#WITHコロナのライフシフト ~コロナで変わるわたしの生き方~  青柳真紗美さん

コロナによって激動の年となった2020年。感染拡大から1年が経つ今も、見通しは不透明です。WITHコロナの時代、わたしたちは数年先に渡ってその時々の状況に合わせながら生きることを求められるでしょう。特にマレキュール世代にとっては、自分(わたし)、家族、仕事、生活、あらゆる場面でライフシフトを続けることを意味しています。そんな中、この1年で生活の場や仕事を、自らの選択で変化させた女性たちがいます。彼女たちはコロナ禍で何を感じ、考えライフシフトしたのか―――2020年4月から身近な変化を特集した「#半径5Mの暮らし」に続き、この特集では少し長期的な目線に立って「わたしの生き方」の変化を見つめます。

連載一人目は、マレキュールでも連載をしていただいた海外在住の広報・PRプランナー、青柳真紗美さんです。昨年11月、息子さんと二人で海外移住されました。その移住先は、なんとエジプト!コロナ禍で異国への移住、そして働き方・子育ての変化とどう向き合ったのか、現地からのインタビューをお届けします。

コロナによってもたらされた場所・時間の制約からの解放

ー日本でもコロナが騒がれ始めたのがちょうど1年前ですが、振り返ってどんな変化がありましたか?

コロナ禍以前は5歳の息子と二人暮らしでした。仕事はフリーランスでPRと編集をメインに現場に出て活動する、いわゆる「東京のビジネスパーソン」。2020年は3月に友人の結婚式で海外渡航したこともあって、3月末から自粛生活に入りました。その時、世の中はまだ動いていたものの、在宅で仕事をしながら「これは長期化しそうだな」と思いました。4月に入り、保育園からは「可能な限り自宅保育を」と呼びかけが。なるべく家で仕事をするようになり、「子どもと一緒に在宅でどう働くか」を本気で考えたことが、一番大きなライフシフトでした。

東京に住み在宅ワークしていた頃

現場主義の私でも、ほとんどの仕事がオンラインで進められるようになったことで住む場所の制約が取り払われたと気づいたのが5月下旬頃。感染対策をしながら、父が住む伊豆と東京を行き来し始めました。もともと都心に住んでいた理由は、息子との時間をできるだけ確保するため。クライアントの現場までタクシーで15分の場所に住み、移動時間を減らしていました。都会の真ん中で広さの割に高い家賃を払って住んでいたと思います。

コロナ禍で子どもと一緒の在宅ワークが基本になったことで、時間に対する概念もかなり変わりました。それまでは世の中の流れに合わせて、フリーランスでありながら9時〜17時を稼働時間にしていました。でも、もっとパフォーマンスを上げる時間・場所を自由に選べるようになったと思います。朝型の自分に合わせた働き方ができるようになり効率的に仕事することで、結果的に子どもとの時間も増えました。

夏頃、自分の考えをまとめたメモに「(息子と)共に生きる」とあって――少し前まで、子育てはどこかでタスクだと思っていたんです。でもそうではなく、家族としてこの存在と一緒に生きるのだ、という感覚にシフトして。お互いがよりよく生きるにはどうしたら良いか、考え始めました。息子には息子の人生があり、私には私の人生がある。だったらお互いが自分の人生を生きられる環境を作ろう、と思いました。どんな生活を望むのか、改めて考えた時間でもありました。

父と息子、伊豆にて

複数拠点を行き来する生活になって、以前は半年に一度会うかどうかだった父と、息子が一緒に過ごす時間が増えました。伊豆にいる時は園児が5人しかいないお寺の保育園に通うようになり、そこで毎日プールか温泉に入れてもらって(笑)、本人にとっても色んな人と触れ合うことで、慣れ親しんだ東京の保育園以外の場所を知るきっかけなったと思います。

東京にも伊豆にも「おかえり」と言ってくれる人がいる。帰る場所が複数ある感覚は、環境を自分で選び取れる柔軟さにつながると感じます。私は親としてできることのほとんどが「環境を整える」ことだと思っています。エゴかもしれませんが、色んな場所や人との関わりが、息子にたくさんの視点と選択肢を与えてくれるはずです。

車で15分も走ればお気に入りの温泉がたくさん

不安よりも環境を変えたい、いざエジプトへ移り住みそして見えたもの

ー多拠点生活も軌道に乗る中、コロナ禍でエジプトへ移住?!と驚く人も多いと思いますがその決断はどのようなものだったのでしょうか?

実はエジプト行きはコロナとは関係なく計画していました。母が定年退職後にエジプトで教育関係の仕事に就くことが決まっていて、「いいな~、自分も冒険してみたい」と思って。

東京で暮らしていた時は、コンフォートゾーン(自分が心地いい不自由のない環境)にいるな、と感じていました。忙しいんだけど、ぬるま湯に浸かっているような感覚というか…以前マレキュールの取材でも語ったように、「人の集まる家」を目指して生活を積み上げてきたけれど、その完成形が見え始めた時、「環境を変えたい」と考えていました。そこに母のエジプト行きの話が決まり、飛び乗ったんです。

東京での暮らし

人生においてコントロールできることってすごく限られていますよね。私は、自分が唯一コントロールできるのは場所、時間といった環境だと思うんです。

突然大きく変えようとすると途方も無いことに感じてしまうから、先ず0.5歩だけ動いてみることを大事にしています。それから、良い悪いをすぐにジャッジし過ぎないようにも心がけています。結果を気にすると、どうしても「正解」を探してしまう。

人生は学校の試験じゃないし、そんなのつまらない(笑)幸せややりがいは、プロセスの中でちょっとずつ発見していくものだから、小さくはじめることを意識しています。

エジプト移住を思い立った日の夜にはGoogleマップのストリートビューでエジプトの首都・カイロの街並みを眺めていました。飛行機のチケット代を調べたり、東京在住のエジプト人の友達をつくって現地の生活について聞いたり。その時できることを少しずつでもやっていくことで現実味を帯びました。

先に母がエジプトへ渡って、私たちの9月渡航の予定も11月末まで延期され――国境が封鎖されて出戻るリスクなど、どのタイミングで行くかはものすごく迷いましたが、移住自体は自分の中で決まっていました。

不安よりも、自分が好奇心を失わずに暮らせる場所を探したいというモチベーションの方が上回っていたんです。

エジプトの街並み

ー実際に望んだように環境を変えてみて、どんな変化があったのでしょうか?

精神面では、日本を離れて周囲が自分を全く知らない人ばかりになって、「自分が本当に大事したいことは何だったか?」をより鮮やかに考えるようになりました。例えば、ちょっと空いた時間に一人で考えごとをしたり、気になっていたエッセイや音楽に触れたり、あるいは全く知らない人に会いに行ったりーー自分の時間を再発見している感覚がはっきりとあります。

エジプトの市場の様子

東京で生まれ育って、思春期を新宿界隈のコンクリートジャングルで過ごし、大人になっても友達に囲まれた生活を送っていたけれど、やっぱり自分の時間も必要だった。他者の視線を意識せずに生きるのは、東京にいた頃の環境だとなかなか難しかったのです。戦略的に一人ぼっちになったのかもしれません(笑)

コロナ禍で、人とのつながりやリアルで人に会う楽しさに感動した人は多かったと思います。一方で、一人になれる時間があることにホッとした人もそれなりにいたはず。誰かと共有する訳ではない、自分しか知らない時間を過ごす贅沢さに気づいたんです。自分の原点を見つめ直して、優先順位にこだわるようにもなりました。一歩引いてより客観的に物事を見られるようになったのかもしれません。

たまには息子を預けて出かけることも

仕事の面では、「あまり変わらない」というのが現時点での答えです。本当は日本での仕事を辞めて来るつもりでした。でも、コロナ禍でテレワークが主流になったこともあり、理解を示してくださるクライアントばかりで。少し体制を変えた部分はありますが、ありがたいことにほとんどの日本の仕事を続けられています。取材対応に同行出来なかったり難点もありますが、その代わり上流の戦略部分を担当したり、むしろ自分としても楽しめています。

子育ての面では、新たな発見がたくさんあります。エジプトは出生率が高く子どもが4〜5人いるのも当たり前。子どもに寛容というか、子ども好きな国民性を感じます。スーパーで息子をっていると、隣にいた見知らぬおじさんが、そんなに怒ることないと仲裁に入って「大丈夫だよ~」と息子を励ましてくれたり(笑)

年明けから近所のインターナショナルスクールの幼稚園クラスに入り、現在はオンライン授業になっていますが、画面越しに先生が毎朝「みんなのこと大好きだよ!」と、全身で愛情表現していたり。自己肯定感の高さを育むコミュニケーションと、愛情表現が信頼の基盤であることをエジプトの人たちから日々、学んでいます。(取材時はオンライン授業でしたが、2月下旬より通園が始まりました)

インターナショナルスクールのオンライン授業風景

エジプトでの生活はまだスタートラインに立ったばかり。言葉を覚えたり、新しい友達を作ったり、これからやってみたいことがたくさんあります。コロナが落ち着いたら、エジプトを拠点に近くの国にも旅したいです。

人生において変わらない「怖れではなく愛で動く」スタンス

ーまだまだこれからということですが、青柳さんが今後も大事にしたい「わたしの生き方」は何でしょうか?

一つ目は、「怖れではなく愛で動く」。これは私の人生において変わらないと思っています。行動の起点にあるのが、怖れか、愛か自覚することを意識しています。エジプトへ行くと決めたのは、自分と息子への愛でした。やったこと、みたことのないことができる――それが自分の好奇心や生きる環境には欠かせなかったからです。もちろん、怖れを意識すれば「行かない理由」はいくらでもありました。

コミュニケーションに関しても同じです。たしか去年5月のマレキュールのイベント登壇時にもコメントさせてもらったのですが、私は全てのコミュニケーションは愛か怖れ(不安)のどちらかに分類できると考えています。

あわせて読みたい
【イベントレポ】マレキュールのオンラインイベント「With子どもの在宅ワーク シェアし合い、共に考えよう」 Molecule<マレキュール>では2020年4月から外出自粛期間中の緊急特集として、「#半径5Mの暮らし方」という連載を続けて...

怖れから生まれるコミュニケーションは、傲慢さや自己嫌悪など、ろくなものには繋がらないことが多いです。判断を迷ったら、心が温かくなる方へ行くのが結果的には良いのだと思います。

精神的に余裕がないと、どうしても怖れを起点とした行動に陥りがちです。そういう時こそ自分に対しても愛情をかけてあげることが必要だと思います。「よくやってるよ!」と自分に言うくらいのつもりで。

今はコロナで、特に周りの目が気になる状況になってしまいました。でも、心にまで制限をかけないで。家にいる時間が長い分、どれだけ温かい空間にできるかを考えてみるのもいいでしょう。それすら考えるのも億劫な時は支援が必要なサインでもあります。助けを求めて行動するのも、自分への愛だと思います。

そして二つ目は、「他人と比較しない」。比べるなら過去の自分と。昨日や去年の自分と比べて、自分の現在地を確認するのはいいと思います。人間は時間とともに変化するのが当然。自分自身のタイミングを待ちながら、臨機応変に流れに乗るスタンスをこれからも持ち続けていたいです。

編集後記

取材は時差の関係で深夜だったのですが終了後、青柳さんからもらったパワーで不思議と満たされた気持ちになっていました。エジプト移住も含め人生を自分で選び取って行く力、息子さんへの愛、自分・周囲への愛で行動する強さを感じました。コロナによってあらゆる場面で制限がかかる中、私たちは過剰に周りの目を気にしたり、自分で行動や思考に制限をかけているのでは?と改めて思います。「心にまで制限をかけないで」—青柳さんのストレートなメッセージが胸に響きました。