Molecule|環境問題に対して、「ママは出来る限りのことをした」と言いたい | アパレルブランドオーナー 羽倉綾乃さん 読み込まれました

環境問題に対して、「ママは出来る限りのことをした」と言いたい | アパレルブランドオーナー 羽倉綾乃さん

2019/4/10

斜め上を見るワイシャツを着たショートカットの女性

〝濡れない。シミにならない服〟というコンセプトの洋服 AYANOHAKURAを立ち上げてもうすぐ1年になる羽倉綾乃さん。先月まで夫の転勤に伴いイタリア在住、現在はドイツ在住です。今回、子供服のラインLEMON TREE & HONEE BEEを立ち上げました。

  「こんな未来になると良いな」といった夢や理想があっても、実際に行動に移すのはなかなか難しいもの。今回、環境問題への意識から、最新の加工技術を用いた汚れにくい子供服のブランドを立ち上げ、東京での展示会を控えている羽倉綾乃さんに、同じくマレキューラーで元NHKディレクターの三木佳世子が、行動力の源にある子供たちへの想いをインタビューしました。

ーAYANOHAKURAという〝濡れない。シミにならない服〟のブランドを、どうして立ち上げることになったのか、改めて伺いたいのですが。

二人の息子を育てる中で「これ1枚あれば、外でも着ていけて洗濯しなくて良い」みたいなオシャレな服があればいいなぁと思っていて。

そんな時に、濡れない汚れない素材を知って、始めは自分のためだけに作るつもりだったのだけど、ミラノでは、そこら中の人がアパレルのことに従事していて、想いを口にしたら必ず真剣に受け止めてくれるんです。あの人に紹介してあげるとか、どんどん輪が広がっていって。

私みたいな駐在員の主婦であっても、ブランドを立ち上げることが出来ました。イタリアという国が、私にチャンスをくれたのだと思います。

赤いノースリーブのドレス

ーコンセプトもだけれど、デザインがすごくステキだなっていうのが第一印象でした。デザインは誰が手掛けられているんですか?

私です。(笑)

ーえ!デザイナーじゃないですよね?

そう、だから私は絵を描いて、あとはパタンナーさんと話しながら。

ーちょっとアクセサリーつけたらパーティにもいけそうなお洋服ですよね。

嬉しい!AYANOHAKURAには、3つのキーワードがあるんです。

1つ目は、着心地がいいこと。リラックスできるラインであること。

2つ目は、シンプルであること。気に入ったものはずっときて欲しいから、流行を追いすぎると着れなくなるでしょ?

3つ目は、女性らしくあること。女性は、首のラインがすごくステキだと思う。そういう女性のラインをどう生かすかとか。露出するだけじゃないフェミニンさを大事にしています。

ー2019年5月で「AYANOHAKURA」というブランドを立ち上げて1年。振り返ってみてどうでしたか?

お祭りみたいで、すっごく楽しかったです。自分がアイデアを出して、それがカタチになっていくのがワクワクしたし。

映画とかで、主人公がわーってやりたいことをやって、早送りで進んでいく感じあるじゃないですか。あんな感じ!

その時に、大事なことは、とにかく言ってみることだなって思ったんです。言ったら次のステップに進めて、どんどんどんどん人も繋がって、実際にお洋服が出来て。おめでとうって言ってくれて応援してくれて…。

もちろん、大きな請求書が届いたり、工場で量産が始まったりしたときは、少し怖いなと思ったけれど。例えば、今の私がフランスの有名なカバンとか買っても、多分幸せになれないと思って。そしたら絶対、結果がどうなっても後悔しないなって。

ー失敗するのが怖くて、想いがあっても行動できないことって沢山あると思うのですが。羽倉さんはどうでしたか?

確かに、「アラフォーが今さら?デザインのことなんて全然しらないのに、その大方向転換は何?」って、言う人もいました。でも、10年後の自分が今の自分を見たら、あの時走り出して良かったって言うと思ったんです。

じゃぁ、今やっちゃおうって思って。 無謀なんです、わたし(笑)。死ぬと思ったらなんでもできる。だったら、明日の商談玉砕してから死んでもいいし、もう3回行ってから死んでもいいし。

大々的に、じゃーん!ってやっちゃったから、失敗したら「綾乃やっぱりだめだったんだね」って思われるかも知れないけど。諦めなかったら、失敗にならないから。

戦いが続いている限りは負けじゃないから。もしダメになったらなんて考えてなかったなぁ。

ーカッコいい!それだけ羽倉さんを突き動かした、環境問題への意識についても伺いたいんですけれど。頻繁に洗濯をしなくていいということは、環境汚染をしないということで、AYANOHAKURAの洋服には、環境問題への貢献という意味もあるんですよね?

そうそう。これまでずっと、環境問題について、自分が何も出来ていないことを歯がゆく思っていたんです。

ーなんでそこまで環境問題への意識を持つようになったんですか?

もともとは東京で育って、昆虫も大嫌いだったけれど(笑)。ドイツに10年ちょっと住んだときの体験が原点になっています。

みんな、自然と共存して生きているんですよね。しのごの言わないの、それは自然だからOKだね、それは自然壊しちゃうからダメとか。とにかく、人間の都合は優先順位が低い。

ー日本との違いって、具体的にどういうところで感じましたか?

私がドイツにいたのは20年前なのだけれど、その時からチェルノブイリの問題がありました。すごく土壌汚染にシビアだったし、エネルギー問題は国民の関心事だった。2000年すぎたら、目に見えて風力発電が増えて行きました。

20代の一番吸収しやすいときに、自分たちは自然の中で生かされているんだっていう考えを持って、33歳くらいで日本に帰ったんです。そうしたら、日本での環境問題の対応の仕方に、すごく違和感があったの。

例えば、ペットボトルが良くないからやめようってなると、日本人って技術力があるから、すっごく薄いペットボトルを作るの。ペットボトルをそもそもやめようっていう発想にはならないの。極限まで今のやり方を保ちつつ、減らす事はできても転換が得意じゃないですよね。

LEMON TREE&HONEY BEEのロゴ

新ラインのロゴデザイン

ー子供服のラインの名前の、LEMON TREE & HONEE BEEには、どういう思いを込めているんでしょう?

ミツバチが絶滅になりそうだから、どうしたら食い止められるかを発信していきたいというのと、レモンの木とミツバチって仲良しなのね。ドレスを作ろうというきっかけはやっぱり、私にとってイタリアで、レモンの木は私の中でイタリアのシンボルなんです。北イタリアにいても、南イタリアにいてもレモンがあって、料理にも沢山使うから。

机の上に並ぶ女の子の子供服

※サンプルのもの(実際の商品とは違いがあります)

ー子供服のラインを作ろうというのは、前から思っていたんですか?

洗濯が大変なのはお母さんだけじゃなくて子どももだから、なんとか解決したいなって思っていました。子どもだから、ぜったいお洗濯しなくていいとはいえないけど、しみがつかないから。

ーそれだけでも嬉しいと思う!私、しみ抜きばっかりしてるもの。本当に嫌だ!!(思わず感情が…笑)

そうそう、本当にそういうリアルな日常の辛さあるよね。育児の醍醐味といったらそうだけど、毎日だと辛いよね。しみ抜きの時間、子どもとパズルでもやっていた方がお互い豊かになれるから。

冠水したヴェネチアの街を歩く人々と2人の男の子

※ヴェネチアにて。近年の温暖化により、Acqua Altaと呼ばれる、街全体が冠水する現象が頻繁に起きています。この時は満潮で水位が120cmにもなったそう。

ー環境問題とか、意識はしていても羽倉さんのようには行動出来ない人もいると思うのだけれど、なぜ、羽倉さんは行動に移すことが出来たのですか?

私が、ブランドを立ち上げるために、今ここで走り出さなきゃって思った理由の一つに、子どもたちに面と向かって、ママは出来る限りのことはしたよって言えるかなっていうのがあって。 一人で出来る事は限られてるけど、子どもと面と向かって顔を見て、でもママはやってるよって、恥ずかしくない想いでいられるかなって思ったら…やっぱりやらなきゃいけないって思ったんですよね。

ーそっかぁ…。羽倉さんのように大きな行動ではなくても、自分の半径3メートルから出来る事ってあるのかしら?

例えば「ゴミの行方を考える」とか。ゴミが回収された後にどこにいくのか?

危険物や処理できなかったものは後進国の川や森に捨てられていたり、不当に焼却処理されていたりします。今捨てたゴミは無かったことには出来なくて、必ずどこかにたどり着くっていうことを、意識し始める事も大きな一歩だと思います。

ー羽倉さんはこれから、どんな未来を作っていきたいですか?

すごく大きな話だと、子どもたちが遠慮しない世界。言いたい事が言えて、タブーのない世界。大人も子供もいろんな人がいるんですけど、ハンディキャップのあるひと、肌の色も言葉も違うんだけど、まずはその人たちが全員同じ権利を持てるようにしたいし、なんとか人間が自然の共有、共存できる世界を目指したいです。

あとは、お母さんとか頑張っている人に向けての応援歌みたいなブランドにしていきたくて。東京にいた当時、小さい子供を連れていると祝福してもらえていない感じがしたんです。すみませんすみませんって謝ってばかりで。

命が生まれて、それを育むために頑張っているお母さんたちなのに、社会であまり歓迎されている気がしなくて。 そういう気持ちを感じているお母さんがいるとしたら、私は応援しますよって。ここに1人、応援している人がいますからねっていうのを、洋服と一緒に届けていきたいです。

ー最後に、もうすぐ開催される展示会への想いを伺えますか?

今、ブランドの主なマーケットは日本だから、7月には北海道でやることも企画していて、直接お会い出来るのをすごく楽しみにしています。今、お客様のほとんどはオンラインで購入して下さるのだけれど、触ってみたい、着てみたいって人がいると思うので、なるべく展示会もしたいし、POPUPショップもいずれはできたらいいなーって思っています。

羽倉さんの展示会情報

日時: 4月21日(日)〜23日(火) 13:00-18:00 場所: 東京都目黒区上目黒1ー7ー6 #3
インスタグラムで情報発信中(イベントは2019年開催されたものです。)


▼濡れない。シミにならない服「AYANOHAKURA」はこちら

羽倉さんの過去のインタビュー記事

https://molecule.news/stories/ayanohakura/  

Writer Profile

三木佳世子

元NHK報道番組ディレクター。現在は、サイボウズ株式会社で、“働き方改革”に取り組む企業向けの講演、研修事業に携わる傍ら、複業としてメディアPRのコンサル、動画×インタビューのオリジナルメソッドで発信力を高める講座「未来ドキュメンタリー」を開講。自分の強みや人生のストーリーを上手くPR出来る、自分らしく生きる人を増やしたいと活動をしている。