「今日のご飯どうしよう・・・」 これは親世代から脈々と続く、日本のママを悩ませる”ど定番”の課題です。仕事も子育ても自分らしいバランスを取りたいMolecule(マレキュール)読者の皆さんも、毎日頭を悩ませているのではないでしょうか。子育てマーケターとして活動する私・森田亜矢子は、どちらかというと料理好きです。食育講師の仕事もしているのですが、それでも、毎日毎日・・・生きている限り永遠に続く『今日のご飯』という課題を前に、「めんどくさいからお惣菜を買って済まそう」という日も多々あります(苦笑)。今回は、『今日のご飯』に対して、少なからぬ罪悪感を感じているであろう働く子育て世代の皆さんに、スキルシェアという斬新な発想で、料理専門家とご家庭をつなぐ新しい出張料理サービスの誕生秘話をご紹介いたします。ワーママ・ランチトークから生まれた日本の食卓進化像井出 有希さん | 株式会社シェアダイン共同代表。東京大学経済学部を卒業後、外資系金融機関2社を経て、外資系コンサルティングファームのアナリスト(リサーチ部門)に。2017年5月、コンサルティングファーム時代の同僚がシェアダインを立ち上げ後、正式に参画。2児の母。外資系企業での猛烈サラリーマンと2度のリストラを経て、結婚・出産をされた井出さん。外資系コンサルティング会社へ復職後は、子供との時間を大切にしたい気持ちと、時間的制約から思いっきり働けない不完全燃焼モヤモヤのジレンマに陥ってしまったそうです。「出産前は、やりたいと思った案件には積極的に手を挙げていたのですが、出産後は忙しくなる怖さで、なかなか手が上がらなくなってしまったんです。」これは、本当に多くのママが経験する時間的制約に起因する”仕事へのやりがいモヤモヤ”だと感じます。仕事に打ち込みすぎて子供と過ごす時間が減ると罪悪感を感じ、仕事に打ち込める時間を減らせば、「子供との時間を削ってまで、何のために仕事をするのだろう」という悩みが生まれます。そんな悶々とした日々の中で、当時会社の同僚だったママ友とのランチの会話から、予想もしなかった展開が?!「ママは本当に時間が足りないので、唯一の息抜きは同僚のママ友とのランチ…というパターンが多くなりますよね。うちの子偏食で・・とか、いつも夜ご飯どうしてる?みたいな感じで、日々の子育てや生活の悩みを自然と共有し合う場になっていました。そんな何気無いママ友同士の会話の中から、シェアダインのサービスが生まれました。」成長期の子供を持つ親なら、誰もが抱える食の悩み。その悩みを解決する新しいサービスが思いついたそうです。「気軽に応募してみたスタートアップ支援プログラムに合格して、あれよあれよと起業することになったんです。」と語る井出さん。料理は得意な方ではないとおっしゃいます。そんな井出さんだからこそ思いついたのが、「料理に対する負の感情を、料理の専門家が解決してくれるマッチングサービス」だったんですね。スキルシェアが進化させる日本の新しい食卓像最近、生協を始めデパートまでもが参入している「ミールキット商品」。仕上げの簡単な一手間で完成するカット食材がセットになったパッケージは、とても便利で多くのワーママが活用されていることと思います。一方で、井出さんは、「炒めるだけ・煮るだけでできてしまうのは便利で助かる反面、これって料理をしていると言えるの?」という疑問を感じていたんだとか。「日本の食卓の未来は、本当にこれで良いのだろうか?」と。井出さんのお母さんは専業主婦だったそうで、彼女の子供の頃の食の記憶は、台所に立つお母さんの揚げたてのお料理をつまみ食いしたことや、枝つきの枝豆を枝からチョキチョキ切っているお母さんの姿。なんだかとても心が温まる記憶ですね。食の美味しさの感覚にも通じる、とても大切な記憶だと感じます。彼女の中の違和感は、そんな古き良き時代の実体験から生まれたものかもしれません。日本における「専業主婦前提社会」は、間も無く終焉を迎えるでしょう。日々、母親が台所に立ち、出来立ての『おふくろの味』を家族に提供するという食文化は、ミールキットや料理の作り置き代行サービスなどの台頭によって消えていくかも。実際には、ママが抱える課題は、実に様々。子供の偏食や、自身や家族の体調の変化、自分の料理レパートリーのマンネリ化など、家族のライフステージによっても変化があります。ミールキットや作り置きは、いわば「時間的制約」という課題を解決する手法ですが、各ご家庭の個々の課題に寄り添う解決策を提供できないだろうか?そんな想いから生まれたのが、ママの悩みと料理の専門家をマッチングするシェアダインというサービスでした。シェアダインは、単なる出張作り置きサービスではなく、各ユーザーの悩みを解決する料理の提供とともに、レシピや作り方のポイントを教えてくれる「スキルシェア」という発想がベースとなっています。実は私は、第一子出産後の2年間の専業主婦時代に、イタリアンの料理教室に通ったことがあります。料理は本当に不思議なもので、プロが作ると極シンプルな料理であっても格段に美味しくなるんですよね。調理時の本当に些細なコツで、仕上がりに大きな差が出ることが多いと感じました。一昔前であれば、そのような「ちょっとしたコツ」のイロハを、母親と子供の2世代が同時に台所に立ちながら継承されていったのでしょうが、「自分の母親もワーママで、料理はマンネリだった」というママも増えてきています。スキルの継承が、自分の身近な人間関係だけでは実現されなくなっている現代において、スキルシェアという発想は理にかなっているしすごく面白いと感じます。起業によって「自分らしいワークライフバランス」を実現さて。井出さんの「仕事やりがいモヤモヤ」は、その後どうなったでしょうか。「起業」と聞くと、会社員に比べてより一層忙しくなるのでは?というイメージを持つ方も少なくないと思います。そこで、現在の井出さんの生活パターンを詳しくお伺いしました。06:30 自分起床 07:00 子供達が起きる 08:00 家を出発 09:00 出社。仕事開始 17:00 退社、保育園を2箇所まわってピックアップ 18:00 帰宅して、夜ご飯の支度 18:40 夜ご飯と後片付けなど 20:00 お風呂 21:30 下の寝かしつけ 22:00 上の寝かしつけ 22:30 自分時間(旦那さんに寝落ちから起こしてもらう) 〜25:00 仕事残務と夫婦コミュニケーション会社員時代に比べて、働く時間としては大きな変化はなさそうですが、「いつ、どこで働くのか」という【時間×場所】の制約は無くなったと感じるそうです。何よりも、「専門家と繋がれる社会を作って、日本家庭の食文化をもっとカラフルにしていきたい!」という主体的な姿勢で働けていることが、一番大きな変化であるとおっしゃいました。時間的制約の中で働かざるを得ない私たち。そんな制約の中で、仕事のやりがいを120%にするためのヒントをたくさん得られた取材でした。いろんな人と繋がりながら、いろんな人を頼りながら、個々が自分らしいライフを作っていける社会って素敵ですね。私もライターとしてMolecule(マレキュール)で情報発信することで、そんな社会の創出に貢献したいと思います。スキルをシェアする出張料理人マッチングサービス「シェアダイン」