にも通ずるポイントではないだろうか。生理を女性のものだけにしたくない、社会全体で考える5歳の息子にも、性教育に対して向き合ってもらいたいと意図して漫画で「ロケット少年」「ポップコーン天使」の本を読ませているという渡部さん。何で毛が生えてくるのか、下半身が当たるとなぜ痛いのかなどが漫画で描かれている。渡部さんのamiee立ち上げのエピソードで印象的だったのは、使い捨て布ナプキンの開発は生理や性教育を社会全体で考えることの手段の一つであり、目的ではないこと。「そもそも、なぜ日本は生理の話がタブーなのか?」その問いかけが、渡部さんの活動の原点になっている。「生理のトラブル自体は女性のことであるけれども、じゃあ生理はどうしてくるの?って考えると、子どもを産むための準備であって、これは男性の問題でもあり、社会の問題でもあると思うんです。amieeとしては、男性や社会全体を巻き込んで、生理や性教育の意識を変えていきたいと考えています」渡部さんは、生理の話がタブー視される背景の1つに日本の教育があると考える。実際、諸外国に比べ、日本の性教育が遅れていると指摘を受けることも多い。現在の文部科学省の学習指導要領では、小学4年生から生理を学ぶ機会を設けているものの男子生徒が一緒になって考えるような機会はあまりないのが実情だ。 幼少期の頃から男女ともに生理を学ぶ機会が当たり前にあれば、生理は女性だけのものではない、という認識が浸透していくのではないだろうか、と。「いまの子どもたちを教育していけば、20年後には生理や性教育に対する積極的な社会活動はいらなくなると思っています。amieeのスタートは、大人向け生理用布ナプキンですが、「ファーストナプキン制度」といって、小学校高学年の初潮を迎えた際に配るキットのようなものも今後作りたいと考えています。将来的には、コンドームも開発したいと考えていて、女性でも手に取りやすいパッケージを意識することで、性教育を全体で考える流れを作っていきたいですね」写真左:まつばらてるえさん | amiee by Ayuwaプロジェクトのデザイン及び広報を担当 写真中央:Maiさん |デザイン及びSNSを担当 写真右:渡部雪絵さん男性も社会全体で生理を当たり前に考えられるようになることがゴールだと話す渡部さん。だからこそ、女性3人でスタートしたamieeのプロジェクトも、今後男性にジョインしてもらうことに意味があると考える。「ここ数年は、ダイバーシティとして見た目・人種・年齢などがフォーカスされていますが、パッと見では分からない『サイレントダイバシティ』をamieeを通して解決していかないといけないと考えていてます。その一つに、癌があり、生理がある。男性に生理を通じてサイレントダイバシティを伝えていきたいですね。ちなみに『サイレントダイバシティ』という言葉はamieeに多大な貢献をしてくださっている女性がつくった言葉です。amieeは「生理」を起点としていますが、別プロジェクトで「サイレントダイバシティ」について理解を広げる計画もあるのでこちらも加速させていきたいです。」▼amiee のクラウドファンディングサイトはこちら(2019年6月18日まで実施中)▼Ayuwaの公式HPはこちら