自らも執行役員として、「時短勤務」のママ・パパが活躍できる社会を目指す|withwork 松栄友希さん

「子育てが最優先だから、責任のある仕事は任せられないのでは」
「仕事はそれなりに、ゆるく働いていたいんでしょう」

産後に仕事復帰して活躍する女性が増えた今も、時短勤務に対するそんな固定観念はまだまだあります。

仕事に全力でエネルギーを注いでいるのに、世の中や職場から“時短” “ワーママ”というレッテルを貼られてしまい、悩んだことがあるMolecule(マレキュール)読者は多いのではないでしょうか。

今回は、ママ・パパの転職支援サービス『withwork』を運営するXTalent(クロスタレント)株式会社にて執行役員を務め、自らも時短勤務で活躍される松栄友希(まつばえ・ゆき)さんにインタビューしました。

育児と仕事の両立に悩んだ経験を持ちながらも、「子どもを産んでから、明らかに仕事の能力が伸びました」と、力強く語ってくれた松栄さん。短い時間でも濃く働くためのヒントと、今後の想いについて伺いました。

松栄さんプロフィール|IT企業でプロダクトマネージャーとして新規事業の立ち上げを連続で担当したのち、2019年9月XTalent株式会社に入社。時短勤務の執行役員としてママ・パパの転職支援サービス『withwork』の立ち上げと運営に携わる。2児の母。

「これだ!」と思える仕事に出会うまで挫折も

ー松栄さんは、もともとIT企業で新規事業のプロダクトマネージャーとして長年ご活躍されてきたと伺っています。これまでのキャリアについて教えていただけますか?

実は、キャリアのスタートはクリエイティブ職だったんです。人材企業で求人広告のデザインをしていました。

学生のころから絵を描いたり工作したりするのが好きで。先輩へ贈る卒業祝いの色紙づくりとか、熱が入りすぎて徹夜してしまうくらいのめり込んでいましたね(笑)。仕事でも“ものづくり”をしたいと、最初に選んだのがクリエイティブ職だったんです。

ー最初は異なる業種・職種だったんですね。念願のクリエイティブ職からは、なぜ離れてしまったんですか……?

新卒入社から1年半働いてみて、正直向いてないと実感してしまったんです。デザインにはもちろん理論がありますが、センスや才能もモノをいう世界。

一緒にスタートしたはずの同期と自分がつくった広告を見比べたとき、圧倒的に「負けてるな」と思ったんですよね。社内のデザインコンペでも、全然上位にいくことができなくて。クリエイティブ職に適性がないと判断されたのか、その後宣伝部へ異動することになりました。

ーそうだったんですね。 好きでがんばりたいと思った仕事で成果が出せないのはつらいですよね……。

やっぱり当時はすごく悔しかったですね。先輩から何度もフィードバックをもらったり、とにかく仕事の量をこなしてみたりしたんですが、どうにも上手くいかなくて。自分を励ましては落ち込み……を繰り返す毎日で、どうしていいかわかりませんでしたね。

ーそこから、どうやって浮上していったんでしょうか?

異動先の宣伝部で、Webマーケティングの仕事に出会ったのがきっかけです。そこで、ITの世界って面白い! と思えたんです。

前職のIT企業に転職してからは、さらに衝撃が待っていました。当時の私はWebサイトすらつくれない状態。一方、同僚はみんな趣味でもどっぷりWeb制作をしていて、工夫した点や苦労話なんかをいつもすごく楽しそうに語ってくれるんですよ。もちろんプロダクトも、個人の活動とは思えないくらいクオリティが高くて。

ただでさえ未経験からのスタートなのに、周りはすでに百戦錬磨の経験とスキルを持った人ばかり。自らが楽しめてユーザーの役にも立てるプロダクトを私もつくりたい!  この人たちに追いつきたい! と、火がつきました(笑)。

―デザイナー時代は自分よりもスキルの高い人の存在に落ち込んでいたけど、Webの世界では周りに刺激を受けて逆にスイッチが入ったと。それは、松栄さんにとってITのお仕事が「向いていた」からなんでしょうか?

それはあるかもしれません。飛び込んでみて初めてわかったのですが、私にはアートのセンスはそこまでなかったけど、ビジネスを企画することは得意だったんです。

でも、プロダクトの目的を考え抜くロジカルな思考と、もともと好きだったデザインの直感的な思考をどちらも活かせるのがプロダクトマネージャーの仕事。だからクリエイティブ職の経験も役に立っていますし、デザインに向いていないと気づけたからこそ今があると思います。

「これだ!」と思える仕事に出会うまで5年。もがいている期間は長かったですが、いろいろやってみてよかったですね。

時短勤務でも成果を出す工夫

-6年前にお子様が生まれてからは、働き方は変わりましたか?

はい。出産前までは20〜21時まで仕事をしていたのが、復帰後は16時半までに。勤務時間が大幅に短くなり、ガラッと働き方が変わりました。

―時短勤務で働く上で、どんなことが大変でしたでしょうか。

もう、全てが段違いに大変です(笑)。

初の育休復帰後は、がんばりすぎて体調を崩してしまいました。日中に仕事が終わらず、子どもが寝静まったあと夜中にもやっていて。仕事が好きで、もっとやっていたいという気持ちもありましたね。でも、睡眠不足のダメージは想像以上に大きかったです。

結果として、私がダウンすると誰も幸せにならないなと学びました。家庭はもちろん、仕事も回らなくなります。そこで、短い時間でどう成果を出すか、チームメンバーとどのようにコミュニケーションを取っていくかを考えるようになりました。

ー実際どのようにされたのかお聞きしたいです。

まずは、チームでの仕事の進め方を「私が不在でもある程度ジャッジOK」に変更しました。それまでは、チーム内の情報共有のハブとして、営業とエンジニアがやり取りする際に私がいつも同席していて。プロダクトマネージャーは全ての責任を負うポジションなので、事情をくまなく把握しておきたかったんです。だけど、時短勤務となると私が不在の間にまったく話が進まなくなってしまうんですよね。そのボトルネックを自ら解消しにいきました。

ー責任者として事情を把握しておきたいとなると、不在中の業務をメンバーに任せるというのはかなり重い決断だったのでは……?

たしかに、最初は不安と葛藤がありました。言ってしまえば、プロダクトマネージャーの持つ権限を手放すようなもの。私の知らないところで物事が決まって進むということに対して、受け入れがたい気持ちになったり……。でも、1週間くらいで慣れましたね(笑)。

ーわりとすぐに気持ちが切り替えられたんですね。どういう心境の変化が?

「私がどういう仕事をしたいか」ではなく、「何をつくりたいか、何を成し遂げたいのか」に立ち返ったんです。

その視点で考えると、自分の仕事のやり方にこだわることよりも、社会に価値を提供することのほうが断然大事だなって思えました。チームがうまく回って、よいプロダクトをつくれることが最優先だと。

ー仕事への思い入れゆえ、ときにエゴが出てしまうこともあると思います。松栄さんはそこで、ご自身の目的を再確認されたんですね。

そうですね。なので、不在時の情報を自分から取りに行くのはもちろん、普段から私の判断軸や思考プロセスをきちんと共有するようにしていました。そうすると、私がいなくても「松栄さんならこれを一番大事にするはず」「こういうフィードバックが返ってきそう」と、だんだんチームメンバーに浸透してくるんです。

-自分の考えを常に共有することで、チーム全員に松栄さんの「プロマネ脳」がインストールされるんですね!

そうしていくうちに、限られた時間でもちゃんと成果を出せるようになりました。メンバーからも、フルタイムだろうと時短勤務だろうと「働く時間なんて関係ない」と言ってもらえて、すごく嬉しかったですね。

「本当に大切なことは何?」自分に問いかけ、選んでいく

ーお仕事への熱意や取り組みについて伺ってきました。松栄さんにとって、ご家庭はどんな場所でしょうか?

自分が絶対的に必要とされていて、愛される居場所を見つけられたと思っています。

もちろん、育児をしていて「もう嫌!」となることはたくさんありますが、子どもはやっぱりかわいい。出産後は、家族との時間をより大切にしたいと思うようになりました。「ママとたくさん一緒にいたい」と言う子どもたちのために、働く時間は“短く濃く”を変えずにいきたいです。

ただ一方で、私はとっても仕事が好きなんですよね。家庭や育児だけでは息が詰まってしまう。私にとって仕事は、自分らしくいられる時間でもあるんです。

ー家庭も仕事も、どちらも大切にされているのが伝わってきます。両立するために、どんな工夫をされてきましたか?

私の場合、よくあるワークですが自分が「やりたいこと」をひたすら書き出して棚卸しをしていました。

初めて新規事業に携わったとき、育休復帰して3ヶ月目にしんどくなってきたとき、ひと段落して次の課題が出てきたとき。育児のステージや周りの環境が変わるたび、頭の中がモヤモヤしてきて、「あれもやりたい、これもやりたい」と、選べなくなってきてしまいます。そんな節目で取り組んでいました。 これはやりたくないな、ということも書いていましたね。

-頭の中のモヤモヤを、いったん全て文字に起こしてみるんですね。

そうですね。仕事のことも家庭のことも自分のことも、とにかくなんでも書きました。

深く考えずにバーッと書くうち、似たようなことが何回も出てきて、これが私の価値観なのかなとわかってくるんですよ。そしてさらに見返して、冷静に精査していくんです。

「子どものことばかり書いているけど、本当は夫との時間も大切にしたいんじゃなかった?」

「『プロダクトマネージャーとしての能力を上げたい』というのは、本当に私がキャリアで成し遂げたいこと?」

というふうに。これは本質じゃないな、と感じたら消していく。その結果、残ったものは意外と少なくて。これくらいだったら、家庭も仕事も両方いけるんじゃない? って思えたんです。

ーやりたいことを全てやろうとすると苦しくなってしまいそうです。だからこそ、本当に大切なことを見極めていくんですね。

はい。両立に悩む方は、「本当に大切なことは何?」と改めて自分へ問いかけ棚卸しをしてみてはどうでしょうか。私は子どもを産んで育児をする立場になったことで、取捨選択をする意識をより強く持てるようになりましたね。

ー制約をプラスに転じていくこともできるんですね。「時間がない」と悩む方の励みになると思います。

自分のやりたいことが見つかったら、それをやるために他を軽くできないか夫婦で相談したり、外部のサービスに頼ってみたりしてほしいなと思います。自分自身の幸せを大切にしてほしいですね。

時短ママに対する「固定概念」を変えたい

ー松栄さんが現在携わっている『withwork』は、そんな仕事と育児をどちらもがんばりたい女性にぴったりなサービスですよね。ジョインを決めたご理由は?

新規事業に連続して携わってきましたが、会社の立ち上げは未経験。今までよりさらに新しい学びや体験を得られそうだったからです。

育休中に「今の会社に戻って、私は今後どれだけ成長できるんだろう?」という思いを持っていました。同じこと、すでにわかっていることをやるよりも、ちょっと自分の能力が足りないくらいの場所にいく方が、ワクワクした毎日を過ごせるだろうなと感じたんです。

ー育児中でも、仕事でのさらなる成長を楽しみたいと思ったんですね。

そしてなにより、「ママとして仕事をする困難を解消したい」と思ったことです。

働くママには困難がたくさんあります。仕事に必要なインプットやコミュニケーションの時間がとにかく取れない。もっと仕事をしたいと思っても、お迎えに行かなきゃならない。働く時間に制限があるという理由だけで、裁量のあるポジションを任せてもらえない。さらに、ワンオペ育児が乗っかってきて疲弊してしまう……など。

特にWeb業界で、ママのプロダクトマネージャーってすごく少ないんです。だからこそ私の経験が役に立つかもしれない。そう思ってジョインを決めました。

ー今おっしゃっていただいた「働くママ」の課題は、今まさに悩んでる人がたくさんいると思います。

場所と時間が決まった従来の働き方のもとではなかなか解決しにくかった課題ですよね。

でも今、テレワークの普及でそういった制約がなくなりつつある。そこで、働いた時間よりも“パフォーマンス”で評価される世の中にしていけたら、“短く濃く”働いて成果を出す時短ママにもっと活躍の場が増えるはずだと思っています。社会の価値観ごと変えていきたいですね。

-社会の価値観ごと変えていく。とっても心強い言葉です。

とはいえ、従来型の「モーレツに働く」やり方で成長してきた企業に、新しい価値観を理解してもらう難しさも感じています。育児と仕事の両立に課題意識を持つ経営者は意外と少ないんですよね。その層をどうやって巻き込んでいくかが、これからの大きな挑戦だと思っています。

まずは、仕事に悩んでいる目の前の時短ママに向けて、転職支援サービスをリリースしました。今後はもっと包括的なキャリア支援や世の中の働き方を変えるアプローチもできるよう仕込んでいるところです。「XTalent株式会社が世の中の働き方を変えたよね」―そう言ってもらえるくらいのインパクトを出していきたいですね。

ー最後に、Molecule(マレキュール)読者に向けてメッセージをお願いします。

自分を犠牲にしすぎないでほしいです。世の中にある、「こうあるべき母親像」は鉄人か何かかな? と。もはや生身の人間ができる技ではありません(笑)。

常に子どもを最優先しつつ、いつもご機嫌で家事も完璧。そして仕事でもバリバリ活躍してねって無理じゃないですか。「そのぎゅうぎゅう詰めの人生、ママは本当に幸せなのかな?」って思ってしまうんです。だからこそ、自分が本当にやりたいこと、本当に大切にしたいことを考えて、選んでみてほしい

子育ても仕事も難しいことばかりですが、同じようにがんばる同志はたくさんいます。一緒に、自分を大切に生きていきましょうね!

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